日野一二三作品の書評/レビュー

A=宇宙少女2×魂の速度

ただひたすらに突き進め
評価:☆☆☆☆☆
 遠矢孝文は幽体離脱体質の高校生。失恋のショックを紛らわすために、ちょっと月まで遊泳しようと思い立つ。岩だらけの何もない場所のはずなのに、月の上には白いワンピースの女性が一人。別れ際に告げられた言葉は、「静かの海でまた会いましょう。」…孝文には、一つの目標ができた。

 全国区の競泳選手だったのに、飛び込み自殺者を助けたばかりに足に障害を負い、夢を手放さなければならなくなった孝文。莫大な予算を要する科学によるアプローチではなく、オカルトを利用して宇宙の謎を解くことを目的とする財団を祖父・父から受け継ぎ、宇宙の果てにいるはずの無という神を探すという夢を追求する藍澤瞑。二人の出会いによって形になる、奪われた夢から新たな夢へという精神的再生、科学的アプローチに真っ向から対抗するオカルトによる真理探究、オカルトの専門家である幼なじみの野々崎奈美や元気いっぱいの後輩藤宮小夏たちの友情、ミステリアスなお姉さんとの出会いなど、様々な要素が盛りだくさんに詰まった物語だ。

 これだけ色々な要素が詰まっているとまとまりがなくなりそうだけれど、ストーリーの芯がぶれないことと、キャラクターが自分の役割を外れることなく上手く動くので、破綻なく進行する。(まあ、二人ほど若干いき過ぎな気もするけれど。)
 一方で、孝文が夢を断たれてくすぶっているという事実がラストの解決に向けての重要な要素になるのだけれど、彼の強がりでくすぶっているところが見えづらいので、解決のイベントをやる必要性に強く共感することができなかった点が残念。もう少し初めに落ち込んでいるシーンがあってもよかったかもと思う。
 これって次に続くのかな?続巻が発売されれば購入するのは間違いない。

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