星野彼方作品の書評/レビュー

魔天世界(テンペスタス)の聖銃使い

有用性が存在意義
評価:☆☆☆☆☆
 16年前から世界に突如発生するようになった魔は、想像もつかない不可思議な現象を巻き起こす。その被害から人々を守るために魔象庁が設置され、魔象予報士が魔の発生を予測し、発生した魔は対魔専門特殊部隊エーレが対処している。
 高校生の河渡刻人は、魔象庁を目指していたものの、魔に対する抵抗力に欠けていたため、その夢を諦めざるを得なかった。憧れの高校生魔象予報士である境結里の魔象予報を聞きつつ、登校準備をしていた河渡刻人の前に、妹を名乗る河渡芽彩美が現れる。

 姉代わりの柊智代も知らない妹の存在に戸惑いながら、彼女との生活を受け入れ始めた刻人だったが、ある日、彼の通う学校を魔が襲う。そして彼と合流した芽彩美は、突如、魔具である銃に変身した。
 かくして、芽彩美の存在のおかげで対魔専門特殊部隊エーレの候補生となった刻人は、加治間龍已知の指導を受け、御影衛治に絡まれることになる。

 有用性の証明とか、銃に変身する生物とか、「マルドゥック・スクランブル」へのオマージュなのかな?

クロス・リンク〜残響少女

異星人との対話
評価:☆☆☆☆☆
 高校生ネゴシエーター高須賀洋介がエイリアンと人質解放交渉をするという、色々な意味であり得ない設定なので、ちょっと眉をひそめて読み始めたのだが、徐々に面白くなってきた。交渉術を中心とするサスペンス展開と思って読むよりも、自分自身の後悔とそこからの解放というような内的対話をベースとした、過去との決別を未来への物語として読んだ方がふさわしい気がする。

 三章構成になっていて、一章は主人公登場と不可思議状況への自衛隊突入のアクション、二章では自身の精神世界において過去に見殺しにしてしまった少女詩穂の残響と対話をし、三章では自身の過去を飲み下しながら事件の解決に至る。
 一章は、作者曰くB級映画チックで、ボクの好みとは少し違うのだけれど、二章以降は、「銀河鉄道の夜」のニュアンスがある部分があったり、延々と対話を繰り返す場面があったり、個人的には興味深い展開となる。だから、交渉術の様なテクニカルな展開やアクションを期待すると肩透かしを食らうと思う。どちらかというと、対話というコミュニケーション自体を重視して、そこをひたすら追求した内容だと言える。

 作者の中にある考えを熟成させて、B級映画ストーリーに織り込んだ作品と思えるので、その考え自体を全く許容できないならば、作品自体に対して拒絶反応を起こすかも知れない。でもボクは面白く読めました。
 ただ、どういう内容にすれば続編となるかは、かなり難しい問題かもしれない。交渉部分を中心にしたら、本作とあまりに異なる印象を与えるものになってしまうかもしれないし。

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