山形石雄作品の書評/レビュー

六花の勇者 archive (1)

評価:☆☆☆☆☆


六花の勇者 (6)

テグネウ戦の結末
評価:☆☆☆☆☆
 テグネウの仕掛けた黒の徒花と七人目の策略により、六花の勇者たちは分断を強いられていた。黒の徒花であるフレミーを守るため、自覚なき七人目であるアドレットは、ハンスを七人目として陥れ、ハンスはチャモと共に別行動をすることになる。
 好機と見たテグネウは、50年以上にわたる策略の集大成として、フレミーとアドレットの、愛に裏切られた表情を見ようと嬉々としていた。

六花の勇者 (5)

テグネウの深い罠
評価:☆☆☆☆☆
 アドレットの村の生き残りから、テグネウが仕込む黒の徒花の情報を得たものの、それはアドレットが守りたいと思うフレミーを指していた。
 その情報を秘匿したまま、ドズーとナッシェタニアと共に運命の神殿へとたどり着いた一行は、そこでミイラ化したまま生きて拘束される一輪の聖者と、その力によって生み出された聖具の存在を知らされる。その情報から、フレミーは自分が黒の徒花であることに気づくのだった。

 テグネウの深い罠が六花の勇者を襲う。

六花の勇者 (4)

市井の勇者
評価:☆☆☆☆☆
 凶魔の統率者の一人ドズーと《剣》の聖者ナッシェタニア・ルーイ・ピエナ・アウグストラと、六花の勇者の同盟関係は成った。七人目の正体に迫るため、ドズーに話を聞く六花の勇者は、三百年前に《時》の聖者ハユハ・プレッシオと、カーグイック、テグネウ、ドズーが交わした密約を知る。
 テグネウが今代の六花の勇者を倒すために用意した黒の徒花の正体を調べるため、魔哭領に作られたという、一輪の聖者の《運命》の神を祭る神殿を目指すことにした一行は、自称地上最強の男アドレット・マイアの生まれ故郷の村人たちから生み出された、屍兵に行く手を遮られる。

 苦渋の決断で元村人たちを見捨てることにするアドレット・マイアだったが、ただ一人、《鮮血》の聖者ロロニア・マンチェッタは、屍兵を助ける方法を探すべきだと主張し、一行に不協和音が発生してしまうのだった。

六花の勇者 (3)

忠誠と使命
評価:☆☆☆☆☆
 魔神復活を阻止するために魔哭領へ潜入した六花の勇者は、《剣》の聖者ナッシェタニア・ルーイ・ピエナ・アウグストラという偽六花の勇者の損害を受け、彼女の騎士であるゴルドフ・アウオーラを半ば無力化されてしまった。
 暫定リーダーとなった自称地上最強の男アドレット・マイアは、凶魔の統率者の一人で偽六花の勇者を生み出したテグネウの防衛戦を密かに突破し、魔神復活阻止を最優先の作戦目標に掲げていた。しかし、突如、かつてナッシェタニアと凶魔の統率者の一人であるドズーが協力して埋め込んだ聖具が発動し、《沼》の聖者チャモ・ロッソの命は風前の灯火となってしまう。さらには、ゴルドフがナッシェタニアの危機を訴えて出奔、一躍、偽六花の勇者候補筆頭となってしまった。

 《山》の聖者モーラ・チェスターと猫の暗殺者ハンス・ハンプティにチャモの看病を任せ、《鮮血》の聖者ロロニア・マンチェッタや《火薬》の聖者フレミー・スピッドロウと共に、ナッシェタニア無力化に走るアドレットだったが、その彼女が見つからない。そのうち、テグネウがアドレットに同盟を持ちかけてくる。

 今回はアドレットに良いところは全くなかった。終始、ゴルドフのお話だった。六花の勇者御一行は見事に足止めされ、目的達成は遙か遠い。欺瞞のドキドキ感もちょっと薄れてきた気がする。
 次巻では三百年前の経緯に話が及びそうだ。

