ストレンジムーン (3) 夢達が眠る宝石箱
- 評価:☆☆☆☆☆
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ストレンジムーン (2) 月夜に踊る獣の夢
- 評価:☆☆☆☆☆
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ストレンジムーン 宝石箱に映る月
- 上書きされる関係
- 評価:☆☆☆☆☆
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水門市の高校に通う月代玲音は、義理の妹の月代香恋と二人で暮している。幼なじみの文槻クレアや高校からの友人の胡桃沢姫想華、宗方英太郎と共に紅街中華街の洋菓子店へと出かけたところ、突如の爆発と共に発生した光る泡に触れ、一時失踪してしまう。
キャラバンの沈黙の山之内派に属する羽矢多寿宗は、嘆きの祭夏老の孫娘である周皓月の脅迫され、紅街中華街にある嘆きの祭夏老派の中華料理店で爆破事件の片棒を担がされる。ところがそれは、派閥内勢力争いの取り込み策ではなく、彼らが秘匿するマリアンヌの宝石箱を強奪するための企みだったのだ。
解放されたマリアンヌの宝石箱が封じていたのは、金の記憶の彫刻師リコルドリクの力により後世に残された、かつてキャラバンと争った皇帝ブロスペクトとその部下の力と記憶をもつ石だ。そしてそれは一時失踪した人々に埋め込まれ、記憶の覚醒を待つ状態になる。
一週間後、月代玲音のバイト先の店主である十和田静枝に保護されていた月代香恋と再会を果たすことが出来た月代玲音だったが、彼に宿った記録者の石を狙う人々が現れ、文槻クレアがキャラバンの重鎮の親族であり、友人の小泉亜里亜や山路鉄舟がその護衛だったことを知るのだった。
「パラサイト・ムーン」の十年くらい後の世界が舞台となっており、成長した希崎心弥や露草弓もちょっとだけ顔を出す。
輪環の魔導師 (10) 輪る神々の物語
- フィノ最強伝説
- 評価:☆☆☆☆★
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聖教会の聖人クラニオンが聖神イスカに取り込まれ、周囲の人々を自身と一体化させ始めた。クラニオンの恋人アーシェと神官ジュリ・ファイナットは、人々を解放するため、聖都からの脱出を試みる。一方、イスカの力を取り込みたい魔族の主ウィスカは、サイエントロフの内乱から北天将ルーファスらを引き上げ、聖都へと向かう。
その頃、大罪戦争の英雄たちの魔道具を手に入れ、豆の神ボルアルバを吹き飛ばしたセロとフィノ、アルカインたちは、武人ホウジョウから聖都の混乱を聞く。ついでに、ホウジョウの娘だったシズクは、アルカインとの仲をあること無いこと吹き込み、血の嵐が吹き荒れる予感を起こさせるのだった。
シリーズ最終巻。「パラサイト・ムーン」とのリンクも明示され、そういう意味で輪環は閉じたことになっている。
今回の最強キャラは、どう考えてもフィノだろう。
源氏物の怪語り
- 変わらぬ人の絆
- 評価:☆☆☆☆☆
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源氏の物語を著し宮中にその才を認められた藤式部には、他人には言えない秘密がある。それは、娘の賢子の体を借りて、時折、亡くなった姉が降りてくることだ。それなりに世に認められた自分を子供扱いする存在が身近にいることは、疎ましくもあり、心強くもある。例えそれが、あやかしと呼ばれる存在であったとしても。
藤式部はそれを人に言うことはないが、彼女の言動が伝えることもある。そんなわけで、藤式部のもとには、まれにあやかし絡みの相談が持ちかけられる。中宮彰子に仕え始めたばかりの若い伊勢大輔からは、夢に見る櫻の巨木と蜘蛛の相談が。恋多き女である和泉式部からは、夢枕に立つ男の相談が。もうすぐ帝の子を産む中宮彰子の悩みに寄り添い、赤染衛門の後悔はきっぱりと切って捨てる。しかしそんなかりそめの平穏も、昔からの付き合いである藤原公任が連れてきた陰陽師、安倍吉平の長男である安倍時親により、壊されそうになってしまう。
平安時代、紫式部と夭折した彼女の姉との結びつきを通じて、同時代に生きた女たちのあり方を描く。主人公は紫式部のはずだが、中宮彰子が中心であるような印象も受ける。そんな、彼女を取り巻く空気感をうまく写し取った作品であると思う。
輪環の魔導師 (9) 神界の門
- 様々な再会
- 評価:☆☆☆☆★
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魔族の主ウィスカに捕らえられたセロとフィノだったが、還流の輪環がクラムクラムの羅針盤に触れた結果、誰も望まぬタイミングで神界への門が開いてしまった。そしてそこから現れた神と呼ばれていた怪物たちは、自らをボルアルバの眷属と名乗り、セロをアラクナと契約した民の血族と呼んで襲ってくる。
一方、楽神シェリルたちのもとにもボルアルバの眷属は現れていた。そして彼女たちに、ボルアルバの敵か味方かを問うのだった。
