藤原京作品の書評/レビュー

時代劇のウソ?ホント?-大人の新常識

過去の常識は忘れ去られる
評価:☆☆☆★★
 ライトノベルのジャンルで戦国時代の常識を背景にした作品をたまに書いている著者が、コミック乱に連載していたコラムをまとめ、書下ろしを加えたもの。
 時代劇でよく取り上げられる忠臣蔵などに関するトリビアや、よく知られている戦国時代の合戦、例えば長篠の戦いや桶狭間の戦いの状況に含まれているウソ、大奥の階級制度などを紹介している。

 コラムをそのまままとめたものなので、前半で主張していた前提が後半で崩れている部分もあったりして、そこは統一感がなくて少し興ざめ。
(例えば十手持ちに関する情報など。)  でも、子どもの頃に読む伝記ものの常識が崩されるところは面白い。

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戦乱学園! 合戦の第一法則・弱い武将はよく攻める

リアルな戦国時代絵巻
評価:☆☆☆★★
 イラストは相変わらずきれいでかわいらしいのだけれど中身はハード。前作である「陰陽師は式神を使わない」にも多少関連しているのだが、今回は陰陽道ではなく、日本の戦国時代の戦史研究がメイン・ターゲット。おそらく、第四次川中島の合戦や、関ヶ原の合戦が下敷きになっている。
 設定がちょっと変わっていて、場所は現代日本のどこか。戦国時代の東海道の地理的環境を縮小して再現した土地に建つ高校。戦略拠点には寮が配置されており、それぞれに国司(通常で言うと寮長に近い)役の生徒が配属される。
 寮は独立採算制で、運営管理費を捻出するには、週末に、他寮の支配地域を抜けて学校に行き試験を受けるか、他寮を攻めて陥落し報奨金を受けるかしかない。まあ要は、実際の戦国時代の情勢を再現して、専門的な軍事知識を持った高校生が自分たちの生活を豊かにするために勢力争いをする感じ。これによって、戦国時代の戦争とは本当はどういうものだったのか、を浮き彫りにするのが作者の狙いらしい。

 自寮の情報を把握し戦略目的を定め、状況の変化にあっては作戦目的や戦術目的を明確にし、その実現のために事前に準備する。華やかな合戦のイメージしかない戦国時代の国盗物語に現実的な視点を導入して、本当は戦国武将のどこがすごいのかを明らかにしていくのだが、その過程は現在の社会情勢や国際情勢を踏まえて政策判断するプロセスを説明することと本質的には同じことなので、これを分かり易く、しかもエンターテインメント性を備えて作品にすることは至極難しいことだと思う。
 実際この作品も、用語や設定の面で懇切丁寧に説明してあるわけではないので、読み切るのは結構大変。実際ボクも、すべてをきちんと把握したとは言い難い状態。続刊が刊行され、色々と説明が加わるのを切望している。

 巻末に位階の説明などが掲載されているが、ネタバレなどはないので、そこを先に読んだ方が少しは理解しやすいかもしれない。

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陰陽師は式神を使わない

でも何かは使おうよ
評価:☆☆☆★★
 タイトルにあるように、式神は出てきません。敵も出てきません。それどころか何の事件もおきません。でも、ボクは結構好きです。
 内容は陰陽術入門といった趣です。卦を読むのも、何回かポイントになる部分を読み返せば、一応何も知らなくても、大体は理解できます。そういう意味で言うと、易経を読む前に読めば便利なんじゃないかなぁ。
 ということは、山田真哉「女子大生会計士の事件簿」の易経版ではなかろうか?ボクとしては続きが読みたいけれど、このレーベルの読者層に受けるかどうかは微妙だな。だって本当に何も起こらないんだもの…

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