冬木冬樹作品の書評/レビュー

お台場駐屯基地の妖精 ストライク・プリンセス (2)

晴空の正体
評価:☆☆★★★
 心震動エネルギーによって異界人を倒す機巧士官(アサルトフェアリー)によってかろうじて平和が保たれている中、風早晴空の妹の風早桜花は、これまで撃ち落とすことができなかった集落を撃墜し、残る3つの集落がお台場に向かうという事態を招いていた。
 そんな時、リヒャルダ・ラウエンシュタインに声をかけられた風早晴空は、風早桜花と別れて欲しいと言われてしまう。

 シリーズ最終巻。

お台場駐屯基地の妖精 ストライク・プリンセス

かわいいで倒せる
評価:☆☆☆★★
 十年前の惨劇で生じた空の裂け目から現れた集落と異界人に蹂躙された地球人は、心震動エネルギーを用いて反撃に成功し、世界中に集落が点在しながらも、一応の平和を享受していた。
 十年前の惨劇で孤児となり記憶も失った風早晴空は、ある朝、部屋にいた下着姿の美少女に起こされる。彼女は生き別れた妹の風早桜花だった。

 心震動エネルギーを用いて異界人と戦う機巧士官(アサルトフェアリー)になっていた風早桜花に連れられ、彼女たちの拠点であるお台場駐屯基地にやってきた風早晴空は、妹と同じように戦うシャーロット・ジョーンズ、アシュレイ・モーガン、リヒャルダ・ラウエンシュタイン、新藤菖蒲に紹介される。
 やがて、世界中の集落がお台場目指して進撃する事態となるのだが…。

無気力勇者と知りたがり魔王 (3)

もう一人の魔王
評価:☆☆☆☆★
 人死にが嫌いな魔王アイアリス・エウブーレウス・タルタロスと、魔王軍の先鋒にしてお馬鹿な人狼レイラ・ドロズドフ、魔王第一の眷属にしてエロ娘のヤチホコ・ミナギと魔王城で暮らしながら、英雄フリー・コールマンとアスツラピ王国第三王女にしてクリュメノス一神教の修道女ユーフェミア・ペンドラゴン・アスツラピに振り回され、上巻のヴィヴィにいじめられる勇者の前に、白い魔王シィアリスが現れる。
 姿形はアイアリスと瓜二つながら、アイアリスが抑える感情の噴出先として現れた彼女は、合理的な判断により、人類を滅ぼそうとするものの、それを止める勇者の言葉を受け入れ、それどころかアイアリスたちの前で勇者にキスの雨を降らせてきた。

 そのことに怒った魔王は、眷属の二人を差し向け、勇者を取り戻そうとするのだが…。

 打ち切りの最終巻。ぐにょぐにょ考えるのは嫌いな方ではないので、今巻はちょっと面白かっただけに残念。伏線もばらまいたきり、ちっとも回収できていなかったな。

無気力勇者と知りたがり魔王 (2)

考え方一つ
評価:☆☆☆☆★
 士官学校時代の友人フリー・コールマンを退け、人死にが嫌いな魔王アイアリス・エウブーレウス・タルタロスと、魔王軍の先鋒にしてお馬鹿な人狼レイラ・ドロズドフ、魔王第一の眷属にしてエロ娘のヤチホコ・ミナギに振り回されるも、グィネリディアース大陸で唯一平和な暮らしを満喫出来るかと思えば、アスツラピ王国第三王女であり、勇者の幼なじみでもあるユーフェミア・ペンドラゴン・アスツラピが、クリュメノス一神教の修道女となり、古代兵器「遮る怒鎚」を背中につけて、勇者の上官のヴィヴィに連れられて、魔王城へとやってきた。
 幼い頃の勇者を知るユーフェミアは、魔王たちにとっては絶好の暇つぶし。そしてユーフェミアの方も筋肉で考えるタイプなので、意外になじんでいる。しかし、勇者らしくない勇者に対しては、昔と変わらず厳しい。

 生まれながらにして往生であるユーフェミアは、昔から自由に強く憧れていた。自分のやりたいように行動し、勇者として歴史に名を残した勇者の祖父に憧れていた。だが、大人になると言うことは、ユーフェミアに自由を捨てることを強要することでもあったのだ。
 その結果として至った、哀しい結末。さすがの無気力な勇者も、嫌々ながらなすべきことをなさざるを得ないと思ったところ、魔王は意外な言葉で、勇者の剣を軽くするのだった。

