深沢仁作品の書評/レビュー

グッドナイト×レイブン

評価:☆☆☆☆☆


睦笠神社と神さまじゃない人たち

停滞する時間
評価:☆☆☆☆☆
 睦笠神社の宮司の孫である睦笠冬基は、動物に好かれる。昨夜も弱っていた鼬を拾ってきたところ、翌朝目覚めると、二尾のある幼女がベッドで寝ていた。その鼬は、天から降ってきた妖、ライだったのだ。
 周囲から変に思われないよう、ライの存在は、幼馴染の南絢乃にも秘密にして、いつも通り、何も変わらない日常を送ることにした睦笠冬基だったが、神社にクラスメイトを呪う絵馬がかけられたことで、いつもとは違う行動を取らなければならないようになる。

 感情の起伏がほとんどなく、祖父と二人、ルーチンをこなすように生きる男子高校生と、それを歯がゆく思いながらも、気を遣って踏み込めない女子高校生。そんな輪の中に、外から異分子が入り込んできて場をかき乱す。
 しかしそれは、必ずしも余分なことでは無い。

R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く

男にとっての少女の特殊性
評価:☆☆☆☆☆
 15歳の少女、アンジェリーナ・レインが自宅の一室に追い詰められ、じっと鏡を睨みつけてどうしてこうなったのかを考えていた時、突然、背後にその男、フィリップ・リーダスは現れた。女ならば誰もが振り返るような容姿をした男は、結果としてアンジーを状況から救い出してくれる。
 そして彼女をひとまず安全なモーテルの部屋に置き、そのまま去っていこうとしてフィリップを、アンジェリーナは必死の思いで引き止める。全てはマフィアに捕まった妹のステファニーを助け出すのに協力してもらうため。事の元凶である父のウィリアムや母のアリーは、彼女たちを捨ててもう街を逃げ出してしまったため、他に頼る者がいなかったのだ。そう、たとえフィリップが、人外の存在だったとしても。

 アメリカの地方都市のような街で繰り広げられる、ファンタジー要素を含んだハードボイルドアクションものという感じだ。フィリップが持つある特性によって、偶然に、しかし特性の条件を考えればある意味では必然的に出会った、少女と男。
 男は少女のトラブルに巻き込まれ、そのお人よしさで嫌々助けながら、明らかに人とは違う特性を持つ彼に対して距離をとらない彼女に、親愛の情に近いものを感じていく。一方、少女は、たとえ彼がマフィアなどにやられない特性を知っても、彼を普通の人間であるかのように扱い、妙に人懐っこくつきまとう。自分を利用しているのは他と変わらないのかもしれないが、そのことが、彼にとっては珍しいことだったのかも知れない。

 そうして訪れる結末。初めはちょっとガッカリしたのだけれど、最後に無理矢理つけられたファンタジー的な解決が、次への含みを残した。
 あと、本書のあらすじは少し書き過ぎ。

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