六花の勇者 (2)

ルールのある騙し合い
評価:☆☆☆☆☆
 かつて魔神を魔哭領に封印した一輪の聖者の力を受け継ぐ六花の勇者に七人目がいる!秘密武器を使う自称世界最強のアドレット・マイアが一度は七人目と疑われたものの、《剣》の聖者ナッシェタニア・ルーイ・ピエナ・アウグストラが七人目だったことが分かり、六人は結束を強くした…となるはずだったが、遅参した《鮮血》の聖者ロロニア・マンチェッタの存在が、問題をまた振り出しに戻してしまった。

 万天神殿の神殿長である魔神の眠る《山》の聖者モーラ・チェスターは悩んでいた。夫ガンナとの間にもうけた娘シェニーラが、凶魔の統率者にして《火薬》の聖者フレミー・スピッドロウを半凶魔として産ませたテグネウに人質に取られていたのだ。その話は三年前に遡る。
 そんなことを知らない《沼》の聖者チャモ・ロッソ、猫の暗殺者ハンス・ハンプティ、騎士ゴルドフ・アウオーラを含む六人の勇者たちの前にテグネウが現れ、アドレット・マイアの切り札を簡単に打ち砕いてしまう。

 かつて一輪の聖者が傷を癒やしたという結界《氷の蕾》に対比した勇者たちは、テグネウを殺すための策を練るため、役割分担を始める。フレミーは、守護者カーグイックや反逆者ドズーという凶魔の統率者について語り、アドレットは過去の六花の勇者の一人が記したバーナ戦記に記載のある魔王ゾーフレアの能力からヒントを得ようとする。
 アドレットがようやく真相に気づき始めたときは既に遅く、モーラはロロニアの目の前でハンスを手にかけていた!このまま勇者たちは分裂してしまうのか?

 今回はますます異世界ファンタジーというよりもミステリーの風味が強く出ている。提示された状況から条件を推測し、それをすり抜ける回答を導出する、そんな推理劇だ。
 圧倒的な能力を持ちながらも人間であるがゆえに生じてしまう弱みと、その弱みを理解することで相手の強さを自分のものにしようとする凶魔の騙し合い。だがそれも、物語全体の一端に過ぎないようなのだ。

六花の勇者

料理の仕方が一風変わっている
評価:☆☆☆☆☆
 このシリーズ、もしこの巻で終わったら、ちょっとしたホラーになってしまうかも。  千年前、人間は存亡の危機に瀕していた。大陸に突然現れた一体の魔物、魔神が数多くの凶魔を生み出し、永世帝国ロハネを滅亡させたのだ。そこに現れたのは、一輪の花を武器として戦う聖者だ。彼女は魔神大陸の端まで追い詰め打倒し、封印することに成功した。しかしいずれ魔神は復活する。その時には、一輪の聖者の力を受け継ぐ六人の勇者が運命の神により選ばれ、魔神と戦うことになる。そんな彼らは六花の勇者と称された。
 そんな勇者を選ぶ舞台となる神前武闘会に乱入したアドレット・マイアは、騎士たちが使わない様な秘密武器を使い、勝つためにはあらゆる手段を厭わない戦い方で勝利をおさめる。当然、乱入した罪で捕えられてしまうのだが、首尾よく六花の紋章を手に入れて解放され、同じ六花の紋章を持つピエナ王女、ナッシェタニア・ルーイ・ピエナ・アウグストラと共に、魔神の眠る魔哭領を目指す。

 しかし事態は思わぬ方向に向かう。アドレットが旅の途中で出会った六花の勇者のひとりフレミー・スピッドロウは、聖者を殺害した六花殺しだという。そして、ようやく集合した六花の勇者、チャモ・ロッソ、モーラ・チェスター、ハンス・ハンプティ、ゴルドフ・アウオーラも含め、彼らは魔物を封じるための結界に逆に閉じ込められてしまうことになった。しかも、六人しかいないはずの勇者が七人いる!
 誰が魔物の回し者である七人目か。互いに信じたり、疑ったりしながらも、事態は七人目が計画する通りに進み、アドレットがその命を狙われることになる。しかし彼は本物の六花の勇者、何とかそのピンチを切り抜けることが出来るのか?