しばらく間が空いていたので、前巻がどういう展開だったのか思い出さなければならなかった。セロとフィノは魔族に捕まり、アルカインとホークアイは地下神殿に閉じ込められ、シズクやシェリルたちは聖教会のロンドロンド騎士団との戦いが決着したところ。
そして今巻の展開には様々な再会がある。探していた人物との再会、肉親との再会、過去の友人との再会、そして敵との再会…。全ての物語の原因は、大罪戦争の頃にまで遡るようだ。
輪環の魔導師 (8) 永き神々の不在
- 思惑が交錯し作り出される現状
- 評価:☆☆☆☆★
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聖教会配下のロンドロンド騎士団による虐殺を止めるために、アルカインやセロたちは魔族たちを助ける形となった。彼らが激闘を繰り広げる側では、南天将デルフィエと工人ナボールの対決も続く。
六聖人の関係に配慮して戦闘に直接的に介入できない楽人シェリルたちだが、その配慮をあざ笑うかのように、竜人カルドラが介入してくる。そしてついに登場した魔族の主ウィスカと、セロやフィのとの関係が明らかになり始める。
遥か昔の大罪戦争から引き継がれた因縁と、過去の研究者の業、そして不思議な力を持つ存在たちが絡み合って作り出された現在の状況が描かれます。物語は佳境に差し掛かります。
ただ、今回は戦いの状況を複雑に作りすぎて、それを描写するテンポがあまり良くなかったかもしれないとは思う。次巻は今回に比べて何やら派手な展開になりそう。
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陰陽ノ京月風譚 (2) 雪逢の狼
- 妖と人に結ばれる様々な関係
- 評価:☆☆☆☆☆
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賀茂光栄を主人公とする、陰陽ノ京のスピンオフ第2弾。今回は慶滋保胤と伯家時継も彼と絡んで登場するので、前作よりは本編に近い感じがする。また、個人的に裏の主役と思っている、安倍吉平と佐伯貴年の関係性も織り込まれている。
安倍晴明が出向いた摂津の地で封印を解かれた狼の妖、白山は、京に赴き、陰陽寮の道士たちを襲い始める。そして、道士たちが警戒する京で怪しげな動きをする外法師、水魚。二十数年前に現在の安倍晴明に匹敵する力を持ち、藤原純友の乱の影にあって当時の陰陽寮と対立した彼は、いまはまた、左大臣を襲った外法師、守屋八尋とも関わりを持っていた。
現在の白山を突き動かす、二十年以上前にあった、一人の外法師との関係。その想いを知った光栄の取る解決法は、彼の風体や行動とは逆に、とてもやさしい。
自らの楽しみのために他人の想いすらももてあそぶ強力な敵と、それに対峙する陰陽寮の若き道士たちという構図が明らかになった。今後は、本編の人間関係を織り込みながら、貴族社会における陰陽寮という枠組みの中で、彼らがどの様に動いていくのかが楽しみだ。
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輪環の魔導師 (7) 疾風の革命
- 小さな火種が大きな戦火へ
- 評価:☆☆☆☆★
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「魔族」対「六賢人」という分かりやすい構図から、「魔人の弟子&楽人」対「聖人&工人」という六賢人内部の対立に変化してくることで、どちらが正義でどちらが悪というような二元論ではなく、単なる利害対立の様相を呈してきた。その対立の背景には、数百年も前の大罪戦争で起きていた何かがある模様だ。
そんな利害対立の問題だけでなく、アルカインたち一行が訪れる大国サイエントロフでは、人種対立による統治の歪みまで起きていて、内乱までもが彼らの行動の中に組み込まれていく。
物語の中核にある大罪戦争、その真実への扉の鍵を握るセロは、いつもの様にフィノに過保護にされ、今度は楽人シェリルにまでおもちゃにされる始末。その結果は扉絵でご覧あれ。
物語は、ヒーロー登場というところで次巻に続きます。
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黒方の鬼 陰陽ノ京月風譚
- 死してなお残る想いのそれぞれ
- 評価:☆☆☆☆☆
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「陰陽ノ京」のスピンオフ作品なので、慶滋保胤は最後の方でチラリと顔を見せる程度、伯家時継にいたっては名前が挙がるくらいのもの。本作の主人公は、保胤と同年の甥である賀茂光栄、そして陰陽生の住吉兼良である。
安倍吉平が佐伯貴年と夜釣りに行った帰り道で偶然見つけた、左大臣藤原実頼を害するための呪符。陰陽頭である賀茂保憲は、これをきっかけとした政変を防ぐために、光栄を護衛に遣わす。彼が訪れる先で見たのは、実頼を護るために鬼と戦う、異国の血を引く女性だった。
