八薙玉造作品の書評/レビュー

魔法使いは終わらない 傭兵団ミストルティン―七人の魔法使い

評価:☆☆☆★★


ボクも世界も死にたくないのに すまない。我のうっかりで、汝が…

しょうもない呪い
評価:☆☆☆★★
 普通の高校生である菊月晶は、ある日、魔女のベルタ・ヴァッサーマン、サイボーグのパトリシア・S・レグルスに命を狙われ、その現場に横入りした天則司る神霊アシャ・ワヒシュタによって助けられる。彼女たちはドゥルジ・ナスという呪いにかかっていて、彼を殺せばそれが解けるのだという。しかしそれは悪神の罠で、菊月晶の中にある善神の力を奪うためでもある。
 《タンスの角に足の小指をぶつける》《やけにお腹がすく》《肝心な時にドジをふむ》というしょうもない呪いながらも、彼女たちの力では世界滅亡のきっかけにすら成り得る。総理の命を受けた秘密諜報機関・武塔の服部大火の監視の下、何とか生き残りのために呪いを緩和する方法を考える菊月晶だったが、白面金毛九尻の狐の眷属である巻神夜子がやってきて、菊月晶を殺そうとするのだった。

 大家さん姉妹の双津星鈴金、双津星銀華にも何か事情があるようです。

新妹魔王の契約者 LIGHT!

エロい日常
評価:☆☆☆★★
 魔界から帰還後の東城家の日常を、主にロリエロサキュバスこと万理亜の視点で描く。だいたいヒロインたちが万理亜にエロいことをされると思っておけば間違いない。珍しい所では勇者の里の高志が電話で登場する。

焦焔の街の英雄少女 (3)

バトル物の王道的展開
評価:☆☆☆☆★
 嵐樹の剣皇・イザナミにより連れ去られた光義は、八雷の真実を知らされる。一方、光義の不在に周章狼狽する杏は、キャラ崩壊の危機に瀕していた。
 バトル物の王道的展開。

獅子は働かず 聖女は赤く (5) かくして、あいつは働いた

正義の衝突
評価:☆☆☆☆★
 ガルダ正統帝国皇帝の家系であるトリエステ家の末裔であることが明らかになり、セレスター王国国王ジルベール・ラスパイユと不死の教皇ヴァルターの陰謀により、ガルダ正統帝国への宣戦布告の口実にされかけたアンナだったが、焔鎧王マルテとユリウスの奮闘により、その野望は砕かれたかに見えた。
 しかし、その救出劇をガルダ正統帝国皇帝イグナーツ・デッケンドルフの手引きによるものを決めつけ、セレスター王国軍と中央協会の法の獅子たちは、ガルダ正統帝国へと兵を進める。

 戦争を止めたいアンナの要望に応え、祖霊のいない土地へと軍を誘導し、四機の御使いに挑むユリウスだったが…。  シリーズ最終巻。

オレのリベンジがヒロインを全員倒す! (3)

表紙で分かります
評価:☆☆☆☆★
 星のオリジンを奪った容疑者は、破滅のオリジンを持つミカボシに絞られた。そんな時、オリジンズを襲いオリジンを奪う事件が発生し、生徒会メンバーも被害にあってしまう。その犯人は誰なのか?
 シリーズ最終巻。

オレのリベンジがヒロインを全員倒す! (2)

絶技発動
評価:☆☆☆☆★
 生徒会を掌握した伊原迅の前に、風紀委員長の倉橋数音と風紀委員の朝霧儚菜、氷川桃が現れる。生徒会の上位組織であるヤシマに対抗する、風紀委員会の上位組織であるツイナが、戸塚布津乃、曲辻綾子の抹殺指令を出したのだ。
 彼女たちよりも前に戸塚布津乃、曲辻綾子に接触すべく、伊原迅が動き出す。絶技発動!

オレのリベンジがヒロインを全員倒す!