 世界中の戦争をよそ事のように、馬鹿騒ぎをして暮らす勇者と魔王も、自らの責務から逃れることは出来ないという…。

ふぉっくすている? 6本目

本当に必要な言葉
評価:☆☆☆★★
 神変会のぬらりひょんから三尾の狐・木花を預かった清原凪だったが、そこにはなにやらきな臭い思惑があるらしい。それに加えて七尾の狐・橘の元婚約者である五尾の狐・須磨が、橘を再び妻に迎えると言ってくる。その申し出を受ければ、一度は絶縁された群れに戻るチャンスでもあり、凪は橘を引き留めるとも行けとも言わない。そのことに橘は怒りすら覚える。
 一方、ぬらりひょんが殺生石を使って何かやろうとしていることに勘づいた藤紫は、火車を上手くおだてて、それを阻止しようとする。そしてただの人間であるはずの赤染律子も、妖怪たちとの戦いで重要な役割を与えられていることが明らかになっていくのだが…。

 凪の日常パートは和泉恋が、橘の日常パートは姑獲鳥や飛縁魔が支え、ファンタジーパートは急転直下でエンディングに向かっていく。シリーズ最終巻。

無気力勇者と知りたがり魔王

戯れる魔王様
評価:☆☆☆☆★
 グィネリディアース大陸にあるアスツラピ王国は常勝不敗の軍隊を持つ。その王都ケラウノスには勇者の孫が住んでいる。五十年前、魔王がもたらした混乱から世界を救った勇者の孫だ。ただし無職。士官学校に通っていたこともあったが、色々あって辞めてしまい、今では周囲から穀潰しと罵られる身分だ。
 今日も今日とて母親に家を追い出され、やってきたのはかつて魔王が住んでいた城。誰も近寄ることのないそこは、格好の時間つぶしの場だ。ところがそこに、ヴィヴィという女がやってきて、彼に魔王の面倒を見ろという。現代が戦乱の世の中であると魔王が世界を滅ぼしに出かけるので、現代は平和だと言いくるめろというのだ。

 魔王城から出ようと思っても出られず、自然、魔王である幼女のアイアリス・エウブーレウス・タルタロスの面倒を見ることになるのだが、魔王の眷属である少女ヤチホコ・ミナギや、魔王軍の先鋒の少女レイラ・ドロズドなどもやってきて、彼女たちと懇ろになってしまうのだった。
 このままごまかして日々を過ごせるかと思ったのも束の間、かつての士官学校の友人で今や英雄となったフリー・コールマンがやってきた頃から、破滅に向かって時が動き出すことになる。

 魔王様一家の日常というか、我が儘なお嬢様をなだめる使用人のことを、この世界では勇者と言うらしい。そんな勇者も悪くないと思うのが主人公だ。魔王城は彼女たちを守る、一種のゆりかご。そこから出れば辛い現実が待っているから、意地でも出ないためにがんばる姿が描かれている。
 しかし彼らが魔王城で過ごす間にも、世界は別の時間の流れをしている。その二つが結びつくとき、訪れるのは戦乱か、はたまた平和か。それが分かるまでは、お城の中で戯れるのも良いかもしれない。

かんなぎ家へようこそ! (4)

めーちゃんのいない家
評価:☆☆☆☆★
 かんなぎ家の長女である百目鬼のめーちゃんが消滅してしまう。彼女に依存しているかんなぎ家唯一の人間であるたまちゃんこと珠樹がこのままではダメになってしまう。めーちゃんを助ける方法を必死に探す巫遍たちだったが、それが見つかった途端、めーちゃんは死期を悟った猫のように、みんなの前から姿を消してしまう。
 めーちゃんのいなくなったかんなぎ家は、やはりいつもとどこかが違う。元通りにするためには、どこに行ったか分からないめーちゃんに戻ってきてもらうしかない。そのためには、たまちゃんはめーちゃんがいないと幸せになれないことを証明するしかない。何を以ってその証明とするのか?相変わらずいい加減な遍が、適当に誑かす。

ふぉっくすている? 5本目

お姉さん橘
評価:☆☆☆★★
 橘と凪の前に、鬼九条が属していた組織・神変会のぬらりひょんが現れ、三尾の狐・木花を預かって欲しいと頼まれる。彼女は陰陽師に狙われているらしい。お姉さん風を吹かす橘は、喜んで木花を預かることになるのだが…。
 一方、橘と結婚するはずだった須磨は、九尾の狐の許に行って価値の上がった橘を取り戻そうと、二人の様子をうかがっていた。

かんなぎ家へようこそ! (3)

