槙岡きあん作品の書評/レビュー

オーディナリー・ワールド (3)

断崖から復帰、そしてまた断崖へ
評価:☆☆☆☆★
 栃木から東京へとやってきた、宇都宮餃子みんみんを何よりも愛する高校生の蕪木大空夢は、天涯孤独の少女・うらみこと猫屋敷有楽美と港区のタワーマンションで同居することになった。そして東京下町生まれの本川寺源司と友人になり、群馬から上京した、焼きまんじゅうを愛するお嬢様の森泉いばらと彼氏彼女の関係になった。
 しかし、いばらとその父親である森泉門土が暴走し、東京湾の豪華客船の船上で、いばらかうらみ、どちらを選ぶかの選択を突きつけられてしまう。いばらを選べばうらみに呪われ、うらみを選べばいばらの父にドラム缶詰めにされるという究極の選択!

 そんな修羅場で終わった2巻であり、もはやバッドエンドは確定かと思っていたのだが、まだ逃げ道があった。いばらの父がまずは群馬の良いところを栃木に見せつけるといい、彼らを群馬に拉致してしまったのだ。そうして次々と紹介される、群馬の良いところ!焼きまんじゅう、こんにゃく、きのこ、桑茶に水沢うどん、果てにデートスポットとして紹介されるのは、なんと秘宝館!
 そんなグンマーに今更ながら嫌気がさしたいばらの母マリー=カトリーヌ=シャルロット森泉は、いばらとトチギーの婚約を阻止するため、うらみの味方をし出す。そして行き着く先は…。

 とにかく群馬の名物を紹介しまくり、その各所で、ガチの修羅場ラブコメが繰り広げられる。大空夢はギリギリまで追い詰められるのだが、なんやかんやで良いところを見せ、そしてその結果、もっと追い込まれる展開なのはお約束だろう。本当に次巻はどうするんだ?


オーディナリー・ワールド (2)

いつまでも迷ってはいられない
評価:☆☆☆☆☆
 栃木から上京した蕪木大空夢は、群馬帝国のお嬢さま・森泉いばらと彼氏彼女の関係になった。だが、大空夢と同居するクラスメイト・猫屋敷有楽美は、彼女自身が初めて手に入れた居場所を守る為にも、それまでの消極性を捨てて、積極的に自分を主張するようになった。大空夢はそれも捨てられない。
 だけど現実にはハーレム展開なんて有り得ない。二人の女が対峙すればもはや雌雄を決するのみ。そんな感じで、タワーマンションでも、学校でも大空夢を巡る争いを繰り広げるのだが、大空夢のヤンキー疑惑は確定となり、ついには風紀委員長・冷泉院冴子が乗り込んでくることとなった。

 しかし、冷泉院冴子の本当の狙いは、猫屋敷うらみを自分の妹にすること。散歩部の活動にも割り込んできて、遡れば五摂家に行き着くという冷泉院家の歴史と知識を利用して、散歩部を自分のものにしてしまう。
 おさまらないのはお嬢さまのプライドが高い森泉いばら。東京の名家のお嬢さまに対する群馬コンプレックスを刺激され、何かにつけて張り合う。一方、うらみも、関係を安定化させるために大空夢がうらみに兄妹になろうと提案した時から、強気な性格が引っ込み、元の弱気な性格に戻りつつあった。

 冷泉院冴子を加えることで百合展開も考慮に入れつつ、しかしラブコメにありがちなハーレム展開に導きながら、それで落ち着くことは断固として否定するという、女性的な構成になっている。また、前巻で性格が一変したうらみに揺り戻しを起こすことで、展開に幅を持たせている。
 いずれどこかできっちりと選ばなければいけない。そのときは間近に迫っている。

オーディナリー・ワールド

北関東の対立が東京に!
評価:☆☆☆☆☆
 栃木名物・宇都宮みんみんの餃子をこよなく愛する栃木県民の蕪木大空夢は、中学時代についてしまったヤンキーという事実無根のイメージを払拭するため、東京の私立三田門学園高等部に入学した。叔母の亜里砂の住むタワーマンションに同居させてもらう大空夢だったが、なぜかそこにはクラスメイトで遠い親戚だという猫屋敷有楽美も住むという。しかも肝心の叔母は、仕事で長期出張することに!
 学園で隠然たる権力をふるう堅物の風紀委員長・冷泉院冴子に知られたら、一発停学は確実。遅刻を三回したら彼女が家庭訪問に来るらしいので、低血圧のうらみを起こして学校に行かせるのは、大空夢がやるしかない。

 東京生まれで気のいい本川寺源司と友人となり、金髪美女の森泉いばらと仲良くなり始めて、東京デビューは無事成功したかと思いきや、いくつかの問題が勃発!森泉いばらはお弁当に群馬名物・焼き饅頭を持ってきているし、貞子と呼ばれて虐げられつつあるうらみを助けたら、やっぱりヤンキー認定されてしまった。
 それでも何とかあの暗い妄想に明け暮れた中学時代とは違う高校生活を送りたい。猫屋敷うらみの提案で、森泉いばらや本川寺源司を誘い、東京スポットを巡りつつ充実した生活を送ろうとする大空夢だったが…。


 冷泉院冴子みたいに他人の権力を自分の実力だと勘違いして退学を盾に脅すやつがいたとしたら、とりあえず地裁に地位保全の仮処分申請をして、徹底的に裁判で叩きのめすことにしたと思う。だから最後にうらみが彼女をべこんべこんに凹ました時は、かなりスッキリした。変なフラグが立ったみたいだけど。
 安易な三角ラブコメの流れから始まって、実はかなり想いテーマを扱っていたことを明らかにし、それでもってキャラの性格を一変させてしまうとは、あまりにも大胆な構成で面白い。この調子だと次巻は今巻とは一変した物語になってしまうのではなかろうか。

 「○○ですね、分かります」とか、「串を通す」とか、なぜかネットに親しみのないキャラも2ch用語を多用してきます。

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