これは意外に面白い
評価:☆☆☆★★
 二年前の流星事件で地球滅亡の危機を救った伊原迅は、その直後、自身の超能力の源である星のオリジンを仲間だと思っていたサラ・戒奈、武速咲楽、曲辻綾子、戸塚布津乃に奪われた。
 二年後、ただの人となった伊原迅は、腐った目をして、幼馴染の小山神那に餌付けされながら、彼女たちに復讐し、力を取り戻す方法を考えていた。そんな彼の前に、品津樹という風のオリジンの従者となったサラ・戒奈が現れる。

 これは意外に面白い。

神話殺しの虚幻騎士 II

最強の神
評価:☆☆☆★★
 オーディンに家族を殺されたクラウスは、神々が狙う姉のリンデを連れて逃げ、神々に復讐することを決意した。封印されたマーナガルムのマナを解放し、戦神テュールを撃破した一行は、多大な傷を負いながらも、人々の旗印となってしまう。
 マナに課せられた呪いを解き、クラウスに義腕を作るため、黒妖精ズズリと合流した一行は、かつての仲間である銀狼騎士団と再会し、地下世界の開放に巻き込まれてしまう。

 一方、オーディンからの命令を受け取った雷神トールは、ワルキューレのユーディットと共にクラウスたちを探すのだった。

焦焔の街の英雄少女 (2)

共闘
評価:☆☆☆★★
 五龍剣のひとつ皇土剣を手にし、烈火剣の剣皇・紅地杏と共に剋獣五帝のひとつ皇土帝タイサイを退けた黄塚光義だったが、その身に取り込んだ剋獣の影響で、紅地杏を刺してしまう。
 紅地杏の献身で意識を取り戻したものの、紅地杏は重傷で、かつ、黄塚光義は見せかけの剣皇であることが明らかになってしまう。それを隠して剋獣対策組織・桔梗長官のシビや防衛省対異界外来種特別守備隊に引き合わされた黄塚光義は異界外来種特務殲滅官としてスカウトされるものの、紅地杏には反対されてしまう。

 そんな時、東京湾に釼塵帝エリスの近衛種ベヒーモスと、流渦帝オケアノスの重装騎が接近していることが判明する。さらには、嵐樹剣の剣皇イザナミと元四聖騎士団南方朱雀団長タマオノを擁するテロ組織・八雷が襲撃してくるのだった。

焦焔の街の英雄少女

豆腐メンタルの英雄
評価:☆☆☆☆★
 四海天宮という異世界を滅ぼしこの世界へやってきた剋獣五帝に率いられた剋獣に、現代世界は対処の術を持たなかった。四海天宮から五龍剣がもたらされるまでは。
 五龍剣の一つ、烈火剣の剣皇となった紅地杏は、剋獣を滅ぼす手段を持っている人間だ。異界外来種特務殲滅官として、四海天宮滅亡から逃げ延びた人々が設立した剋獣対策組織・桔梗や防衛省対異界外来種特別守備隊の協力を得て、日夜戦っている。

 しかし日常における彼女は、幼馴染の黄塚光義に言わせれば、豆腐メンタルの少女だ。それでも逃げずに戦う彼女をサポートできないことに、黄塚光義は憤りを感じていた。だがある日、彼に転機が訪れる。

神話殺しの虚幻騎士

歪めた運命
評価:☆☆☆★★
 オーディンに住んでいた村を滅ぼされたクラウスは、声を失った姉のリンデと共に、追跡するワルキューレのユーディットらから逃げ延びながら、神々に復讐する手段を探していた。
 人間の力での復讐に万策尽きたクラウスは、ユーディットの力を利用し、神によって封印されていたマーナガルムを解放する。
 マナを焚き付けてニヴルヘイムを統治する法の神テュールを倒させ、死んだ両親から姉がオーディンに狙われる理由を知ろうとするクラウスだったが、テュールの法の力の前にマナあえなく敗れ去り、ヘルの配下の巨人モーズグズの助けで辛うじて逃げ延びる。

