八針来夏作品の書評/レビュー

メサイア・クライベイビィ (3) 永遠を捨てる者

愛情の起源
評価:☆☆☆★★
 惑星ウルヴァシーの大統領で知性調整種(ジニアス)のケラウスと戦闘適応種(メーガナーダ)のメッシャの間に作られた少女スーシャ=オラーニエの誘拐事件解決を依頼されたセレスたちは、無事、彼女を助け出すことに成功する。
 しかし帝国の支配候がケラウスを支配し、知性調整種(ジニアス)と戦闘適応種(メーガナーダ)の間に内戦が勃発してしまった。その内戦に介入するかどうかで悩むセレス。だが、機械生命体カイの行動を見て、一つの決断を下すのだった。

メサイア・クライベイビィ (2) それは銃弾より尊く強い

意図された襲撃
評価:☆☆☆★★
 宇宙を平和にするための方法を模索するため、学院が置かれている惑星アンダーツリーを目指したセレスたちは、客船でソフィーヤ・ウルベスカという学士の少女と出会う。
 交流を深める一行だったが、ソフィーヤの同行者である惑星アマージュの全権大使ルセランを狙う帝国要人暗殺部隊「ハービンジャーズ」の隊長である雀蜂とその部下のクザッシュの襲撃を受けるのだった。

メサイア・クライベイビィ 救世主はよく泣く

巨乳が人類を救う
評価:☆☆☆★★
 この数百年、銀河は帝国の支配侯により支配されていた。故国奪還のためレジスタンスを立ち上げたリューン=サデュアルは、帝国の手先となった姉のリザ・サデュアルを暗殺するために、死人谷と呼ばれる死刑囚による資源採掘現場へと向かったところ返り討ちに会いそうになり、ヒノ・セレスという少年とレイコ・カタナシという機械生命体に助けられる。ヒノ・セレスは、彼女たちの師匠であるバリル・ヴァレナスが最後に遺した人類最強の重力制御能力者だった。
 レイコ・カタナシから、死人谷で生まれ強力な放射線によって脳を癌化された結果、人類として異常な重力制御能力を手に入れた少年がいることを聞かされたバリル・ヴァレナスは、自身の寿命を捨て、人類と自分の弟子たちに希望を遺すため、3年生存率がほぼ0の死人谷に自ら望んで向かい、セレスに人としての感情を与え、生き残る術を教えたのだった。

 リューンの側付きのミカ・ヴァレナスから頼まれ、姉妹による殺し合いを避けるため、セレスはある決断を下す。その結果は?

覇道鋼鉄テッカイオー (3)

優先順位の葛藤
評価:☆☆☆★★
 銀河武侠の最大派閥・武衛派のトップである「銀河第一武侠」の孫娘にして玉兎剣法の使い手ルゥラン・フラワーパレードの患う「時限陰毒殺」の治療のためだけに育てられ、「童子神巧」を仕込まれた金烏拳法の使い手カザン・ヒルガノは、黒龍会第四香主「神算魔女」ミャウ・ガーの言葉に悩んでいた。即ち、「時限陰毒殺」が完治したら童貞を捨て、思い人のルゥランに守られるだけの人生を送るのか、と。
 彼が悩んでいる様子は、ルゥランや王女アルフェミナ・シュネーヴェント、社長のジャック・ジャンパーにも伝わっていたものの、解決の糸口はまるで見えない。そうこうするうち、カザンの義姉のミザカ・ヒルガノが関わる仕事の依頼が届き、その届け先に「時限陰毒殺」の治療法があるという連絡が、ルゥランをマスターと呼ぶ電子人格ポラリスから届くのだった。

覇道鋼鉄テッカイオー (2)

