三上康明作品の書評/レビュー

恋と選挙とチョコレート a novel

日常を守る戦い
評価:☆☆☆☆★
 私立高藤学園進学科二年生である大島裕樹は、食品研究部(ショッケン)に所属している。ただ仲良しで集まって、お菓子を食べて話しているだけの部活だ。部長にして幼馴染の住吉千里、後輩ながら副部長の夢島朧、一つ年上の同級生である木場美冬に、最近、無表情な森下未散が加わった。
 しかしそんな仲良し部活に危機が訪れる。次期自治生徒会会長選挙に立候補した有力候補である財務部長の東雲皐月が、実績のない部活動を廃部にし、その予算を経済特待生の奨学金に回すという政策を掲げたのだ。廃部候補に挙げられたショッケンは、自分たちの居場所を守るために大島裕樹を会長候補として立候補させることを決定する。

 時事生徒会行政三部である治安部、総務部、財務部には選挙予算がつくものの、他の一般候補は予備選挙の物販などで選挙資金を稼がねばならない。現自治生徒会長の毛利夜雲から知識面でのバックアップを受けつつ、総務部長の辰巳茂平治らを相手取り、なかなか順調に選挙戦を進めていく大島裕樹だったが、ケートク生の青海衣更と知り合ったことで、自分のマニフェストに不足しているものを思い知らされることになる。

 ゲーム「恋と選挙とチョコレート」の住吉千里ルートのノベライズ版で、現在放送中のアニメ「恋と選挙とチョコレート」のストーリーよりも簡易的なストーリーになっている。具体的には、物語の要素を複雑にする顧問の東雲葉月や、猿江愛、門前仲綺衣、枝川希美らショッケン部員が登場しない。
 だが、作中のエピソードを織り込みつつレベルアップしていく主人公が最後に繰り出す選挙演説は、そこまで読んでいると結構良いものに感じられるだろう。

 けれどこのタイトル、三題話みたいだな。

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