水口敬文作品の書評/レビュー

高校生魔王の決断

家族を守る
評価:☆☆☆★★
 普通の高校生のつもりだった江本弘毅は、ある日、コスプレをした少女に難詰され、心臓を一突きにされてしまう。もう死ぬと思ったところ、頭の中で奇妙な声が聞こえてきて、気づくと傷は直っていた。
 翌日、転校生としてやって来たその少女、エメラルディア・イルゾルギア・アッセンブルは、魔界の魔王ガルムト・イルゾルギア・アッセンブルの娘であると名乗り、江本弘毅の亡き祖母の江本真里菜はアクマリナという魔族で、魔王のもとから王の箱(ジリオン・ディマイズ)を盗んだ盗賊だというのだ。

 江本一族の遺伝子に織り込まれた鍵がない限り、魔王としての強大な力を約束する王の箱(ジリオン・ディマイズ)を使うことは出来ない。祖母の遺志を知るため、王の箱の封印を解く手伝いをすることにした江本弘毅だったが、幼馴染の天辻美佳は二人の関係を勘違いされてしまい、とてもむくれられてしまうのだった。

クーデレな彼女とキスがしたい (2)

クールに見えて激しい想い
評価:☆☆☆★★
 高校生の藤波和希は、生きた人間に興味を持てない高梨雪穂に恋をした。彼氏彼女というものを知るためにという理由で、雪穂は和希の告白を受諾し、晴れて二人は彼氏彼女になった。しかし未だ問題もある。
 一番大きな問題は、雪穂が和希と付き合うことに何を感じているかが全く分からないということだろう。雪穂は彼女ならばこうするからという理由で和希にキスをしてきたりもするが、そこには義務感しかないようにもみえる。
 二人の関係がはっきりしないということは、付け入る隙があるということでもある。和希を好きな幼なじみの甲元楓歌や片桐藍那は、肉体フェチや使用物フェチというそれぞれの特性を前面に押し出しながらではあるが、和希の気持ちを自分に向けようと必死にアプローチを繰り返す。

 そこに姉の藤波八千代までもが参入して来たとき、雪穂はこれまでと異なる行動を起こすことになる。

 冬休みの補習を逃れるために勉強をするという建前なのに、三人寄れば姦しく、和希を取り合って勉強はちっとも進まないという、予想通りの展開になっていく。
 そもそもクーデレという属性を与えるだけでほぼエンディングは決まるわけだから、その過程にしか特徴を生みだすことは出来ない。そこが腕の見せ所でもあるはずだ。

 しかしクールという属性上難しいのが、本人に行動させることがほとんど出来ないということだろう。行動させた時はエンディング。それまでの動きは周囲の人物が担当せざるを得ない。そんな訳で、楓歌、藍那、八千代というサブヒロインたちにアプローチさせることで騒動を巻き起こし、それを起点としてヒロインの動きを生みだしていく展開となるのだ。

クーデレな彼女とキスがしたい

ヒロイン以外が見せ場をつくる
評価:☆☆☆★★
 藤波和希は、他人に全く興味がなく、死体に興味しんしんのクラスメイト・高梨雪穂の稀な笑顔を見てしまった結果、特にタイプでもなかったはずなのに、恋に落ちてしまった。いきなり告白をしたところ、相手も男女交際のサンプルを取りたいということで、付き合うことになる。
 基本的に他人に興味がない彼女は、他人の目も気にしない。和希の前でも普通に下着姿になって着替えたりするし、プールに行けば、おっぱいを触りたければ触っても良いという。でも、それを無表情で言われるから、和希もどうしたらよいか分からない。

 それでも少しずつ一緒に過ごすようになり、雪穂の態度にも、和希を気にする様子が見えるようになってきた。彼氏彼女としてキスが出来るまでもう少し!そう思った頃、幼なじみの片桐藍那が、和希を好き過ぎる病をこじらせて、大変な行動を取ってしまう。
 他に、同じく幼なじみの甲元楓歌も奇態な行動をしだしたりして、彼を取り巻く女子は大混乱!

 見せ場は藍那がストーカーをこじらせて拉致・監禁するところくらいしかないかも。あまりに雪穂が淡々とし過ぎていて、彼女の感情の起伏と同じ様に物語にも起伏がない。片方がそういう態度なら、もう片方はやり過ぎるくらいに動かないと釣り合いが取れない気がする。
 個人的には感情の変化と振れ幅がキャラを決める要素だと思っているので、これはあまり好きなタイプの作品ではなかった。

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