長谷敏司作品の書評/レビュー

ストライクフォール (2)

評価:☆☆☆☆☆


ストライクフォール

評価:☆☆☆☆☆


My Humanity

評価:☆☆☆☆☆


円環少女(サークリットガール) (13) 荒れ野の楽園

円環の未来
評価:☆☆☆☆☆
 十万年先の未来、再演大系となった世界で、人類は遥か銀河に進出し繁栄を極めていた。開門の始祖の直系である大審問官は、再演の神が降臨した開門の始祖の時代に改変圧力をかけ、再演世界の安定化を図ろうとする。
 一方、人々が魔法消去の能力を失くし始めた世界では、魔法使いたちが堂々と謀略を繰り広げていた。再演魔導師となった武原舞花を使い、聖騎士将軍アンゼロッタ・ユーディナ指揮下の機械化聖騎士師団は、未来からの改変が常に優位に立つという再演法則を最大限に活用するため、未来からの再演魔導師の誘導に従い、人間が一人もいなくなる未来に≪増幅器≫を設置しようとしていた。

 その作戦を阻止するため、再演魔導師である倉本きずなを作戦の軸とし、武原舞花の抹殺に動く武原仁と鴉木メイゼルたち。彼女たちは自身の未来を取り戻すことが出来るのか、あるいは…?

 一発再逆転があるのか、どんな落とし所を見つけるのか、最後までよく分からなかったけれど、そういうところにたどり着くんだ〜という感じだった。
 ひとたび神が現出してしまえば、それがなかった時代には完全に戻れないというところは、文明の発展と似ているところもある。核兵器なんてその最たるものじゃなかろうか。そう考えると、この物語の中で核兵器は、科学世界の神として扱われていたのかもしれないな、と思った。

 倉本きずな、鴉木メイゼル、十崎京香、武原仁の関係の落ち着く先と、中盤での再演魔導師の≪運命の化身≫の凄まじい能力が、最終巻にふさわしい。

円環少女(サークリットガール) (12) 真なる悪鬼

評価:☆☆☆☆☆
 倉本きずなが武原舞花を再演大系の魔導師としたことで、未来の再演魔導師が望む通りに再演大系の神が降臨した。全ての魔導師は再演大系の操作の影におびえ、武原舞花を擁する神聖騎士団が事態をリードすることとなった。
 その影には、≪悪鬼≫の魔法消去の能力が低下していることもある。魔法消去は、≪蛇の女王≫≪魔獣使い≫≪破壊≫と共に、カオティックファクターのひとつだったのだ。ゆえに、再演大系の神の降臨により選択がなされた結果、他のカオティックファクターはその力を大幅に減じていた。

 未来の再演魔導師からの操作を恐れ、≪幻影城≫に閉じこもる倉本きずな。武原仁は、≪九位≫の身柄を材料にアトランチスのハウゼン・O・ジモリーこと王子護ハウゼンと交渉し、彼の情報と資金を利用して事態の打開を図ろうとしていた。
 でも、どれだけ切羽詰まった状況になっても、おっぱいと寒川紀子の調教は不滅。ここから見ても、彼らが身内を中心に世界を考えていることが分かろうというもの。もはや空間だけではなく、時間すらも超えて操作される状況だというのにね。その辺の差異を補うために、十崎京香という官僚がいるのだろう。

円環少女(サークリットガール) (11) 新世界の門

魔法使いの地獄
評価:☆☆☆☆☆
 ≪九位≫グラフェーラ・トリアが仕掛けて来た全面核戦争の危機と、王子護ハウゼンが仕掛けて来たアトランチス人でっち上げによる魔法の周知という策略の二つに対応するため、魔法使いの世界と悪鬼の政府は呉越同舟の複雑な絡み合いを見せる様になった。その混乱の中で、警察機構の中に組み込まれた十崎京香は、≪公館≫の論理を保持したままで研ぎ澄ます。
 再演大系の魔法使いにして“普通”の女子高生・倉本きずなは、彼女の身柄を狙う神聖騎士団が米国を通じて日本政府に働きかけた関係上、≪公館≫からも追われる立場になってしまった。魔法使いとして強力であることを知った武原仁は、彼女にライフル銃を渡し、敵を撃つようにいう。