本編に比べて、貴族の世界に近い話になっている。その分、自由度は低くなりそうなのだが、光栄が奔放な性格なので、堅苦しさはあまり感じない。また、ちまちました謀略的な部分を嫌う彼の性格を、兼良が補っている感じがする。
鬼に襲われる貴人と二人の女性、そして過去の戦乱などが絡み、しっとりとした物語になっている。
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輪環の魔導師 (6) 賢人達の見る夢
- 魔族よりもたちの悪い敵
- 評価:☆☆☆☆★
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繰り返す歴史という考え方といい、世界観といい、前作と何か少し似てきたような気がしなくもない。同じ様な生活を続けていると、考え方も固定されて来ちゃうのかなあ、と思ったり思わなかったり。
じゃあつまらないのかというと、そんなこともない。今回も訳あって舞台は王都のままなのだが、六賢人は舞台に上がってくるし、魔族じゃない敵も出てくるし、話は盛り上がってきている。風呂敷はほぼ広げきった様な印象があるので、後はこれを上手くたためるかに物語の出来がかかってくるだろう。そのあたりは実績があるので無難にまとめてくると思うけれど。
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輪環の魔導師 (5) 傀儡の城
- 勧善懲悪からの転進
- 評価:☆☆☆☆☆
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ルスティアナたち魔族に捕えられたセロとフィノ。彼らを奪還するために戦力に劣るアルカインたちがどう立ち回るか、というのがあらすじです。これまでと大きく違うのは、セロが魔族側で行動しているため、魔族の論理に従ってお話が展開されるところ。だから、前巻までは一方的な悪者として描かれていた魔族たちが、妙に人間臭く、かわいらしく描かれています。
過去の出来事とセロたちの関連性、六賢人たちの現実、少しずつ物語の裏側に秘められていたものが表に顔を出してくる。王都奪還編は今回で完結、物語の世界は辺境から中央へと広がっていきます。
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輪環の魔導師 (4) ハイヤードの竜使い
- あれだけ囲われたら、普通はまっすぐには育てない
- 評価:☆☆☆☆★
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敵地を目の前にして、第三極の人間も登場し、風雲急を告げるといった状況のはずなのに、セロをめぐる鞘当てが激化。猫まっしぐら的に、前しか見えていない一途な人間は恐ろしい…優先順位を消して見失わないという利点はあるけれど。
魔族とは何なのかという全容は全く見えないけれど、視点が少しずつ、局地的な現象から広い方向へ向かい始めている印象を受ける。メチャクチャ売れる!という派手さは全く感じないのだけれど、はずさない安心感はある。
最後の引きがすさまじいので、早く続刊を。展開の途中で切れるのが嫌な人は、次の巻が出るまで読むのを待った方が良いかもしれません。
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空ノ鐘の響く惑星で (12)
- 幸せな箱庭
- 評価:☆☆☆☆☆
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RPGのエンディングみたいだ。第一の感想はそれ。良いとか悪いとかではなく、そう感じた。
いつの間にやらパンプキンが一番かっこいい役回りを演じていますね。道化師みたいなのに。仲間を優しく見守って、戦って、そして一人静かに去っていく。いったいどうしてあのカボチャをかぶることになったのか良くは分からなかったけれど、なぜ被り続けていたのかだけは良くわかった気がする。これからも、子供の笑顔のあるところにあの道化師は現れ続けるのでしょう。。
しかし、フェリオのあっけらかんとしたあの選択はいったい…。周りが色々悩み続けたのをあっさり飛び越えていってしまいましたよ。神速の手腕がこんなところにも発揮されるとは…な最終巻でした。。
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空ノ鐘の響く惑星で (11)
- 素直になれないという葛藤
- 評価:☆☆☆☆★
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今回は最終幕に向けてそれぞれの心の整理に費やされた感じがします。リセリナが、イリスが、それぞれの心の内をさらしています。ですから、比較的静かな展開で、あまり派手な戦闘シーンはありません。ちょっと寂しい?
思えば遠くに来たもんだ、で11巻。最後はどういう風にまとめるんだろう?…しかし、オビが少しネタバレじゃありません?
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