間宮夏生作品の書評/レビュー

うさみみ少女はオレの嫁!?

評価:☆☆☆★★


聖剣のソードラビリンス

ダンジョン踏破の始まり
評価:☆☆☆★★
 剣都シグルドにある古代遺物「聖剣グラム」のダンジョンに挑んだ選抜パーティの一員でありながら、裏切り者として蔑まれる父親の無念を晴らしたいと考えている銀の鍛冶師アレク・ヴォルフガングは、自宅の地下で封印されていたダンジョンマスターを名乗る剣の女王セレスティアと出会う。
 ダンジョンで父親が生きている話を聞き、その探索のためにダンジョンに挑むことにしたアレクは、魔物に殺されそうになっていた聖騎士レヴィ・レンブラントを助け、仲間とするのだった。

推定未来 ―白きサイネリアの福音―

いつもの毒が薄いよ
評価:☆☆☆☆★
 所轄の刑事課で勤務する君島透巡査部長(28)は、偶然、ぶつかったことがきっかけで、警視庁捜査一課犯罪未然防止対策係―通称「ミゼン」の係長である如月美姫警部(25)にスカウトされた。憧れの捜査一課ではあるが、庁内で眉唾扱いされ、お天気お姉さんなどと揶揄される係長が率いる部署である。この部署の役割は、事件の発生確率を予報し、事件を未然に防ぐことなのだ。
 管理官の加賀谷恭子の下で、元システム屋の片桐と科警研からの出向である伊波など変わり種が多い部署にあって、現場からの叩き上げとして係長と組んで実証捜査に赴く君島は、自身の過去と向き合い、さらには如月係長の過去と向き合っていくことになる。

 いつもの毒が薄いよ。

ペルソナ×探偵NAOTO

遠慮が過ぎるのを美徳とは呼べそうもない
評価:☆☆☆☆★
 友人にしてアイドルの久慈川りせの策略により、稲葉市から八意市に引っ張り出された探偵王子こと白鐘直斗は、水着を着せられ、グラビア撮影に参加させられていた。そんな撮影場所に、かつて知り合った尊敬する警部補の蒼井瞳子が現れ、二人の行方不明者が出ている学校への潜入捜査を依頼される。
 そんな彼女に引き合わされたのが、ツクヨミというペルソナを持つロボットの黒神創世だ。実験中の彼の暴走により死にかけた白鐘直斗は、新たなペルソナであるアマツミカボシを発現させる。それは、他のペルソナの能力をチューンするペルソナだった。

 黒神創世やその開発者である黄楊鉄馬に自身が女であることを言いそびれたまま、緑川みゆきや紺野司郎が失踪した高校へと潜入した白鐘直斗は、半年前に自殺した緋丘薫と、彼女の兄である緋丘響平が事件に関わっている可能性を知る。
 マヨナカサイトと呼ばれる糾弾サイトに誹謗中傷を投稿されて自殺した緋丘薫の、誰も信じることが出来なくなった最後の会話をツクヨミの能力で知り、自身を心配してくれる友人の巽完二らの存在に感謝しつつ、ペルソナを全面的に活用して、白鐘直斗は事件の背景を知っていく。

 死者の会話を盗み見する様なペルソナを使って、事件を後追いしていく存在を探偵と呼んでも良いのは、横溝正史がいたせいだろう。遡ればその源流は海外にたどり着くのだろうが。金田一耕助よりも白鐘直斗が優れているのは、全滅する前に犯人にたどり着けた所くらいではないだろうか。
 ミステリーとして読むならば見どころはないが、様々な人との出会いにより少女が成長していく物語としてならば許容できる。ただ惜しむらくは、作者の特色が発揮される場面があまりなかったことだろうか。この内容ならば、もっと逸脱しても良かったと思うが。

変愛サイケデリック (2)

正義という名の暴虐
評価:☆☆☆☆☆
 姉・夕葵にまつわる過去の出来事にケリが着き、生きる意欲を取り戻した神宇知悠仁の最優先事項は、恩人であるストレンジサイケデリコこと彩家亭理子を守る事だ。悠仁が生きる気力を取り戻してくれたことは素直に嬉しいが、彼を理子にとられてしまったようで、川合優衣や江入伊庵は何かスッキリしない部分もある。
 今回、物語の中心となるのは、理子の友人である円馬佐那。幼少より男として育てられ、理子と出会ってからは彼女を守る目的もあって、高校でも男の格好をして過ごしていたが、実は女の子。その秘密が、理子を目の敵にする生徒会会計の原犀人に知られてしまったのだ。

