ゆうきりん作品の書評/レビュー

ギルティクラウン レクイエム・スコア IV

明かされる歴史
評価:☆☆☆☆★
 桜満集を頂点とする、ヴォイド・ランク制による支配体制は、供奉院亞里沙と、彼女を使役した恙神涯により壊され、桜満集の王の力もまた、恙神涯に奪われてしまった。葬儀社の生き残りも散り散りとなり、ダァトの後押しによってGHQを支配した恙神涯は、世界に対して宣戦を布告する。
 楪いのりに助けられて一命を取り留めた桜満集は、彼女が自分を守るために彼女のみを犠牲にしたのを知り、彼女を助け出すために再び戦うための力を手に入れる決意をする。そんな彼が向かったのは、かつての仲間たちがいるであろう場所だった。

 供奉院翁の最後のシーンは、偶発的というよりも供奉院亞里沙の意思が明確になる形に描き直されるなど、細かなポイントではアニメ版との相違も見られる一方で、大筋ではアニメ版の通りに進行してエンディングを迎えている。
 また、アニメ版で描かれたシーンよりも時間軸上で後ろとなる描写は存在していないので、それを期待して購入するならば止めた方が良いだろう。

ギルティクラウン レクイエム・スコア III

女たちの選択、そしてその結果
評価:☆☆☆☆★
 六本木でのアポカリプスウィルスのエピデミックを発生させた桜満真名は、葬儀社の恙神涯と共に永久の眠りについた。楪いのりと共にその戦いを生き延びた桜満集は、生き残った仲間を求めて天王洲第一高校に身を寄せる。そこには、供奉院亞里沙や校条祭、草間花音、魂館颯太、寒川谷尋だけではなく、エンドレイヴを失った篠宮綾瀬やツグミもいた。
 桜満集は彼女たちに恙神涯が死んだことを告げる。その受け取り方は人様々だ。それに、いまは故人の思い出にひたっていられるほど、安穏とした状況ではない。まずは生き残るための方法を考えなければならないのだ。

 しかし、普通の高校生として生きてきた生徒たちに、その方法を自分で見つけろというのも無理難題だ。彼らは当たり前のように責任者を探し、その人物を問い詰めることで自体が打開できると信じる。その矛先が向けられたのは、恙神涯の死で放心した供奉院亞里沙だった。
 一方、GHQは茎道修一郎を日本国臨時大統領とし、嘘界=ヴァルツ・誠を特殊ウィルス災害対策局長として、天王洲第一高校を含む封鎖地域に対し、浄化作戦を決行しようとする。そこには、彼らに協力しているかに見える桜満春夏の姿もあった。

 戦う術を失い、しかし立ち上がろうともがく篠宮綾瀬。非日常の中にあって日常を失わず、自分の想いに真っ直ぐに生きる校条祭。初めて依存しかけた相手を亡くし、精神の均衡を崩し始める供奉院亞里沙。彼女たちの選択は、閉塞した事態を動かすきっかけとなっている。

ギルティクラウン レクイエム・スコア II

わたしがなりたかったもの
評価:☆☆☆☆★
 準天頂衛星を使用した地上攻撃兵器ルーカサイトの大半を撃破し、葬儀社の恙神涯と特殊ウィルス災害対策班長の嘘界=ヴァルツ・誠の交わした契約により、GHQ「アンチボディズ」のデータベースから桜満集に関する情報は削除された。だが、GHQに狙われることはなくなっても、周囲の噂を一夜にして消し去ることは出来ない。天王洲第一高校に復帰した桜満集は、好奇の目にさらされる。そこを助けてくれたのは、生徒会長の供奉院亞里沙だった。
 一方、ルーカサイト攻略で打撃を受けた葬儀社は、頼みの綱だった海外からの補給ルートも絶たれ、次の手を模索していた。そこで候補に挙がったのが、日本の流通大手の供奉院グループだ。恙神涯は供奉院亞里沙の持つヴォイドを見抜き、それを利用しようとする。

 復学した学校では、校条祭が桜満集を見ながらやきもきとしていた。人に馴れないはずの集と楪いのりとの距離が縮まっているような気がするのだ。そんなとき、集が映研の合宿での大島行きを提案してくる。

 アニメ「ギルティクラウン」を恙神涯の視点でノベライズした作品。アニメの第7話〜第12話に相当するエピソードを扱っている。
 今巻で注目すべきは、桜満春夏、供奉院亞里沙、校条祭ら女子キャラの心理描写である気がする。彼女たちの行動の裏にはどんな感情と事情が潜んでいたのか、その多くが明らかにされ、後の彼女たちの行動に説得力を与えてくれている気がする。

ギルティクラウン レクイエム・スコア I

崩壊した東京での邂逅
評価:☆☆☆☆★
 アポカリプスウィルスという、擬態性の高いウィルスのパンデミックとそれに続くテロにより、日本政府は事実上、壊滅してしまった。そこに在日米軍が内政干渉し、その後、国連平和維持活動として事後承認させ、日本をGHQの管理下に置いてしまう。彼らの力の源泉は、アポカリプスウィルスのワクチンだ。
 統治能力を失くした政府に代わりワクチンを提供するGHQは、政治に対するあきらめを抱えていた日本人の多くに、おおよそ好意的に受け入れられた。しかし、日本の独立を求めて活動する集団も存在する。その一つが葬儀社だ。

 葬儀社のリーダーである恙神涯は、楪いのりに命じて、GHQ管理下にあるセフィラゲノミクス社の研究施設から、ヴォイドゲノムというウィルス兵器を奪わせる。ヴォイドゲノムは、ヴォイドと名付けられた心のかたちを顕現させる能力を持つ。それを手に入れるのが恙神涯の目的だったのだが、脱出時のトラブルで、それは天王洲第一高校に通う普通の学生である桜満集が手に入れることになってしまった。
 日本代表たる技術顧問・桜満春夏を母親に持つものの、本人はウィルスともテロとも無縁な学生のはずだった。しかし、いのりと、そして涯と出会ったことで、彼の日常だった校条祭や魂館颯太、寒川谷尋などとは離れ、篠宮綾瀬やツグミ、城戸研二らという葬儀社のメンバーに接することになる。そして、GHQの特殊ウィルス災害対策局「アンチボディズ」の茎道修一郎や嘘界=ヴァルツ・誠と関わることになるのだった。

 アニメ「ギルティクラウン」を恙神涯の視点でノベライズした作品。アニメの第1話〜第6話に相当するエピソードを扱っている。
 アニメでは桜満集視点で描かれるため桜満真名が登場するまでに時間がかかるのだが、恙神涯視点では冒頭から明らかにされるため、違和感を感じることもあるかもしれない。逆に言えば、葬儀社のリーダーではなく、人間としての恙神涯の姿が見られるということでもある。

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