葉巡明治作品の書評/レビュー

異世界娘と田舎生活 おい魔神、そっちは田んぼだ。

評価:☆☆★★★
田舎でのおだやかな日常をこよなく愛している少年・涼城セータローのもとに、異世界から魔神ナナラギ・ビネコがやってきた!!魔神の生活が嫌になり地球にしかない概念「ニチジョー」を求めてきたビネコのパートナーにセータローが選ばれたのである。理由は「特に個性がなく平凡だった」から。半ば強制的に異世界娘との田舎生活が始まるも、家の中にゾンビが出てくるわ、セミをとるだけでもバトルになる大騒ぎ。ビネコを追って現れた女騎士は自動販売機で硬貨を探すことに夢中になるし、さらには池のメダカを○○してしまう!!異世界人には常識が通用しない!?愛してやまない田舎生活はどこまで破壊されてしまうのか!!平凡な日常ぶち壊しコメディ開幕!! レクシィ・レットハート女騎士 中野さよさよ自立思考型セクサロイド

魔物ワールドは二周目令嬢が作ったのだ!

死者からの言葉
評価:☆☆★★★
 貴族令嬢のリテトエトは、住民の反乱によって領地を追われ、セバスの助けによってとある島へ流れ着く。その島は、死んだ人間が魔物となって生きる島だった。
 そこで魔物のために仕事をすることになり、クーコという少女と出会うリテトエト。だが彼女を憎むサナレイ・グリリエルの襲撃により、魔物は存亡の危機を迎える。

アプローチ、アプローチ。 (2) あなたたちは誰よりやさしい

とりあえず殺しあってくれ
評価:☆☆☆★★
 失踪していた父親である明野響樹が自宅に戻ってきた。妹の明野稲子は素直に喜ぶが、これまで顧みられることのなかった明野瀬人日は素直に許すことができない。そして、彼がこれから始まる能力者同士の殺し合いの主催者に関わっていることを知ったいまは尚更だ。
 言葉を聞いたものを死に至らしめる能力の樅山もみ子と共に、妹を戦いに巻き込まないために一時的に家を出た明野瀬人日は、広里ニイコの家に転がり込むことになってしまう。そこで幸せな家庭の姿を見て、自分の家と比較せずにはいられない。その頃、兄を探す稲子は、瀬人日を殺そうとする、嬉しいと悲しいが逆転した少女の田中と友達になっていた。

 なんかよくわからないけれど、能力者同士で50人殺さなければ皆殺しになるというゲームが始まり、瀬人日はニイコと共に、その殺し合いを止めるために動き始める。しかし、ニイコが田中に襲われ、自暴自棄になった瀬人日は、ニイコの言葉を忘れてしまうのだった。
 しかしこの能力者たちは意外に権力には従順で、自暴自棄になって無関係の人間を巻き込もうとしたりはしない、良識ある人たちばかりなのです。

アプローチ、アプローチ。 そして彼女は救いを言った。

刺客バトルではなく告白合戦
評価:☆☆☆★★
 小説家志望の高校生である中羽織夏彦の前に天使として現れたのは、死んだはずの妹である秋空だった。夏彦を狙う天国からの刺客を排除するために天国のルールを破ってしまった彼女は、そのまま消え去るはずだった。
 しかし今度は記憶喪失の人間として秋空は夏彦の前に現れる。元通りの家族に戻れると楽観した夏彦だったが、秋空の天使時代の先輩だった九葉がいうには、秋空を完全に消滅させるため、刺客が次々と送られてくるらしい。

 だけど今は文化祭。月坂太郎の出演する舞台では夏彦が脚本を書いた演劇が上演される予定だし、夏彦自身は幼なじみの夜空衣水音に告白するつもりだ。そして佐倉葉由香は何とか自分の思いを三弦馬静人に伝えたいと、夏彦と月坂に頭を下げてくる。
 そんな少年少女の思いが錯綜する展開であるが、夏彦自身も知らない想いがもう一つあった。それは彼女の妹が兄に抱く感情。それがどんな物語を生み出すか、まだ夏彦は知らない。

