比嘉智康作品の書評/レビュー

キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った

評価:☆☆☆★★


たまらん! メチャクチャな青春ラブコメに巻き込まれたけど、生まれてきてよかった。

世紀の大誤診
評価:☆☆☆★★
 余命一週間と宣告されたたまらんこと玉木走太は、幼馴染の志村誉、庵藤充、若芽靜香の3人と最後の一週間を楽しみまくり、さらには彼らが連れて来てくれた憧れの月形嬉々と最初で最後ののキスまでできてしまった。
 ところが、余命一週間の診断は真っ赤な誤診であり、たまらんの高校生活はこれからも滞りなく続くようになる。しかしそれに怒ったのは人生最後だと思ってキスを許した月形嬉々だ。実は志村誉が想い人だった彼女は、余命をたてにキスを迫ったことをみんなにばらされたくなければ、彼女が彼と付き合えるように支援するように命じる。ところが志村誉は購買の守銭奴、色鳥いろりに恋していた。

 相変わらずヒロインに色々変な設定がある。

転醒のKAFKA使い

引き継ぐ記憶、背負う因縁
評価:☆☆☆☆★
 子供の頃から鮮明な異世界の出来事を覚えていた周防崇は、その内容を小説にまとめた作品を投稿し、編集の助川大海に拾われ、俳島否作としてラノベ作家デビューを果たした。
 その作品の名は「aBis」。それは単なる妄想だったはずが、ある日、宇宙からのコンタクトによってKAFKAという超能力に目覚めたことで、現実とリンクしてくる。

 同級生の住友真白と仲良くなりつつ、aBisのシュシュとして覚醒したP名乃南から、彼の前世がジプリーという英雄であり、aBisが実在する異星であると伝えられ、彼の日常は前世を追いながら覚醒していく日々へと変貌していく。
 前世のシュシュのストーカーで異常者のメメントからP名乃南を守るため、周防崇は訓練を開始するのだが…。

覚えてないけど、キミが好き (2)

女子高生たちから迫られる生活
評価:☆☆☆☆★
 小衣吉足が妹の小衣ひなたの他に、元カノだという転校生の浅海ゆららと暮すようになってしばらくが過ぎた。他人の幸運を吸い取らないと生きていけないひなたとは、毎朝5秒間だけハグをしなければならないのだが、ゆららと半分ずつ分担するようになり、吉足が見舞われてきた不幸も大分楽になった。しかし未だ、ゆららが彼女だったときのことは思い出せないし、実はひなたが義妹であることも思い出せない。
 ゆららが吉足の元カノであることは学校中が周知の事実であり、その熱烈な思いを受け入れない吉足は重度のシスコンであるという噂が学校中を駆け巡っていた。吉足に対するシスコン疑惑を晴らすため、ひなたとゆららは様々に策を巡らし、結局は吉足にセクハラをかますことになる。

 両親を火事で失ってしまった小衣家は裕福ではないが、商店街のくじ引きで運良く高級プールのペア招待券を手に入れ、清水の舞台から飛び降りるつもりで、3人でプールに遊びに行くことになった。プールなので当然水着だ。そしてまた、不幸なのか幸運なのか分からない事態に見舞われることになる。
 人生の恥を店ざらしにするようなあとがきがすごい。

覚えてないけど、キミが好き

運と愛
評価:☆☆☆★★
 小衣吉足は妹の小衣ひなたと二人暮らしをしている。三年前に両親を亡くし、当時新築の家によすがを求めたのだ。そんな彼にはひとつ日課がある。それは、朝起こしに来るひなたに5秒間だけハグをすること!
 こういうと単なるシスコンの兄の様に思えるが、それには深刻な理由がある。ひなたは他人の幸運を吸い取らなければ生きられない体質で、他人に抱きつくことでそれを吸い取ってしまうのだ。しかしひなたは自分の体質のことは全く知らない。

 ゆえに吉足は不幸キャラとして周囲から認知され、実際、様々に不幸な目にあいながら、それでも妹と幸せに暮らしている。そんなある日、吉足のクラスに転校生がやってくる。絶世の美少女と呼んでもよい彼女は、浅海ゆららといい、自分は吉足の元カノだと名乗ったのだ。
 しかし、三年前から吉足には親しい人の過去の記憶がない。関係が薄い人のことは覚えているのだが、親しい人ほど忘れてしまっているのだ。当然、元カノのことは覚えていないし、本当かどうかを検証する術もない。

 それでも彼女の言葉を信じる気分になったのは、彼女がいま住む場所をなくしてしまったその理由にあった。結果、元カノと妹、二人の美少女とひとつ屋根の下に住むことになるのだが…。

