幻獣坐 The Scarlet Sinner(三雲岳斗)の書評/レビュー


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幻獣坐 The Scarlet Sinner

弱さを支える心の柱
評価:☆☆☆☆★
 久瀬冬弥は、自殺した同級生内田未歩の葬儀の席上で、赤髪碧眼の少女藤宮優々希に呼び止められる。未歩の親友だった優々希は、自殺の原因が冬弥にふられたことにあると思い込み、詰問するために呼び止めたのだった。
 冬弥の話を聞き思い込みが誤解だと理解した優々希は、未歩の自殺の原因を探るという冬弥に協力を申し出る。冬弥には、他人を利用してでも追い詰めたい敵がいた。日本を経済的に支配する鷲王院の一族たち。彼らの一人が事件に関わっているという予感が冬弥にはあったのだ。

 優々希は自覚のないまま囮となり、事件の首謀者の毒牙にかかろうとした瞬間、誰も予想しなかった事態が生じる。彼女には、祖母から受け継いた幻獣を扱う力があった。
 犯人たちを殺してしまった自責の念に悩む優々希に対し、冬弥はその力によってしか裁けない悪が存在していることを説く。呪われた自分の力を恐れる優々希は、そんな自分を受け入れてくれる冬弥の言葉に慰められ、いったんは落ち着きを取り戻す。しかしそこに、新たな幻獣による事件が起こる。それは明らかに、彼女の幻獣を意識した模倣事件だった。

 おそらくは私怨を晴らすため、他人を利用することを厭わずに目的を果たすために行動する冬弥と、自らの力に悩み恐れながらも、自分の存在を許容してくれる冬弥へ淡い好意を抱き行動を共にする優々希の、二人の視点を交互に挟みながら物語は進行する。一緒にいながらも互いが互いに秘密を抱えていて、しかし目的のために離れられない。
 超能力による不可能犯罪を利用した私刑にして復讐劇であり、人間の弱さと強さを描いた作品。多くの謎が残されたままなので、続編があればそこで明かされるのだろう。

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