 ≪九位≫と鴉木メイゼルの闘争も描かれるのだが、今回の中心は“普通”の女子高生・倉本きずなの転落と絶望だろう。魔法使いとしての力に目覚め、ゆえに武原仁に突き放され、敵を殺さなければ殺されるという、正真正銘の“地獄”に落とされる。そこで掴んだかに見えた希望も、さらに彼女を突き落とす結果にしかならない。既に地獄の底にいるメイゼルの戦いとは対極にある様相だ。
 ここは真の終着なのか、あるいは“普通”を取り戻せるときが来るのか、それはこれからの展開にかかっている。

円環少女(サークリットガール) (10) 運命の螺旋

神話の座から降り立つ魔法使いたち
評価:☆☆☆☆☆
 警察庁警備局に事実上組み込まれた魔導師公館の事務官・十崎京香は、≪協会≫の主流派に対抗するため、二つの策を準備していた。ひとつは、一般市民の“目”をネットワーク化して、魔法使いの行動範囲を封じるMシステムの構築。もうひとつは、魔法使いの第三位勢力である≪連合≫との共闘の呼びかけである。これにより、実働部隊である専任係官と刻印魔導師を実効的に失った≪公館≫と日本政府が、これからの≪協会≫や神聖騎士団との戦争の中で存在感を維持しようというのだ。
 一方、東郷永光から≪鬼火衆≫の生き残りを引き受けた武原仁は、鴉木メイゼルの謎カレーに苦しめられつつ、悪人としての一歩を踏み出し始めていた。そこに、≪魔術師≫王子護ハウゼンが、死んだはずの武原舞花を連れてやって来る。彼女は、小学二年生くらいの見た目になっていた。

 ≪連合≫の最高議長、混沌大系≪導師≫アリーセ・バンシュタインの来日で開催される、魔法使いと≪悪鬼≫代表である警察との会議において明らかにされる円環大系の秘すべき事件、≪大崩落≫の真相。それを明かすのは、イリーズ・アリューシャの娘であるメイゼルだ。そして彼女は、≪九位≫の本当の名前も明らかにする。
 さらにその場では、もうひとり、糾弾される人物がいた。超高位魔導師であるアリーセすら恐れるその人物の名とは…。

 普通の女子高生の立場を頑なに主張し続けた倉本きずなにも、奇麗事だけでは切り抜けられない状況が訪れる。それなのに、エピローグの王子護ハウゼンの行動は、あまりにも意外すぎて笑いと無縁ではいられない。

円環少女(サークリットガール) (9) 公館陥落

窮鼠の一刀
評価:☆☆☆☆☆
 ≪幻影城≫の機械化聖騎士師団との死闘から生還したものの、倉本きずなとの信頼関係を失った武原仁が見たものは、魔術師公館本館が焼け落ちた姿だった。十崎京香は日本刀で腹を刺されて重傷。それらを成したのは、専任係官≪鬼火≫東郷永光だ。≪鬼火衆≫を引き連れて出奔した彼は、≪協会≫の秘奥である≪門≫を落すため、地下迷路へと侵攻していた。
 十崎京香から東郷永光抹殺依頼を受けた武原仁は、鴉木メイゼルを連れて地下へと降り立つ。そしてそこで彼が見つけるのは、東郷永光の真意と、武原舞花が死ぬことになった理由だった。

 ≪協会≫と神聖騎士団の戦争に、日本と米国、≪地獄≫の政治闘争が絡み合い、破滅的戦争への序曲が奏でられる。そしてそこには、鴉木メイゼルの母イリーズ・アリューシャの最後が無関係ではないらしい。彼女と≪三十六宮≫の≪九位≫の間に何があったのか?
 その謎を残しつつも、東郷永光の最後の戦いが描かれる。そして、武原仁も、自分が何のために戦っているのか、その根底を自覚して選択するのだ。