 魔神を倒しに選ばれた勇者が向かうというよくある筋書きなのに、味付けはぜんぜん違う。クローズドサークルの中で犯人を見つけ出すという、ミステリー風味の作品になっている。犯人として疑われた立場から、少しずつ自分を信じて来る仲間を生み出し、本当の犯人を暴いていくのだ。
 だがもちろん、本来の筋である魔神退治もなくならない。今回の事件の背景にあるのはそれなのだから。そこに、魔物と人間のハーフやら、異端の思想やら、天才を凡人が努力で越えるやら、様々な視点を加えつつ盛り上げていく。

 そして謎が解き明かされた最後に投下される爆弾は、本当にホラーの趣がある。ロロニア・マンチェッタとは何者か?

戦う司書と世界の力

みんなが犯した過ちはみんなの手で正す
評価:☆☆☆☆☆
 主要キャラがほとんど退場した状態で、どうやって物語を紡ぐのかと思いましたが、いくつかの魔法権利を持ち出してくることで、壮絶なことになりました。ちょっと何でもアリの展開過ぎる気もしますが、これまではバッサリいく感じだったので、バランスが取れてよかったような気もします。

 旧約聖書の世界でもそうですが、神様という存在は全知全能なのに、あるいはだからこそかも知れませんが、失敗にとても敏感です。少しでも過ちに気づくと、全て一掃して、初めからやり直そうとします。まるでゲームでミスをしてリセットボタンを押す子供みたいに。
 しかし人間は、旧約聖書が正しいと仮定するならば、神の似姿であるのですから、そう簡単にリセットされることには納得できません。彼ら一人一人には自分が守るべき世界があるのですから、きっと精一杯抵抗することでしょう。完璧な自らに似せて創ったために、自らの思い通りにならないわけです。
 しかし、従順な存在が欲しいのならば、初めからその様に作ればよいのですから、神様だって抵抗してくることを意外に楽しんでいるのかもしれません。その証拠に、世界は今も変わらずに存在しているのですから。

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戦う司書と絶望の魔王

自分には超えられない悔しさを誤魔化す為に相手を尊敬していると思い込む
評価:☆☆☆☆★
 過去・現在・未来を同列に扱うことがよくある。しかし、それぞれの指し示す期間には大きな差異があり、特に現在が示す期間はまさにこの一瞬でしかない。それほど刹那の時間にも拘らず、人間に対してもっとも大きな影響を与えるのは現在だ。
 では、現在が絶望に満ちた世界だったらどうなるだろう。ある者は過去の栄光を懐かしみ、またある者は未だ来たらざる時に希望を見出すかもしれない。もしその希望が自分の手ではつかめないとしたら…そのとき生まれる力の代行者を、歴史は英雄と呼ぶだろう。今回は、自らを殺して英雄になろうとした少年の物語になっている。

 ただ、思うのだが、各巻は一話完結の物語として読めば面白いと思うのだが、シリーズ物としてはそれぞれのつながりが少し希薄ではなかろうか。いや、希薄なのではなく、現在が過去の影響をあまりにも強く受けすぎているため、本来はもっとも身近である現在の物語の色が薄いように感じてしまうのかもしれない。あと、少数の人の思惑で歴史全部が決まってしまうみたいな考え方は、あんまり好きではないしね。