もうひとりの座敷童
評価:☆☆☆★★
 百目鬼のめーちゃんの手配でやって来たのは、座敷童のさちだ。さちは巫遍を引き取りに来たと言う。もともと、巫家に遍を貸し出していたのは期間限定で、本当はさちが引き取る予定だったらしい。残る期限まであと一ヶ月。
 夏休みも後半戦に入り、上條しおりとお祭に行ったり、帯刀帯や金城愛、高橋唯たちと部活を立ち上げたり。普通の生活と宿題に追われているうちに、期限がやってくる。そして、パンシーの白が予言した、死んでしまう家族も明らかになる。

 やまなしいみなしおちなし、と思ったのだけれど、最後に少しだけ落ちがあったような気がする。それにさちの設定は、次への振りなのかな?

ふぉっくすている? 4本目

ウェイトレス橘
評価:☆☆☆☆★
 赤染の名前、律子っていうんだ。それはともかく、ナギにプレゼントを送るためにバイトをすることになった橘。和泉恋のあっせんで、喫茶店のウェイトレスをするのだが、凪以外に仕えることを良しとしない橘に、果たして接客業などできるのか?
 そして、凪の前に現れる、記憶を失った鬼九条。なぜ彼は記憶を失ってしまったのか?

 みんなで巫女服着てバイトしたり、名前が出て来たことから分かるように赤染がストーリーに関わってきたり、和泉恋が橘を転がしたり、いろいろやってます。
 一本減ったおかげで、こっちに注力できるようになったんじゃないかな、と邪推できるくらい、前巻までに比べたら書き込みが増えている気がします。

魔法少女☆仮免許 (3)

なぜその道を選ぶのか?
評価:☆☆☆☆★
 魔法使い・剣の王との戦いで傷つき魔力を枯渇させた水粂水萌を回復させるため、田辺川涙とホムンクルス・赤が魔力を分け与えているはずの頃、その場から退去させられた貴樹和貴は、生徒会長の近藤コニー操とデートをしていた。
 しかし、ノープランで街中を歩きまわり、DIYコーナーで遊ぶ彼らを後ろから見つめる影が…。そう、もちろん、田辺川涙、水粂水萌、赤の3人だ。自分の使い魔が他の女に、(フェンリルだけに)尻尾を振っているのを察知し、尾行していたのだ。

 その後、貴樹和貴が痛い目を見たのは当然のこととして、その場にはもうひとり、魔法使いが現れていた。水粂出雲、水粂家の当主にして、水萌の妹である魔法使いは、フェンリルである貴樹和貴に、そして一緒にいた近藤コニー操に何かを見出す。こうして魔法使いとの戦いが始まる!

 大分なじんで来た田辺川涙と水粂水萌に、水萌が倒すべき才能の象徴である妹と、魔法使いとはかかわりがないのに和貴に好意を持つ存在が絡んで来て、魔法使いの世界と普通の世界、どちらつかずの対応をする和貴に、ある種の決断を迫る状況が作られる。
 そういえば今回は、「キラッ☆」がなかったな。

 そんな感じでこのシリーズも終了とのこと。

ふぉっくすている? 3本目

クリスマスですから、衣装はアレですよね
評価:☆☆☆★★
 清原凪が九尾の狐だった頃、共に炎熱地獄を統べていた火車が人間の世界へやってくる。幼女狐の橘と暮らしているのを見た火車は、九尾を幼女趣味から救い出そうとして、同居することにする。

 時はクリスマス。委員長の赤染を中心として、クラスイベントとしてクリスマス会の準備に奔走する凪たちを見て、そして九尾の人間としての知り合いたちに話を聞いていくうちに、火車はひとつの不安を抱えるようになる。そしてそれは、九条彰の陰謀と相まって、新たな事態を引き起こしていくのだった。

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ふぉっくすている? 2本目

コスプレ橘さん
評価:☆☆☆★★
 九尾の狐ながら人間として生きることを決めた高校生、清原凪は、狐の嫁入りを邪魔してしまったことで破談になった七尾の狐、橘と同居することになった。何とか自分を娶らせようと、入れ知恵の通りに様々なキャラを演じる純真な橘だったが、目的はなかなか達せられない。
 そんな妖怪たちが紛れて通う海鳴場高校では、球技大会が開催される。セパタクローができないと嘆く天狗、藤紫や、鉄血委員長で人間の赤染などと共に、バスケットボールに出場することになった凪の前に、彼が元々住んでいた炎熱地獄から、鵺という監視者が訪れる。

