藤原征矢作品の書評/レビュー

旅する少女と灼熱の国 Elenore Baker

正統メイド、戦場を往く
評価:☆☆☆☆★
 内戦続く熱帯の王国ガザッソニカの農村を、キャスターバッグを引いて歩く少女がひとり。ビクトリア期の正統なメイド服に身を包んだ彼女の名は、エリノア・ベイカー。旧宗主国ナフレスの貴族バートン家の娘マーガレットを主人と仰ぎ、この国で離れ離れとなった彼女を探すために旅をするメイドだ。
 反政府軍の支配する村にやって来たエリノアは、空腹で倒れこむ寸前に、うらぶれた食堂の女主人レー・ティ・ディウに助けられる。彼女は、政府軍に徴兵された夫の帰りを待ちながら、ただひとり、店を守って来たのだ。しかしその店に、反政府軍の将校たちが不吉と共にやってくる。

 編集氏のビクトリア期の正統メイドに対する強い思い入れを受けて書かれた作品らしい。このエリノアは、どんな荒廃した状況でもその挙措は美しく礼儀に適っており、主人を守るためならば銃も取るし敵を放り投げる。そして美味しい料理も作れば、カード捌きもディーラー顔負けというハイスペックぶりだ。
 そんなハイスペックなメイドが、戦乱の国をお嬢様を探し歩きながら、その過程で出会う人々に、戦乱の中のひとときの安らぎと笑顔を与えていく。

 後半からは彼女の相棒として凄腕傭兵のウィンゲートが登場し、生硬気味な彼女の振る舞いに、コメディっぽさを与えている。

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