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戦う司書と神の石剣

秘密の上に成り立つ秩序
評価:☆☆☆☆★
 世界観の外枠がようやく見えてきた。そんな気がする。
 伝説的「本」屋、ラスコール・オセロ。その存在が敵対組織、神溺教団の秘密を暴く鍵であるとにらんだ武装司書ミレポックは、館長代理ハミュッツの決定にそむき、休暇をとってその正体を探ることにする。武装司書にとっても、教団にとっても禁忌であるラスコールが守る秘密とは…
 真人とは何か、天国とは何か、バントーラ図書館上層部と教団の関係は、そもそもなぜ「本」が作られるのか?そんな謎の一端が読者に対して開示される一方で、ラスコールを追うミレポックとアルメ、二人の少女が自分自身を理解していく…
 幸せの実現を他人に託して生きるもの、幸せに至ることによって幸せを無くしたもの、幸せを公平に分配しようとするもの。この世界では幸せが「本」に仮託されている。
 二人の少女の物語は一応の終結を見たが、代わりに物語を閉じさせる謎が提示された。この謎が背負っているものは世界の秩序か、それとも悪夢なのか。

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戦う司書と黒蟻の迷宮

あなたがすべて
評価:☆☆☆☆★
 人の一生の終着点が「本」になることである世界の物語第三弾。
 何故か地下に閉じこもりきりになっている変人の司書が突然反旗を翻して、味方であるはずの司書に襲いかかってくる。その目的は館長代行の殺害。一体何が彼をそうさせたのか…
 今回は今までと違って司書にスポットを当てたのかなぁ、と思いきや、やはり司書に敵対する教団の人が主役でした。第一作のキーパーソンを想い人、第二作を友人とするならば、今回は母親というところでしょうか。
 ある人物に敵対することだけを目的として生きさせられてきた人が、ある日突然、そのことが無意味になってしまったときどうなるのか。他にすべを知らない彼は、その人物を調べ続け、ついに対象と同一化するとき、何を起こすのか?
 まだまだ風呂敷が広がりきっていない感があるこのシリーズ。一体どこに行き着くの?

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戦う司書と雷の愚者

もっと笑顔を
評価:☆☆☆☆★
 人の一生を記した「本」とそれを取り巻く人々の物語第二作。この本はタイトルを”司書”としているけれど、実は主人公は常に敵対する側なのじゃなかろうか、と。
 この物語には、”肉”という存在が出てくる。司書に敵対する教団によって作られる、記憶や生きる意味を消された人間。そういう空っぽの入れ物に一つの執着を与えると、一体どういう物語をつむぐのかなぁ、という実験なのではないかと。前回はそれが恋、今回は笑顔。
 だんだんと物語の世界観が浮かび上がってきましたが、常に新キャラが主人公格なので、実はあまりキャラが立っていないのではないかと思います。読後の印象が薄い。レギュラーなのにレギュラーとして定着していないというか。
 本来のヒロインのスタンスが読みきれないということもありますけれど、今後どう展開していくのでしょうか。

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戦う司書と恋する爆弾

あなたの過去に恋してる
評価:☆☆☆☆★
 人は一生に一冊の本を書くことができる、なんていうけれど、この物語の世界では、その生涯が余すところなく一冊の「本」になってしまう。そしてその「本」は何故か地中から発掘され、図書館に収蔵される。これは、そんな「本」を管理する司書の物語。
 第一作目である本作は、この司書たちに何故か対立する教団によって全ての記憶を消され人間爆弾にされた少年と数百年前に大量虐殺犯として処刑された少女の「本」の出会いのお話です。少年は「本」を読むことによって恋に落ち、少女はその能力である未来視によって恋に落ちる。一方はすでにこの世から消えてしまっているにもかかわらず、不思議に共に生きているかのような感を抱かせます。
 本筋であると思われる教団と司書の戦いには本来無関係なこの出会いが、いかに物語を収束させるのか…
 若干、導入部が冗長な感があり、読みづらいかも知れませんが、一度流れに乗ってしまえば、すんなりと読めると思います。

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