 つまりは甘修羅系シスコンラブコメとも言うべき作品なのだが、その部分に特筆すべき要素や、ラブコメ的に上手いと思えるような部分はあまりない気がする。作者的に、テンポの良い会話と、一ひねりした少しブラックな設定が醍醐味の作品と言えるだろう。その辺がどう深化していくのかは気になる。

泳ぎません。 (2)

理性崩壊の一歩手前
評価:☆☆☆☆★
 永遠高校新聞部唯一の部員である神卵太郎は、隣家の小学生・森美唄と一緒に晩ご飯を食べている。両親がいない彼女が一人になることがない様に気を使っているのだ。そんな彼らの日課は、近くのリゾートプールへ行くこと。泳げない美唄の練習と、神卵太郎の水恐怖症克服のためだ。
 そこに、オーナーの娘であり、神卵太郎がふった小田部桜子がやって来る。そして神卵太郎に、お試しで返却可能なレンタルDVDのごとき付き合いをしてみないかと誘惑する。その誘惑に反応した美唄は、どちらが神卵太郎の水恐怖症を克服させられるか競争することになる。

 また別の日、同じ様に美唄と桜子が互いにライバル視しているとき、同じプールに保健体育の教師にして水泳部顧問のお姉さん、野々宮麻美がやって来て、意図せず神卵太郎にトップレス姿を披露してしまう。その代償として、水泳部の綾瀬八重、茂依子、榛名日唯と仲良くすることを強要されるのだが、その結果、色々と大惨事が起きることになる。

 シリーズ最終巻。ストーリーはほぼ放棄して、ラッキースケベなイベントが目白押しの展開となっている。ストーリーテラーは1巻とは異なり神卵太郎が担当だ。
 学校一の美少女に紙製水着で迫られそうになる展開になったり、お姉さん教師を余すところなく目撃してしまったり、錯乱して迫られたり、おいしくも恐ろしい事件が満載。でもイマイチ、エロくはなり切れていないので、何がしたいのかははっきりしない。

泳ぎません。

プールサイドでだらだら
評価:☆☆☆☆★
 永遠高校水泳部には、女の子しか在籍していない。綾瀬八重、茂依子、榛名日唯という、学校でもトップクラスの美少女たちだ。彼女たちは顧問の野々宮麻美が席を外している一時間ほど、プールサイドで休憩をする。もちろん水着姿のままで。彼女たちは学校生活の三分の一以上を、布切れ一枚で過ごしているのだ。
 というわけでプールサイドで繰り広げられる日常系のお話だ。基本的に男子は、神卵太郎という謎の新聞部員しか登場しない。そして女子たちは美少女ではあるのだけれど、男には全く興味がなく、そしてちょっと変わったキャラクターを持った娘たちだ。

 水泳部なのにプールで泳いでいる描写は全くなし。活動をしていないわけではなく、休憩時間しか扱わないからなのだが、その休憩時間に繰り広げられるガールズトークは、妙なゲームであることが多い。三人寄れば姦しく恋愛トークで盛り上がる女子高生とは一味違うのだ。
 神卵太郎がなぜ登場したのかは、大体分かった。あとはこの一風かわった女子高生たちで何をやりたいのかだ。逆説的に恋愛のよさを伝えたいのか、あるいは恋愛ばかりで何も考えていないバカさをたしなめたいのか、またはラノベの最近の風潮を変えたいのか…。そのあたりをどう考えているのかは、次巻以降で自然に分かることだろう。

神明解ろーどぐらす (5)

下校家ハーレムエンド
評価:☆☆☆☆☆
 三石留萌を刺し千歳キララを今も狙う連続殺人犯の東神楽当麻が、池田十勝の前に先輩として現れた。しかも東神楽は、大切な下校仲間の丹下まりもと一緒に下校しようとしている。
 その状況に危機感を思えた十勝は、千歳もまりも好きだから他の男と一緒に帰るな、とハーレム宣言する。まりもは、そんな十勝に引くこともなく、十勝にひとつの条件をだすのだった。

 まりもにも留萌の存在を明かし、連続殺人犯を捕まえるために奔走する彼らだが、他人の頭に意識を飛ばしている被害者からの証言などを警察が本気にしてくれるわけがない。そこでまりもは、十勝たちに内緒で、大胆な手に打って出る。
 そうして始まる文化祭。その最中にいなくなってしまう千歳。彼女の行き先を探るため、東神楽に電話をかけたまりもは、文字通り自分の命を賭けた伝言を残す。

 下校家大活躍の完結編。二股、三股をかける最低の男として有名になった十勝と、カッコイイ転校生としてちやほやされる殺人犯の対決が描かれる。
 だが、もちろん彼も活躍したのだが、事件解決に奮闘したのは意外なことにまりもだろう。十勝に恋する乙女は大胆な作戦を決行する。