円環少女(サークリットガール) (8) 裏切りの天秤

迫る選択のとき
評価:☆☆☆☆☆
 再演大系の魔法使いである倉本きずなに関係する賢者の石を狙い、神聖騎士団の聖騎士将軍アンゼロッタ・ユーディナが五千の機械化聖騎士師団を引き連れて来日した。≪協会≫から切り捨てられた≪公館≫を率いる十崎京香は、武原仁という失われた銃弾の隙間を埋めるように、公安警察の協力を仰いで対処しようとするが、戦略的には既に敗北している戦況だ。
 襲われた倉本きずなと命からがら逃げた武原仁は、エレオノール・ナガンの住まいに転がり込む。鴉木メイゼルはいないながら、代わりにエレオノールを加えて団欒を取り戻したかに見えたが、そんなに甘い状況ではなかった。

 圧倒的戦力差に、一方的にやられ続ける武原仁。そして、機械化聖騎士師団の参謀ベレーノ・ネロの口からマルク・フェルゼーの名が出たとき、きずなとの信頼関係すらも崩れてしまう。さらに、彼らの関係に決着をつけるため、メイゼルまでもが武原仁に勝負を挑んできてしまうのだった。

 情報はなく、まともな武器もなく、何らサポートが受けられない状況で、これまでで最も強大な敵に立ち向かわなければならない状況を作られてしまった武原仁は、今まで曖昧にして享受していた幸せすらも奪われることになってしまう。
 その絶望に追い討ちをかけるように強制される選択の数々に、彼はどんな決断をし、彼らはどこに行き着くのか?優柔不断な仁の年貢の納め時か?

円環少女(サークリットガール) (7) 夢のように、夜明けのように

嵐の前の穏やかな日々
評価:☆☆☆☆☆
 1巻と2巻の間に相当するエピソードが二本、6巻ごのエピソードが二本の短編集なのだが、幕間劇を挟むことで、次の大きな展開に向けての導入の長編的な位置づけになっていて、構成的に面白い。

「しあわせの刻印」
 今回のマジカルびっくり魔法使いは、因果大系の内藤サミュエル。町工場の娘と結婚した刻印魔導師は、ヤクザにカタにはめられ、十崎家に夜逃げしてきた!書類上、彼を管轄する専任係官である武原仁は、大家族の彼らを世話することになるのだが…。

「つながれる愛のしるし」
 マジカルびっくり魔法使いは、天盟大系のマチルダ・クリストルッツァ。しりとりで滅びた故郷を救うために…という名目で上司に追い出された巫女である彼女は、愛から呼び出されるという究極の魔法構造体インマラホテプを召喚するため、武原仁、倉本きずな、鴉木メイゼルの間にそれを見出そうとして大騒動を起こす。

「薔薇はうつくしく散る」
 マジカルびっくり魔法使いは、賢猟大系の瀬利ニガッタ。生徒会長選挙に立候補すると言い出した鴉木メイゼルに巻き込まれた寒川紀子と天瑞岬。対立候補である速水志保を下すため、メイゼルは壮絶な選挙戦を繰り広げる。

「ハダカのこころで」
 マジカルびっくり魔法使いは、錬金大系のセラ・バラード。寒川家に家庭訪問に行った武原仁は、寒川紀子の母親を名乗る全裸の魔法使いと再会する。人の話を聞かない全裸女は、寒川紀子に新たな世界への扉を開かせてしまう。合掌。

円環少女(サークリットガール) (5) 魔導師たちの迷宮

それぞれの正義
評価:☆☆☆☆☆
 全共闘世代の生き残りであるテロリスト国城田義一が確保した核兵器を押さえる仮定で、鴉木メイゼルは狩猟魔導師中隊のアナスタシアに狙撃され、瀕死の重体となってしまう。メイゼルを助けるには≪協会≫の魔導師に頼らなければならない。しかし代償なく彼らがメイゼルを治療することはない。その代償として≪協会≫が持ち出したのは、狩猟魔導師中隊の策源地である地下都市にいる魔導師を排除するということだった。
 それを行うことは、≪公館≫の命令を無視することであり、専任係官を敵に回すということ。それに、地下都市に囚われている倉本きずなを切り捨てるという選択にもなりかねない。しかし武原仁は、目の前の失われる命を止めるため、十崎京香を裏切る決断をする。