濁りのない白と黒
評価:☆☆☆☆★
 銀河武侠の最大派閥・武衛派のトップである「銀河第一武侠」に拾われ、孫娘にして玉兎剣法の使い手ルゥランの患う「時限陰毒殺」の治療のためだけに育てられ、「童子神巧」を仕込まれた金烏拳法の使い手カザンは、育ての親の手により殺されないために、ルゥランと共に逃げ出し、シュネーヴェント星系の王女アルフェミナを黒龍会第三香主「氷棺冥送」グントラムの手から助けることとなった。
 その際に使われた「精神爆弾」の信管となった女性ジルエッダの身内を探す依頼を受けたジャンパー運送は、その手がかりである花、クララベスセルナーの咲く惑星へと向かっていた。しかしそこに、黒龍会第四香主「神算魔女」ミャウ・ガーが交渉に現れ、ジルエッダとそっくりな女性が来ても、一切関わらないように要求してくる。もちろん、その対価に十分な報酬は弾むという条件付きだ。

 だが、銀河武侠たるカザンたちが暗黒武侠の要求を素直に飲むわけもなく、更には彼女が帰る前に、ジルエッダそっくりな女性ジルオットがスカーレットスワローを訪れてしまう。
 「大敗飢求」の残した覇道鋼鉄「鉄塊凰」は起動せず、ミャウ・ガーに加え、黒龍会第一香主「巨凶暴星」ガーナラクまでもが戦闘に加わってきて、カザンとルゥランは圧倒的に不利な条項に追い込まれてしまうのだった。

 予想通り、今巻は複雑な設定の話もなく、銀河武侠と暗黒武侠の単純な対決となった…かと思いきや、ミャウ・ガーは暗黒武侠としては異色な出自を持つこともあり、互いのゴールにさほど差がないにもかかわらず、相争わなければならない展開となってしまう。
 前巻同様、登場する暗黒武侠は意外に好漢であり、素直に憎むこともできない。そして、童貞を守らなければならないカザンに対し、ミャウ・ガーは彼の痛いところを突き、衝撃のセリフを残していくのだ。

 セクハラは控えめになり、真の十絶悪鬼「蛇蝎横行」は未だ姿を見せず、カザンたちのさすらいの旅は続く。

覇道鋼鉄テッカイオー

失えば失う
評価:☆☆☆☆★
 時代は移り変わり、銀河に治安をもたらす存在は、武侠と呼ばれていた。修行によって超能力を開花させた彼らは、鍛え上げた剣や拳で悪を討つ。そして彼らの持つエネルギーは、オーガニックアーマーと呼ばれる人型ロボットを動かす動力となり、その力にはいかなる機関も及ばない。
 そんな銀河武侠の最大派閥・武衛派を出奔した金烏拳法の使い手カザンと、玉兎剣法の使い手ルゥランは、海賊に追われているシュネーヴェント星系の王女アルフェミナを助ける。彼女の星系に従兄ナシェスが悪鬼を引き入れ、その計略に利用するために彼女は追われていたのだ。その悪鬼の名は、「氷棺冥送」グントラム。ルゥランの父にしてガザンの師兄の仇でもある。

 因縁にもとづき、グントラムの野望を打ち砕くべく行動を開始したカザンとルゥラン。敵は強大だが、こちらには奥の手がある。それこそが童子神巧、童貞を守り続けた者のみが使用することが出来る、究極の武巧である。

 第一印象はとにかく読みづらい。普通に印刷されているはずなのに、妙に行間が狭い気がしてしまう。怒涛の勢いで文章が詰め込まれている、武侠小説だ。
 父祖の仇である強敵と、それに挑む少年少女の武芸者。味方となってくれる謎のお姉さん。そして戦いの果てに掴み取る、復讐のむなしさ。そんな鉄板ネタを詰め込んだ中核にあるのが、童貞である。童貞を守らなきゃそれまで積み上げた工夫を失うとか、どこの都市伝説だというのだろう?

 正義と悪の二元論の様な構図で物語を展開しつつ、実は主人公の二人の関係にはそれでは割り切れない背景があり、いつの間にやら敵と味方が入り混じったりする、様々な要素が詰め込まれている。もうこの機会だから、悔いの内容に全部詰め込んでやろうという感じだ。
 そのあたりは全部吐き出してしまったと思うので、次巻以降はもうちょっと抑え目に本筋を展開してもらうと、読みやすくなりそうな気がする。

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