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神明解ろーどぐらす (4)

崩壊寸前の下校生活
評価:☆☆☆☆☆
 千歳きららの頭の中に住んでいる三石留萌からの、キララを人質とした脅迫に従い、留萌のわがままに付き合うことにした池田十勝は、夏祭りから失意のまま帰った丹下まりもにも本当のことを言えず、真夜中に留萌に呼び出されて下校?したりする。
 4人での下校生活が崩壊してしはじめた頃、徐々に留萌の様子が変わり始め、十勝は留萌がきららの頭の中にいる真相を知ることとなる。

 3巻でも終盤に驚きの展開になったけれど、今回も中盤から予想外の展開になって来る。まさか、これまで続いて来た平和で楽しい下校生活が、あんなヤツを登場させるための布石だったなんて!という展開だ。
 題材的にかなりチャレンジングで、これまでの日常系の展開が好きだった人には嫌がる人もいるかもしれないが、個人的には意欲的な作品は大好きだ。
 まあでもこれ、一歩間違うとバッドエンディングにまっしぐらな展開だけど、十勝が体当たりで挑んでいるので、あんまり不安を感じないな。

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神明解ろーどぐらす (3)

夏休みにも下校をする方法
評価:☆☆☆☆★
 夏休み前に池田十勝が丹下まりもについていた小さな嘘の内容とは。そして、夏休みも下校をするために十勝が繰り出した秘策とは何か?

 3巻目だからそろそろ出しても良いかなという感じで、千歳キララが抱えていた秘密が十勝に開示される。中盤ではそういうキャラで行くんだ、というくらいだったけれど、ラストはかなりエグい展開になっていた気がする。
 色々かき回されたけれど、次はどういう話になるのか。夏祭りに行くのは下校じゃないじゃん、という点はおいておいて、意外にシリアス要素のあるストーリーになってきました。

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神明解ろーどぐらす (2)

夏休み前のちょっとした変化
評価:☆☆☆☆★
 下校4人組のメンバーは下校の目標を立てることになります。

《千歳キララ》高校三年間の目標を見つける。
《丹下まりも》リスナーから寄せられた相談を全て答える。
       誰かを好きになってみたい。
《富良野咲》迷い猫を見つけ、猫探しの張り紙よりいい写真を撮る。
《池田十勝》女の子三人の目標を、必ず確実に叶えさせてみせる。

 下校関係なくなってるじゃん、というツッコミは置いておいて、この目標を達成するために繰り広げられる物語は、読んでからのお楽しみ。

 一学期最後の日の下校も終え、次巻は夏休み以降の物語になるはず。果たして夏休みに下校はあるのか、下校と関係なく遊びに行く話になるのか。そのあたりも楽しみです。

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神明解ろーどぐらす

楽しい下校風景
評価:☆☆☆☆★
 高校生活のうち、下校という部分にだけスポットを当てて、ひたすら寄り道の様子だけを描いている。それというのも、主人公の池田十勝が下校時に遊ぶということに強烈な憧れをもっていて、入学式の下校時にデパートの催事場で偶然出会った少女三人と意気投合、それからは一緒に下校するようになったからだ。
 この少女たちがいずれもかわいいのだけれど、基本的にマイナス思考に陥っている千歳キララ、放送部に所属して学校のアイドルを目指すおしゃべりな丹下まりも、セミプロの写真家でちょっと性格が黒い富良野咲という、それぞれの個性がある。

 下校という狭い領域に特化し、ハーレム的な展開に持ち込むところは、柳の下に二匹目のドジョウを狙ったようにも見える。それに、お互いあまり良く知らないのにいきなり意気投合して、帰る方向が違うにも拘らずほぼ毎日一緒に下校するという展開は、性急に過ぎるような気がしなくもない。
 しかし、スポーツ漫画などを見ても、同じ部活に所属しているというだけでお互いのことは良く知らない場合もあるし、描かれるのは部活風景だけで日常の様子が描かれないことも多いのだから、"帰宅部"の活動風景を描いていると割り切ってしまえば、こういうのもおかしくはないのかもしれない。
 ただ、こういう風に理解したとすると、いくつかの疑問が残る。例えば、丹下まりもはみんなから好かれたいのだから、特定の誰かとばかり一緒に遊ぶよりも、色んな人と遊んでいる方が彼女の目的に適うはずだ。富良野咲は、生徒のいろんな面を写真におさめたいのだから、学校に残って自ら部活の様子を撮りに行っても良いはずだ。つまり、彼女たちがあえて"帰宅部"を選ぶ動機が少ない気がしてならない。

 こんな変なことを考えずに、少年一人と少女三人というシチュエーションで生み出される、様々な下校風景を、ちょっとニヤっとしながら楽しむのが正しい楽しみ方ではあると思う。

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