 地下都市で繰り広げられるのは、かつての剣の師匠・東郷永光との死闘、そして魔法戦闘の師匠・王子護ハウゼンからの悪魔の誘惑。地上と地下では、各々が信じる正しさに殉じる戦士たちが、それ以外の勢力を排除しようと死力を尽くす。
 明かされる武原舞花の死の真相、地下都市で繰り広げられてきた戦闘に隠された秘密、そして王子護ハウゼンは何のために戦うのか…。命令ではなく、自らの意思で選択し決断する武原仁の新たな道が始まる。

 新たな信仰を見つけ出したエレオノール・ナガン、かつては革命を志しながら今は普通の父親である寒川淳、秩序のために全てをひれ伏させる清水健太郎、数十年前の理想で時が止まった老兵・国城田義一、それぞれにそれぞれの正義があり、それぞれに魅力を感じる人々が居る。それらが絡まりあった平衡点に、現代の日常はあるのだろう。

円環少女(サークリットガール) (5) 魔導師たちの迷宮

曖昧な境界での戦い
評価:☆☆☆☆☆
 倉本きずなと専任係官《魔獣使い》神和瑞希は、王子護ハウゼン率いる部隊に拘束されてしまい行方不明になった。専任係官《沈黙》武原仁は、核兵器を受け取ったはずのテロリスト国城田と、《魔法使いの弾丸》を装備したワイズマン狩猟魔導師中隊に守られた核兵器列車を追跡しつつ、きずなを取り戻そうとする。
 だが、狩人であるはずの《公館》は、ワイズマン狩猟魔導師中隊により、逆に襲撃を受ける立場となった。事務官・十崎京香は狙撃され、武原仁は警察との官僚的縄張り意識の間に苛まれる。そして、彼らが打ち倒すべき敵の正体を知った時、彼の選ぶ道とは…?

 刻印魔導師をすり潰し、歴史の裏側での魔法使いの戦争を隠ぺいして来た《悪鬼》は、その歴史が生んだ陥穽に自らはまってしまうことになる。誰が敵で誰が味方、誰が魔法使いで誰が悪鬼か、それぞれの区別が曖昧になり入り混じった境界線で、武原仁は過去の後悔と現在の選択を結びつけ、自らの帰る場所を失いかねない道を選ぶ。
 寒川紀子が鴉木メイゼルにいつもの様に翻弄される日常パートすら、実は非日常の戦いにつながっているという構成は、あまりにも都合が良い配置ではあるが面白い。

円環少女(サークリットガール) (4) よるべなき鉄槌

過去から届くメッセージ
評価:☆☆☆☆★
 鴉木メイゼルと倉本きずなを居候として抱える武原仁のアパートの部屋に、蛍の様な黄色の泡の魔法構造体がやってきて住みつく。それを見る武原仁の表情は、痛みに耐えるような、何かを懐かしむ様なものだ。
 またもや秘密を持たれたメイゼルは、その魔法構造体が悪鬼の魔法消去に耐えて部屋までたどり着いたことから、人目につかない秘密のルートがあることを推理する。きずなを連れ、その場所を確かめるために過去の資料に当たっていたメイゼルは、期せずして寒川紀子と遭遇し、いつもの様に罵るのだった。

 武原仁の妹である武原舞花との過去が少しずつ明かされる。優秀な、しかし普通の女子高生だった十崎京香の、そして武原仁の人生を変えた舞花の魔法使いとしての覚醒の名残が、現在にまで残されている。それに武原仁が接する度、そして進行中の事件の調査をする際に過去の名残に接する度、彼は後悔に苛まれながら、その失敗を現在に生かすための力にしていく。
 彼の師匠であった王子護ハウゼンが張り巡らした網と、神聖騎士団の新戦力が衝突する時、魔法戦闘は次の段階を迎える。

