三浦良作品の書評/レビュー

MA棋してる! (1)

将棋を指す魔法少女
評価:☆☆☆★★
 白瀬奏は私立近修学園初等部の五年生。お父さんは将棋の永世棋聖、お母さんは史学の准教授をしている。そんな彼女が学校帰りに立ち寄った公園で出会ったのは、日本語を話すオカメインコだった。
 実はそのオカメインコは、異世界のグノス王立魔法学院特殊非術科一年生のソフィー・ヴァレンという、れっきとした人間らしい。何故かオカメインコになってしまった彼女を拾い、彼女を元の世界に戻すために魔法を勉強することにした白瀬奏だったけれど、いきなり、黒猫のノイア・バシュレイと高柳咲という魔法少女に襲われてしまう。

 登場する魔法少女は何故かみんなオリジナルの魔法を使うという設定になっている。白瀬奏は将棋の戦法を利用した魔法を使うし、高柳咲はプログラミング言語のC++の文法に則って魔法を発動する。後者は「よくわかる現代魔法」の設定に近いし、前者の性格は「魔法少女リリカルなのは」のなのはっぽくもある。
 しかし、後者のプロトコルは魔法発動のための手続きとして合理的だと思うが、前者のそれはあまりにも無駄が多い。何故なら、将棋のルールとは交互に指すことを前提としており、それ故に一手の効力というのはかなり限定的だからだ。それに、発動までにも手数がかかり、相手に先手を取られやすい。同じ程度の実力同士なら、もっとシンプルな手続きの魔法にはかなわないだろう。

 やはり将棋を魔法行使のプロトコルとして採用するためには、相手もその枠組みの中に取り込まなければ、有効に機能し得ない。相手の一手すらも盤上の一手に還元し、盤上の勝負で魔法勝負の決着もつくように出来るほど強力なシステムならば、将棋の枠の中に落とし込む意味はあるのかも知れない。

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