 本来の運命ならばフェンリルによって噛み殺されているはずのテュールが今も生き延びているのはなぜなのか。そして人間は神々のゆがめられた運命をただすことができるのか。

獅子は働かず 聖女は赤く (4) あいつ、我とか言いだしおった

皇帝の血の責任
評価:☆☆☆☆☆
 ヒルデとエーファの姉妹を魔女たちの隠里《茨の城》に送り届けた《裏切りの牙》ユリウスと《赤い聖女》マルレーネの妹アンナ、《竜の魔女》サロメだったが、《竜の牙》フェルディナンド・ドリーシュとコルネリア・フィードラーが操る御使い《天翼王》ヴェーネレと《武刃王》サトゥルノの襲撃を受けた。それに加え、ガルダ正統帝国軍とセレスター王国第二王女《竜砕きの姫君》リュリュ・ラスパイユも介入してきて、大ピンチに陥る。
 《焔鎧王》マルテや魔女たちの奮戦で何とかしのいだものの、《法の獅子》ヴァルターが持参した《太陽の剣》により、アンナがガルダ帝国の正統であるトリエステ家の血を継いでいることが明らかになり、中央教会の教都ノヴァリアに連れ去られてしまう。

 負傷を癒やし、ノヴァリアへ向けて出立しようとしたユリウス達の許に、アンナとセレスター国王ジルベール・ラスパイユとの結婚の報がもたらされるのだった。

獅子は働かず 聖女は赤く (3) あいつはもう一人でも大丈夫じゃ

秘密に重なる秘密
評価:☆☆☆☆☆
 ヒルデとエーファの姉妹を連れて魔女の暮らす森へと向かう《裏切りの牙》ユリウスとアンナ、《竜の魔女》サロメの前に、《竜の牙》フェルディナンド・ドリーシュとコルネリア・フィードラーが御使い《天翼王》ヴェーネレと《武刃王》サトゥルノを連れて現れる。《焔鎧王》マルテで対抗するユリウスだったが、コルネリアの捨て身攻撃により、彼女と共に断崖へと投げ出されることとなってしまった。
 それを見たアンナはユリウスを助けようとして滑落、サロメ、ヒルデ、エーファの魔女たちとも離ればなれとなってしまった。そんなアンナの前に、セレスター王国第二王女《竜砕きの姫君》リュリュ・ラスパイユが現れる。

 《赤い聖女》マルレーネの残した呪いとも言うべき想いが、いまを生きる女性たちの心を苦しめる。そんな彼女たちの心の揺らぎに気づくこともなく、ただ戦うことでしか何かをなすことが出来ないユリウスだったが、コルネリアがアンナに秘密を告げることで、その不安定な均衡はついに破れてしまった。
 そしてさらに、腰痛の人ヴァルターが内密に進めていた調査は、アンナに、ユリウスに、新たな運命を突きつける。時代の混乱が生んだ悲劇は、取り戻せない犠牲の上にどんな世界を作り上げるのか。

 巨大ロボットが暴れたり、暴走修道女見習いが悩んだり、愛ゆえに憎んだり、見た目幼女な年増をからかったりするお話だ。

獅子は働かず 聖女は赤く (2) あいつも昔はイイ子だったのに

過去と現在のギャップ
評価:☆☆☆☆☆
 中央教会と改革教会の対立により起きた禍竜戦争において、中央教会を裏切った元≪獅子の牙≫ユリウスとその御使い・焔鎧王マルテと≪竜の魔女≫サロメ、≪赤い聖女≫マルレーネは、混乱の中心人物だった。マルレーネは処刑され、ユリウスとサロメは名前を隠してハーゲンに住んでいたのだが、聖職者見習いアンナに迫った危機を助けるために暴れてしまい、再び表舞台に登場することになった。
 なぜアンナが狙われるのかを問うために教皇領に向かうユリウスとサロメ、アンナの一行は、野宿の最中に何度かアンナの凶悪なツッコミにさらされながら、途中の街までたどり着いた。そしてそこで、ヴァインハイムという村で改革教会に通じた反乱が起きているという噂を聞く。