円環少女 (3) 煉獄の虚神 下

自分の居場所
評価:☆☆☆☆★
 円環大系の刻印魔導師である鴉木メイゼルは専任係官・武原仁の許を去り、専任係官《魔獣使い》神和瑞希の許に身を寄せ、式神・因達羅として、相似大系の魔導師《神に近き者》グレン・アザレイに挑むことを選択した。武原仁はメイゼルを取り戻そうと、倉本きずなに手伝ってもらい、メイゼルの意志を確かめるが、彼女の決意は固い。
 一方、グレン・アザレイから力を与えられた元刻印魔導師の浅利ケイツは、かつて自分を裏切った王子護ハウゼンから金を受け取り、グレン・アザレイに立ち向かおうとしていた。

 自らの依って立つ土台は何か?メイゼルが、ケイツが、大義を掲げ英雄として悪鬼を滅殺する正義の道を進むグレン・アザレイと戦うことで、それを自覚していく。そして、武原仁も、自分にとってのメイゼルとは何かを考えさせられるのだった。

 口絵が上下で入り混じっていて分かりづらい。内容と口絵は合わせよう。

円環少女 (2) 煉獄の虚神 上

命か誇りか
評価:☆☆☆☆★
 円環大系の刻印魔導師である鴉木メイゼルが武原仁と出会ったきっかけであり、彼女が初めて対した犯罪魔導師・浅利ケイツが、専任係官《鬼火》東郷永光の管理する刻印魔導師《人形師》綾名ネリンの手引きで脱獄した。その背後には、かつて武原仁に戦闘技術を教えた元専任係官・王子護ハウゼンの影が見える。
 魔導師の誇りにかけて、武原仁に護られる存在でいることに耐えられないメイゼルは、ただひとり、ケイツと人形師に挑もうとする。一方、武原仁は彼女に普通の小学生としての生活を送って欲しく、しかしそれを正面から彼女に伝えることもできない。

 そうこうするうち、《協会》の支部を潰し魔導師を大量に殺害した魔導師《神に近き者》グレン・アザレイが魔導師公館に攻め込んでくる。それを阻止した刻印魔導師は、直ちに全ての罪を許される。そんな条件に魅せられ、多くの刻印魔導師が彼に挑み、そして散った。ゆえに仁は、メイゼルに彼と相対して欲しくない。しかしメイゼルの誇りは、彼女を戦いに向かわせるのだった。

 メイゼルのエスっ気が暴走しクラスメイトの寒川紀子を追いこんでいったり、武原仁が天瑞岬に追い込まれたりする日常パートがありながら、そこにとどまることを良しとしないメイゼルが自ら進んで戦場に身を投じる。彼女にとっての幸せとは何なのだろう?

円環少女 (1) バベル再臨

魔法なく神なき世界に
評価:☆☆☆☆★
 数多ある世界には自然秩序を揺るがす魔法があり、その影響を調整するための神がいる。しかしこの世界には魔法がなく神もいない。ゆえにこの世界は地獄と呼ばれ、そこに住む人々は悪鬼(デーモン)と呼ばれる。なぜなら彼らが観測すれば、魔法という奇蹟は跡形もなく消え去ってしまうのだから。
 そんな地獄である地球には、魔法諸世界から追放された刻印魔導師がいる。彼らは文部科学省文化庁魔導師公館の専任係官に預けられ、彼らの下で《協会》の敵である魔導師を100人討伐しなければ自由になれない。

 そんな専任係官のひとり、武原仁に預けられたのは、円環大系の使い手、鴉木メイゼルことメイゼル・アリューシャだ。十を超えたばかりの年齢ながら刻印魔導師として登録されている。専任係官を統括する事務官・十崎京香の考えで小学校に通っている鴉木メイゼルは、同じく臨時教師にさせられた武原仁と共に、新たな命令を受けた。
 《協会》を裏切った《染血公主》ジェルヴェーヌ・ロッソの討伐に従事した二人だったが、その過程で《協会》の前任の調整官を殺害した神音大系の神聖騎士団・エレオノール・ナガンの情報を得、60年前に失われたはずの再演大系の使い手の女子高生・倉本きずなを保護することになる。

 文節の区切りが上手くなく読み難いところもあるが、ゴリゴリに複雑な魔法設定を作れるので、はまる人ははまる感じの物語になっている。

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