丸山英人作品の書評/レビュー

七人ミサキも恋をする (2)

死者の憂鬱
評価:☆☆☆☆★
 憑りついた人を殺して自分たちの仲間にし、誰かを殺して初めて成仏できるという悪霊である七人ミサキを構成する美少女の郁、初希、紅、路花、ほのか、瞳子、仁衣菜に憑りつかれた臼谷伊吹だったが、郁が彼の妻を、初希が彼の姉を自称するに至り、殺されないばかりか、悪霊にお世話される同居生活を送るようになっていた。
 そんな生活の中、自称妻と自称姉のどちらが彼の世話をするかで紛争が勃発。蓬莱山クララに相談するも、リア充と罵られてしまう。

 同居人の増加による経費増大問題を解決するため、コンビニでバイトすることにした臼谷伊吹だったが、バイトの先輩で年下の美少女、赤坂晶が、生前のほのかの友人であることを知ってしまう。自分が死んでいることを自覚していないほのかと赤坂晶を会わせないようにするのだが…。

七人ミサキも恋をする

奇妙な均衡状態
評価:☆☆☆☆★
 臼谷伊吹がある朝目を覚ますと、部屋に美少女達がいた。郁、初希、紅、路花、ほのか、瞳子、仁衣菜という美少女達は、七人ミサキという都市伝説で、憑りついた人間を呪い殺すという。それによって、一番先頭の人間が成仏し、殺された人間が列の一番後ろに加わるのだ。
 ところが、先頭の少女の郁は臼谷伊吹に一目ぼれしたといい、殺さないという。だが、二番目の初希は解放されてやりたいことがあるから、さっさと彼を殺すように主張する。

 奇妙な均衡状態のためにすぐに死なないで済んでいる臼谷伊吹は、クラスメイトの霊能者の蓬莱山クララに助けを求めようとするのだった。

疑心恋心

人の身に余る不幸
評価:☆☆☆☆★
 しゃっくりが止まらず苦しんでいた八十島樹は、元クラスメイトの水留優衣の紹介で、呪いの地学準備室を訪れた。そこに居た白髪の少女の釣見朱鷺子に豆腐の材料を聞かれた途端、それまで続いていたしゃっくりは嘘のように止まってしまった。彼女の周囲では俗信が本当になるという。
 そんな彼女を詐欺師と断じた八十島樹は、彼女の被害者を増やさないため、彼女につきまとって監視することを宣言する。ストーカーの変態呼ばわりされてまで地学準備室に居座る八十島樹だったが、釣見朱鷺子は相談に訪れる少女たちの悩みをあっさりと解決し、そのトリックに気づかせることもない。そしてやがて、八十島樹は釣見朱鷺子の能力が本物と信じざるを得なくなるのだった。

 幼馴染の藤川千佳からは良い顔をされないながら、なにやら地学準備室に行くのが楽しくなってきた八十島樹だったが、彼は初めて釣見朱鷺子につかれる。彼女が喫茶店で呑沢圭祐という三十代の男に会っていたことを隠されたのだ。
 そのことをきっかけに、八十島樹はなぜ釣見朱鷺子が他者を避けるような言動を取るのか、彼女の過去に何があったのかを知っていくことになる。

 もう少し俗信のバリエーションがあっても良かった気がするが、目立たないことを重視すると、あの程度に止めざるを得なかったと言うことかも知れない。ゆえに結構派手な能力の割には、意外にこぢんまりとしてしまった気がしなくもない。
 単なるラブコメにせずに続巻を作るのも結構ハードルが高そうな気がする。変な異能バトルに走っちゃったら台無しだしな。

隙間女<幅広>

妖怪なのにほんわかコメディ
評価:☆☆☆☆★
 妖怪や幽霊が主人公なので怪談と呼んでも良いのかも知れないが、ちっとも怖くはない。やたらと可愛らしい妖怪や、ポジティブな幽霊が登場する短編集。

 表題作の「隙間女(幅広)」は、単に狭いところ好きとしか思えない程度の隙間に潜む妖怪少女と、ぽっちゃり好きの青年のお話。この続編が「隙間女(飽和)」。
 「消えない傷と恋占い」は、鏡に映った少女に包丁で切りつけられた少年と、意図せずそれを行った少女の偶然の出会いのお話。
 「デコは口ほどにものを言う」は、自分の意見を主張できない引っ込み思案な少女にできた口の人面疽と青年のほんわか交流を描いた作品。
 「花摘みの園で相席を」は、男なのにトイレの花子さんにさせられた幽霊と、そのトイレで弁当を食べる少女のお話。

 どれもほんわかコメディ的なお話で、さわやかな感じなんだけれど、もう少しピリッとした要素があっても良いかもしれないと感じた。せっかく怪談要素を混ぜているのだし。

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