布施文章作品の書評/レビュー

思い出したくもない人生最悪の96時間

フリーライターが巻き込まれる世界的陰謀
評価:☆☆☆★★
 2020年2月14日。音信不通になった弟、明雄の自宅を訪ねたフリーライターの清水シュンジは、射殺体となった弟との再会を果たす。重要参考人として警察の取調べを受け解放された清水のもとに、弟の婚約者を名乗る美女、榊玲子が現れる。彼女からの情報を基に、自分にかけられた疑いを晴らすため、弟の勤めていた会社を訪ねた清水は、再び殺人事件に巻き込まれてしまう。
 自分が取材中の海上保安庁による臨検中の銃の暴発事故、記事を書いたアメリカ・ロシアを中心とする弾道ミサイル廃絶条約、横浜で出会ったロシア人の美少女、そして7年前に自分がアフガンで遭遇した事件。殺人事件や戦場に巻き込まれながら結びついていく出来事は、ひとつの陰謀を描き出す。

 2時間ドラマに登場しそうな事件に自分から首を突っ込む素人探偵と、スパイが絡む陰謀ものを合わせた様な物語。インテリジェンスものというには少し荒っぽい気がする。
 全てが終わってもスッキリしないのは現実っぽいけれど、それが物語を読む人に求められているのかはよく分からない。

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ノーブラッド ツインテール襲来!

ハードボイルド・アクションを崩した感じ
評価:☆☆☆☆★
 吸血鬼が世界各地で組織を作り、人類社会と併存している世界。血が飲めず無能のために組織から放逐され、普通の高校生として生活を送っていた日下悠弥の前に、中学生程度にしか見えないエージェント、リゼット・ファン・ルクレールが現れる。彼女いわく、グールによる人間襲撃の容疑者として、彼を監視するという。
 騒がしくも穏やかな高校生活が続くかと思いきや、グール事件の生き残りである佐伯綾香と悠弥が出会うことにより、ヴァンピールの共同体を揺るがす事件へとつながっていく。

 赤いアルファロメオを駆り、ミサイルとか銃とか色んな兵器をぶっぱなしまくるアクション物。日常生活の描写に比べてアクション部分の描写はセンテンスが短めで、大概1行にまとまっておりテンポよく流れるが、反面、兵器に対する描写は少なく、アクションとしての重厚感には欠ける気がする。また、銃器をぶっぱなして暴れるだけなら人間の兵士にも出来るので、いまのところは、主役がヴァンピールであることの意味合いが薄い様にも感じる。
 キャラクターを幼くして電撃文庫に合わせた様に思われるが、この題材なら他のレーベルの方が書きやすいのではないかと思わなくもない。伏線だけ張って回収されていないし、文章は読みやすいと思うので、つづきをどのように展開してくるのかが楽しみな作品。

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