日富美信吾作品の書評/レビュー
日本子・チャチャチャ あいむジャパン
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私立州久根学園に奨学金で通う普通の高校生の草薙鎮雄は、ある日、黒ずくめのマッチョどもに拉致された。連れて行かれた先は首相官邸。そこで待っていたのは、日本国内閣総理大臣となった祖母の日枝観琴だった。
日枝観琴から草薙鎮雄に申し渡されたのは、アルバイトを引き受けること。それは一人の女の子を、24時間つきっきりで面倒を見ることだった。
しかしその女の子というのは普通ではない。見かけは膨らみ分がないどころか抉れ分と呼んだ方が良いくらい残念な体型だが、彼女こそは日本子、その機嫌で日本のありようが左右されてしまう、日本の化身なのである。
日本子の世話係であるはずのメイドの阿素巳は、見かけこそ膨らみ分が溢れるほどであるものの、ちっとも働かないどころか、全ての仕事を鎮雄に押しつけてくる。
そんな彼の安らぎは、後輩で巫女の出雲八尋をいじること。見かけは良いが自信がないぼくっ娘である出雲は、美人とか可愛いとか言われると、テンパって壊れてしまうのだ。
だがそんな平穏に満ちあふれた学園生活も、日本子の乱入により、ハチャメチャなものになってしまう。
ストーリー性は皆無といって良く、記号的キャラクター性を全開にして突っ走ったという感じだ。ラノベとして致命的だと思うのは、キャラクター間の相互作用が存在しないということだろう。
メインヒロイン、サブヒロイン、他女性キャラクターも登場するのだが、彼女たちと主人公のやりとりは、基本的に一対一でしかない。ヒロイン同士が互いに影響を与えるようなシーンがほぼないのだ。つまり、個々のヒロインに対するシナリオが、パラレルに進行しているに等しい。これでは物語として盛り上がりに欠けるのも仕方のないことだろう。残念。
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