 特に何事もなかった様に球技大会に向けた練習をこなしていく凪たちだが、厄介な九尾の狐を地獄に戻そうと、地獄の門を管轄する鬼の組織が、高校を管轄する組織に圧力をかけてくる。生徒会役員の和泉恋は、凪に恩返しをしたいこともあり、何とかそれを切り抜けようとするのだが…。

 姑獲鳥や飛縁魔の影響を受けてツンデレ・ヤンデレ・チアリーダーと、あらゆるキャラ立てをして凪に迫る橘が今巻の見どころ。
 次巻では、凪のご主人様が登場しそうだ。

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魔法少女☆仮免許 (2)

2人に子どもが出来ました
評価:☆☆☆☆★
 国家資格である魔法使いの仮免許を持つクラスメイト田辺川涙と水粂水萌の両方の使い魔になってしまった貴樹和貴は、彼女たちの修業に協力したり、彼女たちの師匠であるベリアル先生に付き合わされたり、生徒会長の近藤・コニー・操の手伝いをしたりと、ちっとも休む暇がない。
 そんな日々にも何となく慣れてしまった頃、水粂水萌に和貴を奪われた気分の田辺川涙が、自分と涙の娘だという少女を連れて来る。もちろん本当の娘というわけではなく、彼女の正体はホムンクルス。涙の魔力を制御するために生み出された存在だ。そして、他の魔法使いにとっても魅力的な存在でもある。

 ヨルムンガンドとホムンクルス、そしてついでにフェンリルを奪うため、魔法使いの弟子を名乗る小金井小柄が彼女たちを襲う。そしてその過程で明らかになる、使い魔であることの危険性は、田辺川涙にひとつの決断をさせることとなる。

 1巻がリセットの回だとすると、2巻はリスタートの回である気がする。1巻で何となく決まった3人の関係が、2巻ではそれぞれがそれぞれの立場と目的を明確にして再定義される。
 それなのに、なぜか貴樹和貴に新たに関わって来る生徒会長の近藤・コニー・操の存在が、3巻でどんな波乱を巻き起こすのか?これは魔法とは関係ないのか?そんなことが気になる。

 1巻の流れを引き継いで、キャラ先行の展開になっているけれど、インパクトは少し低下しているかもしれない。

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かんなぎ家へようこそ! (2)

不幸調ハーレム系コメディ
評価:☆☆☆☆★
 座敷わらしだけど高校に通う巫遍は、みんなを幸せにしようとがんばっている。みんなというのは、同じ家で暮らす百目鬼や犬神だけでなく、出会った不幸そうな人全てだ。同じ高校の先輩である帯刀帯や金城愛、高橋唯などもその中に含まれる。
 ちょっとだけ幸せになった先輩三人組と、家族四人、そしてクラスメイトのメガネ委員長しおりや、新しく登場した不思議少女の白と一緒に、いわくつきプライベートビーチへ遊びに来た巫遍は、みんなの水着姿に浮かれて、調子の良いことばかり言っているのだが、メンバーについて冷や水を浴びせられるような事実を、姉のめーちゃんから知らされる。

 あまねと愛がリズムよくボケ倒して、帯がテンポよく突っ込むというのをベースにして進むお話。ドラマCDになるらしいが、それもむべなるかな。
 ただ、明るくテンポ良く進むコメディの割には、そのベースにあるお話は結構重たい。なにせ、人の不幸を幸せにするからには、不幸について面と向かい合わねばならないのだから。

 ノリには西尾維新ぽいテイストがあるかもしれない。

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かんなぎ家へようこそ!

少し暗めのボケ倒しコメディ
評価:☆☆☆★★
 巫遍は高校に通う座敷童だ。200年間とある村に封じられ、そこから出された彼は、幸せにするため不幸な人間を探し、かんなぎ家へと連れて行く。
 この家に暮らすのは、長女・百目鬼800歳、次女・犬神のハナ72歳、三女・人間の珠樹11歳、そして長男の遍だ。高校で孤独系不幸そうな帯脇帯をみつけたあまねは、半ば無理矢理に、しかしある部分では自発性を尊重して、かんなぎ家に招き入れる。初めは他人と関わるのに恐怖する帯だったが、あまねやハナたちと関わることで他人を受け入れるようになる。だが、こんな作られた環境で幸福になることが彼女の真の幸福と言って良いわけもなく…。