 その彼が提案するのが、千光大会議。全校生徒で議論して問題に白黒つけようというイベントだ。もっともそんな場で性別を偽っていたことに関して一人の生徒をつるし上げ、退学まで要求するというのはかなりやりすぎだとは思うのだが、常識と正義を標榜する原犀人にとっては、全く問題のないことらしい。
 凶暴を装っているけれども実は繊細な円馬佐那は自ら身を引こうとするのだが、本当は学校を辞めたくはない。理子はもちろんのこと、一年生3人や真利凛花、顧問の塚井麻帆も含めた変恋部(変動変質する現代恋愛における男女の思考及び行動を考察することにより人間の本質そして人間の未来を研究する部)のメンバーが協力して戦いに臨むことになる。

 テーマから考えて生徒会の主張はかなり無理めなのだが、それをあらゆる寝技裏技を使って通そうとする姿は、徹頭徹尾悪役というのが面白い。普通は生徒会はヒーローポジションなんだけどね。
 会議の結論は、「可愛いは正義!」に集約される気がする。何が可愛いのかは、見てのお楽しみで。

 前巻ほどのインパクトはないかもしれないが、邪道の学園ものとして十分面白いと思う。また、「月光」の月森葉子と野々宮も登場する。

変愛サイケデリック

変愛に惑う高校生たち
評価:☆☆☆☆☆
 ストレンジサイケデリコとの異名を持つ彩家亭理子は、普通とは違う人間に興味を持つ。そんな彼女が遅刻した日に、橋の欄干の上を歩いている一年生、神宇知悠仁に出会う。
 当然のごとく彼に声をかけた彼女が彼に理由を尋ねたところ、帰ってきた返事は「春は死にたい季節だから」という言葉。

 俄然興味を持って調べた彩家亭理子は、彼のクラスメイトである川合優衣や江入伊庵から聞き込みをして、彼がこれまでに5回飛び降りをし、全て奇跡的に助かっているという事実を知る。
 そしてより詳しい事実を収集するため、友人の円馬佐那が止めるのも聞かず、悠仁に突撃取材を敢行するのだが、あっさりと返り討ちにあい、殺されそうになってしまうのだった。

 恋愛の二文字がタイトルに入っているが、いわゆる普通の恋愛物語ではない。ここでいう愛とは、人と人の関係の形につけられた名前の様なものだろう。
 それもやはり愛ではあるのだが、普通にイメージする愛よりも、違う要素が含まれている印象を受ける。

 人間に深い興味を持ち人の迷惑を顧みずその好奇心を満たそうとする彩家亭理子と、過去の姉にまつわる事件のいきさつから他者への興味を失くし自分の生すらも軽んじる神宇知悠仁。
 この物語は、そんな二人が出会い、そして彼が彼女に変えられ元の地球人に戻っていく様子を、その周囲の人々を交えて描いたものだと言えよう。

 サブキャラの立場から主演の二人の姿を描いて彼らを浮き立たせつつ、最終的には彼ら自身で物語を収束させていく流れは、前作よりも若干おとなしめかもしれないけれど、巧妙だと思う。

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月光

普通の世界に加えるスパイス
評価:☆☆☆☆☆
 作品全体としての完成度が高いかというと必ずしもそういう訳ではなくて、慣用句の使い方や言い回しも含めて、今後の成長の余地はあると思う。ただし、サブキャラを通じた緩急の使い分けと、その結果として主人公たちの間に生まれる空気感を読者に感じさせる文章は、上手いと思った。

 高校生の野々宮は人生に物足りなさを感じている。普通の良さは認めながらも、どこかで自分に刺激を与えてくれる存在を求めている。そんな彼の前に現れた1枚の紙。それには、殺しのレシピというタイトルと、プロバビリティの犯罪計画が書かれていた。
 殺しのレシピを彼の前に落としたのは、完璧な優等生の月森葉子。彼女の普段の行動からは窺い知れない昏い衝動に興味を覚えた野々宮は、彼女に探りを入れるが上手くかわされてしまい、そして、そのこと自体に愉しさを感じてしまう。そんなとき、殺しのレシピにあるのと同じ状況で、月森の父親が事故死するのだった。
 その後、月森に告白されるものの、殺しのレシピの件があるため、野々宮は素直に受けることはできない。だが、周囲からの冷やかしややっかみにイラつきを感じながらも、誰にも靡かない月森からの行為を受けることに愉悦を感じる自分がいることも自覚してしまう。そしてさらに新たな事件が起きる。

 才色兼備のクラスメイトから言い寄られるという状況は、一般的に言うととてもうらやましい状況なのだが、そこにたった一つ、殺しのレシピという要素を加えることで、状況は全く異質のものとなる。そこから野々宮と月森の生まれる感情も、恋愛感情と名づけて良いものかどうか分からない。そんな風に、普通の状況に異物をポンと加えて、不思議な世界を作り上げている。
 しかし逆に、何人かのサブキャラが登場しながらも、彼らはあくまで二人の間の空気感を作り上げるためだけの存在に過ぎないのではないか、という疑問もある。これは作品を作り上げる上で必要な措置なのかも知れないが、人間に対する捉え方としては寂しいとも感じた。

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