諸星悠作品の書評/レビュー

空戦魔導士候補生の教官 (1)

才能ある落ちこぼれ
評価:☆☆☆★★
 魔甲蟲によって地上を奪われ天空の浮遊都市に逃げた人類にとって最後の希望は、魔甲蟲を滅する力を持つ空戦魔導士だ。
 空戦魔導士育成機関である学園浮遊都市ミストガンのトップ、S128特務小隊のエース黒の剣聖(クロノス)と称されていたカナタ・エイジは、ある事件がきっかけで、裏切り者として学園中から蔑まれている。そんな彼を信頼する小隊長で寂滅姫(ニルヴァーナ)と称されるクロエ・セヴェニーは、空戦魔導士科長フロン・フラメルから照会を受けた落ちこぼれのE601小隊の教官役としてカナタを推薦する。

 E601小隊は、魔力は高いものの適性がない魔砲剣士を目指して空回りするミソラ・ホイットテール、才能はあるものの努力が嫌いで協調性がないリコ・フラメル、名門出で双魔剣術の使い手ながら人見知りで実力を発揮できないレクテア・アイゼナッハをメンバーとして、これまで一度も模擬戦で勝利したことがない。
 そんな部隊の教官に就任したカナタは、S128特務小隊副小隊長のユーリ・フロストルから罵倒されながらも、彼女たちの適性を見極め実力を発揮させようとする。

 第24回後期ファンタジア大賞金賞受賞作だ。

空戦魔導士候補生の教官 (1)

落ちこぼれの復権
評価:☆☆☆☆★
 人類を突如襲った悪夢、魔甲蟲により地上を追われた人類は、浮遊都市を建造して逃れつつ、魔力のないナチュラルとは異なり、魔甲蟲と戦うウィザードを訓練し、空戦魔導士/ガーディアンを育て上げることで、何とか均衡を保っていた。
 そんな空戦魔導士/ガーディアンを養成する学園浮遊都市ミストガンの空戦魔導士科長であるフロン・フラメルは、S128特務小隊隊長の《寂滅姫/ニルヴァーナ》クロエ・セヴェニーを呼び出し、予科E601小隊を指導する教官の選定を依頼した。E601小隊は、はみ出しものばかりを寄せ集めた小隊で、訓練では連戦連敗中。Fランク小隊などと陰口を叩かれるありさまだ。その立て直しの教官としてクロエが白羽の矢を立てたのは、《黒の剣聖/クロノス》とまで呼ばれたS128小隊のエースながら、いまは裏切り者呼ばわりをされつつ、後方支援科/ロジスティクスの手伝いをするカナタ・エイジだった。

 嫌々ながらも駆り出されたカナタ・エイジは、E601小隊のミソラ・ホイットテール、レクティア・アイゼナッハ、リコ・フラメルと会い、可能性の目を見出す。しかし彼女たちに与えられた特訓の課題は、メイド服などでコスプレして校内を歩きまわることだったり、メンバーをストーキングすることだったり、変なものでしかない。さらには、ミソラが諦めたくない魔砲剣士の夢を諦めるように言うことで、チームはバラバラになってしまう。
 S128特務小隊のユーリ・フロストルには嫌われながらも、クロエやロイド・オールウィンの信頼は未だ失わないカナタの真実とは何なのか?そして、E601小隊は周囲を見返すことができるのか?

 第24回ファンタジア大賞金賞受賞作品だ。描写には拙い部分があるが、読ませる構成になっている。

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