 基本的には座敷童のあまねが徹底的にボケて、それに帯ががっちり突っ込むというコメディ。ボケ方がかなりしつこいので物語の進度が遅く、一度違和感を感じるとイラツキすら感じることもあるかも知れない。
 家族のほとんどが妖怪という設定も今回は十分に生かされているとはいえないし、終盤の帯のクラスメイト高橋唯に対する扱い方などから、作者は暗め重めの展開の方が性に合っている印象を受けるので、コメディよりも妖怪設定を押した方が深い仕上がりになった気がする。
 でも、面白くなりそうな要素はあると思うので、何とか2巻で盛り返して欲しい。

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魔法少女☆仮免許

方向性の異なる自暴自棄ふたり
評価:☆☆☆☆★
 貴樹和貴は突然、隣人の田辺川涙から秘密を明かされる。それは魔法少女の国家資格があり、彼女はその仮免許であるということ。そして、彼にパートナーとなって欲しいということ。和貴は自分のルールに従ってその願いを受け入れ、夜の間だけ、彼の魂が本来求めうる形である、白銀の仔狼として生活することになる。
 そんな不思議な生活の二日目、同じくクラスメイトである水粂水萌に呼び出された和貴は、彼女のパートナーになることを申しつけられる。彼女も魔法少女仮免許らしい。既に涙のパートナーとなった和貴は当然のごとく断るのだが、水萌は彼の意思を無視して、自分のパートナーになるのが当然と言い切るのだった。

 千年に一人の魔力量を持ちながら制御訓練が嫌いという田辺川涙と、魔法使いのエリート一族にありながら魔力が少ないために疎外されて育った努力の天才、水粂水萌。才能があるものに復讐し、努力が認められる仕組みを作るという水萌は、そのための道具として必要な和貴をどうしても手に入れようとする。
 涙という人間の行動原理は最後まではっきりとはしないのだが、とにかく和貴に興味を持っていて、パートナーにして置きたいのは確か。和貴自身の意志と、自分が従うべきルールに従って初志を貫徹しようとするため、魔法少女仮免許の二人は対立してしまう。
 そんな対立を助長するように街に起きる不思議な現象。それを解決しようと双方が動く中で、和貴の行動によって、涙と水萌、二人の考え方が少しずつ変化していく。

 対立する二人を仲裁するでもなく傍観する指導教官、ベリエル先生や、そもそも魔法を取り囲む世界観も謎として残る。今回は魔法少女二人以外にほとんど登場の場がなかったので、次はサブキャラも含めて世界を広げて欲しい。
 あらゆることに比喩表現をつけて話したり、全く人の話を聞かずに取りあえず暴力をふるうという様なキャラクター付けには、若干のわざとらしさとくどさを感じるかもしれない。

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ふぉっくすている?

他者から見る自分の姿は
評価:☆☆☆★★
 九尾の狐である清原凪が人間として通う海鳴場高校を、狐の嫁入りが通った。たまたま夜の学校にいた凪はそれに入り込んでしまい、結果として嫁入りの妨害をしてしまう。翌日、嫁入りを邪魔された七尾の子狐、橘が、凪のところに怒鳴り込んでくる。破談になり、一族からも追放された責任を取って、凪に娶れと橘は言う。
 普通の人間として暮らしたい凪はそれを一度は拒絶するのだが、恥を雪ぐために死を選ぶという橘を見て、とりあえず引き取ることになる。だが、凪が通っている高校は実は妖怪を保護する機関が運営していて、そこに所属する顔見知りの先輩、和泉恋と橘がトラブルになったり、新たに転校して来る天狗、藤紫との対立が起こったりして、人間?関係はギクシャク。しかも、人間としての凪のクラスメイトの委員長、赤染は、いつものように高飛車に凪を引きずり回すし…。
 妖怪と人間の共存というバックボーンのもとに繰り広げられるラブコメです。

 最強に近い力を持ちながらも、あえて人間としての生き方を選択している凪に対し、彼の生き方を尊重する人間や、何も知らずに仲良くする人間、妖怪としての生き方を取り戻させようとする妖怪など、それぞれの立場に基づいて干渉がなされる。
 そんな環境にあって、毎日を自分の望む様に生き、人間として人間と関わりながら、それでも人間として他者から見てもらえているのかという不安はなくならない。そんなときにやって来る過去のしがらみ。全てを諦めそうになる凪に対し、彼の周囲はどう動くのか?

 そういう存在に対する悩みも描きながら、ほとんどの場面ではラブコメが展開されていて、どちらの雰囲気がベースにあるのか少し迷ってしまう。上手いと思う部分もいっぱいあるのだが、個人的には内向きな物語の印象を受けていて、きちんと真っ直ぐ進んでいけるのかが少し不安です。

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