水月紗鳥作品の書評/レビュー

森羅万象を統べる者IV 万物の使用者

背後の背信者
評価:☆☆☆☆★
 異能者の日本に於ける総元締めである《御園》に敵対した《異戦雪原》伊勢深雪を捕らえ、《長》である御園日向や秘書の御園由枝は、その背後から本来排除すべき敵の存在を嗅ぎ取った。それはかつて、御園日向が綾川鈴莉の異能を受け継ぐきっかけとなった事件を起こした犯人の姿だ。
 御園皐月には事態を秘密にしたまま、全国の異能組織を取り込んで犯人の包囲網を作る御園日向だったが、十分警戒していたはずにも拘らず、御園由枝、月詠詞香と側近が次々と襲われ重傷を負うことになってしまう。

 シリーズ最終巻。

森羅万象を統べる者 III 閉じた小部屋 下

戦いを始めるに足る理由
評価:☆☆☆☆★
 異能者の日本に於ける総元締めである《御園》に喧嘩をふっかけてきた伊勢深雪率いる《異戦雪原》第八戦化部隊を退けたものの、彼女たちに情報を流した内通者の存在が疑われるため、《長》である御園日向や秘書の御園由枝の心配はなくならなかった。そして、彼に何か言おうとして言いよどむ隠蔽班班長の12歳の少女である月詠詞香の態度も気になる。
 しかし、高校生は試験勉強もしなければならない。綾川鈴莉と散々にいちゃつきながらも、御園皐月から黒ニーソと白ニーソのどちらが良いのかと迫られながらも、高校生の日常を満喫していた。だが、完全に消えていなかった火種は再び熱を持ち始める。

森羅万象を統べる者 II 閉じた小部屋 上

神聖視するがゆえに
評価:☆☆☆☆☆
 異能者の日本に於ける総元締めである《御園》の《長》の血脈は《万能》の異能を持っている。その持ち主は、現《長》である御園日向と、その従妹にして妹である御園皐月のみだ。
 あらためて妹として御園日向の許で暮すことになった御園皐月は、御園日向と綾川鈴莉のイチャラブっぷりにも大分馴れてきた。それは、御園日向の秘書にして従姉である御園由枝から言わせれば、毒されていると言うことでもあるらしい。

 《御園》の本家筋の一人として、《御園》の仕事を教わるべく、本部へと連れて来られた御園皐月は、隠蔽班班長の12歳の少女の月詠詞香と出会う。《長》の部屋で暮す月詠詞香は、御園日向を神のごとく崇めていた。
 御園日向のことは尊敬しつつも、口先では軽んじているように見える御園皐月は、月詠詞香から見れば許しがたい存在だ。ゆえに月詠詞香は皐月に突っかかっていくことになる。

 冒頭から相変わらずエロい絡みが描かれています。

森羅万象を統べる者 万物創造

突っ込みまくりにツッコメない
評価:☆☆☆☆☆
 七年前から一緒に暮らしている綾川鈴莉とついに付き合うことになった高校生の御園日向は、はとこの御園由枝からの連絡で、母方の従妹の御園皐月を預かることになる。
 折角、彼氏彼女の関係になった以上、誰はばかることなく何でもありの生活ができるようになったにもかかわらず、お邪魔虫の登場!と思いきや、同居者が増えたところで鈴莉と日向のやることは変わらなかった。お茶を飲んでいても、ご飯を食べていても、通学途中でも、授業中でもイチャイチャしていて、見ている皐月はツッコミ役の休まる時もない。

 そんなある日、御園皐月を暗殺者の久世竜也が襲う。伊沢金蔵の依頼を受けた異能者である久世を撃退したのは、日向の異能だった。

 異能バトルの行方は、日向と皐月の異能が分かった時点で大体オチが読めたので、この作品の主眼は鈴莉と日向のいちゃいちゃぶりだ。公序良俗という言葉が裸足で逃げ出すように、のべつ幕無しイチャイチャする様が延々と描かれる。このあたりのイチャイチャぶりの描写が妙に堂に入っていて、とても新人作品とは思えない。MF文庫Jの正統派だ。
 一応主人公たちが異能者なので、異能バトル的な要素は無くならないだろうが、おそらく今後は主人公を寝取るべくヒロインたちが迫りくるような展開になるのではないだろうか。

 第8回MF文庫J新人賞佳作受賞作品。

ホーム
inserted by FC2 system