伏見つかさ作品の書評/レビュー

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12)

まさかの結末
評価:☆☆☆☆☆
 クリスマスイブ、そして卒業と、少年や少女でいられた時代は終わる。高坂桐乃、新垣あやせ、黒猫こと五更瑠璃、櫻井秋美、来栖加奈子、田村麻奈実という、高坂京介を取り巻く女の子たちとの関係を決着させる時が来た。自分の好きな人を自覚した高坂京介は、大切な人たちに順番に告白をしに行く。それはけじめの旅だ。そして最後に辿り着く、大好きな人とは…。

 え〜、う〜そ〜だ〜!ホントに!!という展開だった。まさかこんなエンドを選択しようとは…。驚きである。詳しく書くと興ざめなので、気になる人は読んでみましょう。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (11)

冷戦の起源にあった認識の相違
評価:☆☆☆☆☆
 クリスマスを間近に控えた田村屋に、高坂桐乃と高坂京介の兄妹がいた。田村麻奈実と桐乃の話し合いのためだ。店番や久しぶりに姿を見せた桐乃に構う田村家の人々の相手をするため、肝心の話し合いは夜になってしまったが、二人の話し合いは、なぜか、三年前の京介の昔話になっていく。
 三年前、自分の才能を過信していた京介は、いまと同様のお節介を、いまよりも自信満々に繰り広げていた。周囲の目を気にすることなく、自分の正義を盲信しているところもあった彼は、櫻井秋美という不登校の少女を登校させるミッションに挑む。

 ところが櫻井秋美は、美少女で努力家ながら、学校に行くのは無駄と公言してはばからない、興味のないことには怠惰な女の子だった。何度あしらわれても、限度のない情熱で挑み続ける京介を、桐乃は憧れの目で見つつ、麻奈実は不安の目で見ていた。そして結果、破局は訪れ、今に至る関係に落ち着くことになる。

 黒猫こと五更瑠璃の正しき魔王という台詞がしっくり来るぜ。正論は妄想を一刀両断し、常識を突きつけてくる。だが、正論による決着を、桐乃の親友たる五更瑠璃や来栖加奈子、新垣あやせらは望まない。
 最終巻となる次巻では、京介を巡る女子たちの大バトルが繰り広げられる…のかも。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (10)

疑惑を受けての追放が複雑化への第一歩
評価:☆☆☆☆☆
 これまで仲が悪かった兄の高坂京介のことを、妹の高坂桐乃が名前で呼ぶようになったこと、ウェディングドレスを着て手をつないで帰ってきたことに、母親がある懸念を抱いた。この兄妹、デキてるんじゃないだろうか?と。
 もちろんそんな事実は無いのだが、二人が否定すれば否定するほど母親の疑惑は深まり、京介は一人暮らしを命じられることになる。帰宅の条件は、二ヵ月後の模試でA判定を取ること!

 そんな疑惑を二次元妹好きの御鏡光輝や、実妹・瀬菜大好きの赤城浩平に相談したりして無駄な時を過ごした京介だったが、一人暮らしをはじめると、これまで以上に女子が部屋に遊びに来るようになった。妹の桐乃は冷蔵庫を引っ越し祝いに持ってくるし、黒猫こと五更瑠璃や田村麻奈実はもちろん、来栖加奈子や新垣あやせまでもがやってくる。
 沙織・バジーナこと槇島沙織も呼んで行われた引っ越し祝いパーティの席上で、誰が京介の面倒を見るかで取り合いになる女子陣だったが、その争いを一喝した桐乃の裁定は京介嫌いを公言するあやせに面倒を見てもらうこと…それが危ない!

 黒猫の妹の五更日向が様子を見に行った京介の部屋で目撃したのは、シャワールームから出てきたあやせの姿だった。筧沙也佳という少女も騒動を引き起こし、ついにラストの一言へと突き進んでしまう。

 でも、思春期の高校生が一人暮らしをさせてもらえたら、喜んで一人暮らしをするんじゃないのかな?それでも家に戻りたい理由をもつのが京介という人物を現しているといえよう。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (9)

視点が違うからこそ見えること
評価:☆☆☆☆★
 8巻のエピソードからその後の展開について、高坂京介以外のキャラクターの視点から見た、おおむね連作短編集。所々に、キャラクターの関係を形作った過去のエピソードが織り込まれている。
 普段はセリフでしか知ることのできない京介以外のキャラクターが語り部を任めることで、素直になれない微妙な属性で括られるキャラの意外な本音が詳らかになると言う意味で面白い試み。でもおかげで、思わぬところから変なフラグが立ってきちゃうかも。
 個人的には、田村麻奈実の本音を引き出したエピソードがあると良かったのだけれど、あやせも加奈子も登場したのに彼女が登場しないと言うことは、今後の本編での重要な要素になるのだろうな。麻奈実の本音、聞くのが楽しみなような、怖いような…。

「あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使」
 高坂京介と黒猫こと五更瑠璃が付き合って別れたあの騒動を、妹の日向や珠樹のポジションから眺めたら?というB-sideのストーリー。全く姉のコミュ能力を信用していない日向は、黒猫のあれやこれやの言動を、お姉ちゃんが脳内彼氏を作ってぶっ壊れた!と解釈しちゃいます。でも最後には…。

「真夜中のガールズトーク」
 前編の続きを今度は高坂桐乃の視点で。黒猫一家と同じ旅館に泊まることにした桐乃は、同じ部屋でガールズトークを繰り広げる。一方、別部屋では、黒猫の両親と差し向かいになる京介の姿があった。