 しかし実は、かつてその村は中央教会の傭兵団に襲われていたところを赤い聖女に助けられ、戦後ずっと領主たちに迫害されて来たのだ。その圧政に立ち向かうため、ヒルデとエーファの姉妹魔女が禍竜となって戦っている。
 そんな彼女たちを倒すべく、ユリウスがマルテを連れて行ったと知ったアンナは、彼を止めるために村へと向かうのだが…。

 一方、ユリウスを追うべく、中央教会の≪獅子の牙≫から、ユリウスのかつての師匠であるコルネリアと腰痛持ちのヴァルターが派遣されていた。

 アンナに隠された秘密は未だ明かされず、代わりにユリウスが真面目に働いていた頃に恩を受けた少女たちが登場して、ユリウスを神聖視して慕う様が描かれる。いまの、呑んだくれてダラダラしているユリウスからは想像がつかない話だ。
 そしてもう一方からは、やはり過去にユリウスを慕っていた女性が敵として登場し、御使い同士の大バトルが繰り広げられる。個人的には、戦闘シーンとギャグシーンは、きっちり分けて欲しいかな。

獅子は働かず聖女は赤く あいつ、真昼間から寝ておる

神を信じる人間の戦い
評価:☆☆☆☆☆
 正統ガルダ帝国には戦乱の時代があった。中央教会の腐敗に端を発した改革教会の旗揚げ、諸侯権利の剥奪などが相まって、体制派と反体制派の内乱に発展した。戦いは体制派と中央教会の有利に進んだが、それを支えた≪獅子の牙≫の一人が≪裏切りの獅子≫となってその御使いと共に改革教会として参戦し、≪竜の魔女≫が禍竜と呼ばれる戦力を投入し、≪赤い聖女≫が精神的支柱として立つことで戦乱は拮抗し拡大、隣国セレスター王国の介入を招くまでになった。
 しかしその禍竜戦争も≪赤い聖女≫の処刑で終結し、改革教会は瓦解、≪裏切りの獅子≫≪竜の魔女≫も姿を消してしまった。そして正統ガルダ帝国には徐々に平和が訪れ、街は復興に向けて再建が進んでいる。

 そんな街のひとつであるハーゲンの教会の見習い聖職者であるアンナは、いつも彼女のことを見つめている視線に気づいた。その視線の持ち主を追いかけてたどり着いた移民街にいたのは、その男・ユリウスと、彼の師匠だという幼い少女・サロメだ。
 台所仕事をしている最中に追いかけたアンナが包丁を持って他人の家に押し入ったのはともかく、ユリウスという青年は働きもせず酒を飲んでばかりで、小さなサロメに養ってもらっている。包丁を片手にそれを糾弾したアンナは、教会のノイマン司教に頼み、彼に仕事を斡旋してもらうことにする。

 様々なことがありつつも、平穏な暮らしが始まるのかと思った瞬間、改革教会に属する帝国騎士ラルフが仲間を率いてハーゲンを攻略し、領主代理たちを殺害して、アンナを差し出すように言う。その目的とは一体何なのか?

 神を信じ、人の善意を信じ、平和を信じ、多少のドタバタはありつつも平穏に暮らしていたアンナに襲い掛かる苦難の数々。彼女が愛する街を、人々を傷つけさせたのは、彼女のせいだという。そのことに衝撃を受け、人々を守る為に自分を犠牲にするだけでなく、神への信仰まで捨てさせられるアンナに対し、ユリウスは神の無謬を前提とする言葉をかける。
 禍竜戦争の主役たちの一部は登場するも、そのときに何があったのかはこの巻では明かされない。ただいま起きている出来事は、そのときの出来事に起因することは確かだ。それが何なのかは、これから徐々に明らかにされることだろう。

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