道端さっと作品の書評/レビュー

明智少年のこじつけ (3)

信じられるのは誰か?
評価:☆☆☆★★
 ある日突然、明智京太郎が探偵役をやめると言い出した。妹の明智二重や幼馴染の小林修司、玉村文美、金田乃恵瑠はあまりの驚きで、我を失ってしまう。本当は推理が好きなのになぜか推理をやめてしまった京太郎を見るに見かねた4人は、京太郎に推理させるため、京太郎の大切にしているものを持ち出したり、近隣の未解決事件を調べたりし始めるのだった。

 中村喜久子先生と京太郎の父である明智京吾の意外な関係や、明智京吾と明智一恵の失踪の謎、文美と父の玉村善汰の喧嘩の原因が明らかになる。また、残る幼馴染の海宮美咲や江藤健一も駆け込みで登場する。シリーズ最終巻。

明智少年のこじつけ (2)

この旅の目的は
評価:☆☆☆★★
 明智京太郎は推理バカだ。忘れっぽい中村喜久子先生からの依頼で学園内の事件を推理するのだが、とりあえず幼なじみの小林修司を犯人にしないと気が済まない。もう一人の幼なじみである玉村文美は京太郎の推理に乗っかって修司を話を盛り上げるし、京太郎の妹の明智二重は修司が京太郎にツッコミを入れるとドロップキックをしてくるのだ。
 そんな文芸部に転校生のハーフ美少女の金田乃恵瑠が加わってくる。実は彼女も推理オタクだった。彼女が加わったことで、京太郎とダブルで推理を繰り広げ、修司はそれに巻き込まれて二倍散々な目に会うという日常になってしまう。

 だが彼女の計らいで、彼女の家の別荘に旅行に行けることになる。近くには海もあるので泳げるし、廃墟の洋館もあって推理バカにはぴったりな環境だ。
 それに加えて、別荘にいる白田エミリアと義娘の白田詩織、ひきこもりで顔も出さない息子の白田和一、執事っぽい影山広重、家政婦っぽいバイトの大学生の石崎亜希子らは、いかにも事件が起こりそうな雰囲気を醸し出してくれる。

 そうこうするうちに、実際に詩織が後頭部を殴られ大出血をするという事件が起きてしまう。いつもは推理をする京太郎も、本当に事件が起きてしまい顔面蒼白だ。やがて明らかになる事件の真相とは?

 キャラクターや設定から見れば明らかに中高生がターゲットなのだろうが、ちょいちょい挟まれる小ネタがある程度、本格ミステリに親しんでいないと分からないというのが気になる。ターゲットとコメディ成分に間にずれがあるのではないだろうか?

明智少年のこじつけ (1)

犯人を導かない
評価:☆☆☆★★
 明智京太郎は推理をしない。中村先生からの依頼で学校内の事件の犯人を暴こうとするのだが、その犯人は常に幼なじみの小林修司になる。もちろん犯人ではない。しかし、京太郎の相棒役を自認する玉村文美は京太郎のこじつけにガッツリ乗っかるし、京太郎の妹の明智二重は、修司が京太郎にツッコムとドロップキックをかましてきたりする。もう散々だ。
 そんな京太郎の迷推理に振り回され、友達もいなくなってしまった修司は、今日も彼らと一緒に文芸部の部室で本を読みながら、中村先生からの依頼を待っている。

 「33分探偵」のように、行き当たりばったりで思いつきの推理を口にして即否定される迷探偵と、それに振り回されながらも楽しい小さなコミュニティを作っている高校生たちの姿を描いている。
 最近のラノベで言うと、「子ひつじは迷わない」「はい、こちら探偵部です」と同じようなニュアンスの、正統派ではないミステリーっぽい作品と言えよう。

 なお、もしかすると、エラリー・クイーン「Yの悲劇」を未読の人は読まない方が良いかもしれない。

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