「俺の妹はこんなに可愛い」
 赤城浩平と京介の、瀬菜と桐乃の可愛さを自慢しあうだけのお話。最後に瀬菜が、結構取り返しのつかないことをしちゃう。

「カメレオンドーター」
 槇島沙織が沙織・バジーナとなるきっかけの出来事。彼女にオタクの世界を見せた姉・槇島香織と、彼女にグルグル眼鏡を与えた来栖彼方とのエピソード。来栖彼方には月見里がんまという別名もある。

「突撃 乙女ロード!」
 高坂桐乃が赤城瀬菜に乙女ロードへ連れて行かれる。ある意味で、浩平と京介のB-sideストーリー。

「過ちのダークエンジェル」
 来栖加奈子の依頼で、イベントに京介を呼ぶことになった新垣あやせ。あやせの複雑な思いがグルグルと巡ります。結局、自分にやさしいおにいさんが欲しいだけなんだろうな〜。すると桐乃と同じか。

「妹のウエディングドレス」
 これが表紙のエピソードにして、前編の続きで桐乃視点の物語。嬉しいような恥ずかしいような気持ちだけど、そこを通り越してなれちゃうと、きっと戻れなくなるよ?

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (8)

麻奈実さん、大人です!
評価:☆☆☆☆☆
 桐乃の偽彼氏騒動の翌日、高坂京介は黒猫こと五更瑠璃から告白されてしまった。その告白自体には震えるほどの歓喜を覚えるものの、すぐにはYESとは言えない京介。彼をそうさせる要因はいったい何なのだろう?
 桐乃のおねがいや、田村麻奈実の真正面から深く心にしみこむアドバイスを受けて、ついに出した答えが、黒猫とつきあうこと。黒猫が一晩かけて書いた、理想の結末にたどり着くまでの運命の記録に沿って、ふたりのおつきあいは進んでいく。

 そんなふたりの様子が甘酸っぱく微笑ましい。先輩と後輩という関係だけでなく、友人というだけでなく、もう一歩深く関係を構築していくのだ。これがなぜか、桐乃と京介のやり取りを、別の角度から描き直したやり取りのようにも見える。またアニメの設定も原作に反映されている部分もある。
 しかし本当に今巻の注目ポイントは、後半過ぎからラストにかけてだろう。黒猫が自分なりに現状を把握した上で意外なことを言い出す。その結果、いろいろと立場が入れ替わって物語が進んでいくのだが…。

 今回登場したキャラ中、最も大人なのは麻奈実さんであることに、だれも異論はないと思う。大人過ぎるけど。
 それに帯のキュゥべえ、今回キミの出る幕はない!

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない (7)

妹に彼氏がいるわけがない!
評価:☆☆☆☆☆
 海外の専属モデルにスカウトされた妹の高坂桐乃に、スカウトを断る口実として彼氏のフリをすることをお願いされた高坂京介は、桐乃とデートをすることになる。真剣に取り組む桐乃に付き合って京介も頑張るのだが、やはり結果はいつもの通り。最後に桐乃から「次は本当の彼に頼むから!」という衝撃発言を投げつけられ、動揺してしまう。
 そんなもやもやを抱えつつ、ゲーム研と黒猫個人の2サークルでコミケに参加することになり、後者は沙織・バジーナこと槇島沙織、黒猫こと五更瑠璃、桐乃と4人で協力して同人誌を作る。それぞれ得意分野のある3人に比べ、特に何もない京介が提案した原稿とは…。

 妹の彼氏騒動、カラーチェンジした黒猫さんなど、京介を取り巻く人間関係はどんどん複雑になって行きます。相変わらず完成されたやり取りの面白さがある感じがする。

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない (6)

違った一面
評価:☆☆☆☆☆
 高坂京介&赤城兄IN秋葉原で大人体験?のエピソードや、みんなで沙織の家をサプライズ訪問エピソードなど、これまでとは違った一面が見られたりします。
 今回は桐乃とのカラミが多めだったかな、やっぱり。

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない (5)

これまでの出来事が残したもの
評価:☆☆☆☆☆
 桐乃の渡米で生じた空白。届かない連絡。その隙間を見なかったことにするように、互いの関係性をひとつひとつ確かめていく。
 京介の後輩となった黒猫は、周囲に対していつもの態度で臨むため、クラスの中でも浮き気味のご様子。それを見かねた京介は、桐乃の時のように、趣味を介して学校の中に友人を見つけてあげようとする。その結果は…。
 そして、ずっと連絡がなかった桐乃から、京介に一本のメールが届く。その内容は驚くべきもので…。

 目の前からいなくなったことで、その人の価値を再認識する。彼女との関係の中で少しずつ変化してきた結果が、現状を打開するための一歩を踏み出す原動力となっている。
 エピソード一つ一つは笑えるけれど、全体としては感動させる方向のお話になっていると思う。

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ねこシス

ゆったりとした気持ちで
評価:☆☆☆★★
 人化の術を覚えたばかりの猫又が、お試し期間として7日間だけ人間として暮らしてみて、人間でいたいか考えるというお話。猫から見た人間ってどんなだろう?という感じの、非常に時間の流れがゆっくりと感じられる作品だと思う。
 この猫又の美緒の姉と妹は何年も人間として生活しているので、かなり人間として馴染んでしまっているから、美緒の猫的価値観とのギャップがコメディな展開を招いたり、思ったことをズバッという事で姉妹の心の奥底に深く切り込む問いになったりもする。
 登場人物は基本的に猫又四姉妹とほんの数人の友人たちなので、あんまり大きな事件になったりはしない。普段の生活で見せる人間の良いところや悪いところについて、猫の視点で見直してみましょうという、やわらかな問いかけになっている気がします。

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