アプローチ、アプローチ。 そして彼女は救いを言った。

死をまき散らす少女
評価:☆☆☆★★
 明野瀬人日は妹の明野稲子との二人暮らしだ。昼間は学校に通い、夜は働くことで二人の生活を成立させている。家に帰れば稲子に包丁を投げられて殺されそうになるが、充実感のある幸せも感じている。
 そんなある日、瀬人日は目の前で人が破裂する情景を目撃する。それを引き起こしたのは、樅山鈴原という少女だった。彼女の声を生物が聞くと、死んでしまうらしい。それ故に、他人とは関わることが出来なかった樅山は、彼女の声を聞いても死なない瀬人日に懐き、彼の家までやってくる。

 しかしそれは、彼が今まで気づかなかった異常と出会うきっかけでもあった。彼が知らないだけで、誰もが異能を持っていたのだ。そのことを、樅山のことを調べに来た広里ニイコに知らされ、妹も異能を持っていることを知り、そして彼らが通う学校では、友人の宮色梶人晴と郡島氷水が派閥に分かれて殺し合いをしているという。
 そして樅山は、これまで無意識に人を殺してきたため、他人からひどく恨まれているのだ。そのことに罪悪感を感じつつも、せめて一人だけでも助けてから死にたいと彼女は言うのだった。

 心象も具象も描写が足りないので、そこは読者の想像力と読解力でフォローしないといけない。最低限、敵が味方になる瞬間や、相手に好意を抱く瞬間は丁寧に描いてあげないと、登場人物の行動がとってつけたようになってしまうと思う。

嘘つき天使は死にました! (2)

嘘つき天使に振り回されて
評価:☆☆☆★★
 過去に妹の秋空を亡くした小説家志望の高校生である中羽織夏彦の前に現れた天使は、彼を守るために天国のルールを破って消えてしまい、人間となって再び彼の前に戻ってきた。しかし彼女は、彼の記憶を失ってしまっている。
 もうに二度と失いたくないと強引に自分の家に連れて来てしまい、友人の月坂太郎や幼なじみの夜空衣水音、お嬢さまの佐倉葉由香や先輩の三弦馬静人と仲良くさせようとするのだが、記憶のない彼女は、彼らを怖がってしまう。それでも夏彦には懐いて日々を過ごしていたのだが、今度は彼女の先輩だったという天使の九葉が現れ、何やら画策し始める。

 記憶を亡くした元天使が、優しくしてくれる人の期待に応えようと、自分の居場所を作るために怖がりながらも頑張っていく。でも、そのことを良く思わない人も当然いる訳で…自分にとって最も良い世界は、他人にとってもそうだとは限らないのだ。
 相変わらず慣用句の誤用が散見されるので、その辺は校正の人などがフォローして欲しいところ。ひょっとして、真面目にチェックする気が失せてしまったのかな?

嘘つき天使は死にました!

嘘つき天使に振り回されて
評価:☆☆☆☆★
 小説賞に応募し落選する高校生・中羽織夏彦の前に天使が現れる。そして言う。「あなたはもうすぐ死にます」と。だから天使は彼を助けるためにやって来たという。だが、彼を助けても、その三日後には自分が死んでしまうらしい。
 自分が死んでも良いと思っている夏彦は適当に天使をあしらうのだが、天使は夏彦の心を変えて師の運命から逃れさせるため、周囲の迷惑を顧みず、あの手この手を使うのだった。そんな天使に振り回されるのは、いきなり風呂をのぞかれる佐倉葉由香やそののぞきを手伝う月坂太郎、先輩の三弦馬静人や幼なじみの夜空衣水音らだ。そしてその果てにたどりつくのは…。

 文章のテンポはよく、特にセリフは独特のスピード感を表現する手法が取られている。一方で、慣用表現には、キャラ付けのためにあえてかどうかは分からないが、少し言い回しが奇妙な部分もあったりする。構成もそこそこ荒っぽい。
 しかし、直球で感情をぶつけ合える若々しさや、ひとつのテーマに絞って延々と語り続ける執着は、評価に値する気がする。次巻がある様だが、もはや単なる学園ラブコメになるようにしか思えない。その先入観を裏切って、またハチャメチャな物語を読ませて欲しい。

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