和智正喜作品の書評/レビュー

ドレスの武器商人と戦華の国

戦場の白き花
評価:☆☆☆★★
 かつて、百八柱の神々が大地の神と空の神に分かれて争った時、その戦場である<ニフドの原>に現れたのは、調停の女神セイジアと五人の眷族たる天使だった。彼らは神々に武器を与えて争いを激化させ、創造神パコの怒りを買い、深紅のドレスから純白のドレスに代えられ、武器と殺戮の女神とその眷族たる悪魔として地下に堕とされた。
 そして現在。小国から構成されるエイジャ王家の直轄地であるアンザにおいて、ヒキヤ・ゴッゾォ率いるキルガ軍とガラル・テンドウ率いるリクレア軍が衝突する戦場に純白のドレスを着た少女セイジアが現れ、王家公認の特級商人として武器を売り始める。その武器は普通の武器ではなく、悪魔の名を冠する強力な<封隕武器/アーティクル>だ。

 師匠の遺言でセイジアの護衛を務めることになった少年剣士トーマだが、自身の両親が<封隕武器/アーティクル>により殺されているため、セイジアのような武器商人を許容することができない。<鋼砂>の鉱脈を巡って他国に直轄地を荒らされる守護代の少女エトワ・アンザに同情しつつ、セイジアを止めようとするトーマだったが、セイジアは両軍を競わせるように、次々と強力な武器を売りさばいていく。

消えちゃえばいいのに

一人のために多くが死ぬ
評価:☆☆☆★★
 ある日突然、何の前触れもなく、織部南高校美術部の朝倉一樹は4人の女の子から告白を受けた。引っ込み思案な巴真澄、モデル体形でさっぱりした性格の岸川乙女、フェミニンな蒼井さくら、真面目な部長の遠野奈緒子。いずれも同じ美術部の少女だ。そしてその直後、二階の窓から陸上部の先輩・三矢優が降ってくるという経験をすることになる。
 一樹が気づくと誰もおらず、そのまま家に帰ったところ、夜になって告白した4人の子が、それぞれ料理の材料を持ってやってきた。結局、彼女たちを泊めることになるのだが…。そして翌日、昨日の昼ごろに、唯一の肉親にして有名な画家である祖母・朝倉貴理子が、検査入院したはずの病院の駐車場で亡くなったという連絡を警察から受けるのだった。

 その後、一樹の前に現れたのは、死神を名乗る少女モル。彼女は一樹に100名の名前が書かれた名簿を渡し、これからこの人たちが一樹のために死んでいくと告げる。そして実際、次々と殺人事件が起きていく。
 何が何だか状況がつかめぬまま、モルが告げる死者の名前を聞いているだけしかなかった一樹の前に、友人にして天才の西島俊作が、名探偵よろしく現れる。

 冒頭の展開からハーレム系ラブコメを思わせるのだが、ちっともそんな風にはならない。ただひたすら、たくさんのモブキャラたちが惨殺されていくのだ。そしてそれが一樹に何らかの関係がある人物だということを、死神モルが伝えていくのだ。
 一体誰が犯人なのかというミステリーめいた解法が使える事件は、おそらく1ケースしかなく、でも大体誰が犯人なのかは何となくわかっていく。最大の謎は動機なのだろうが、こればかりは論理的に解き明かすことは出来ない。

 というわけで、凡人のボクにはあまり理解できない作品だ。各シーンの意味は分かるのだが、結局、背景設定の説明をおざなりにしたまま、映像的美しさを優先した様な終わり方にしているので、本質的に何をやりたかったのかをはっきり理解することが出来なかったのだ。
 しかしそれも当然であることは、あとがきを読んで分かった。本来やりたかったことを技術的に実現できず、その出がらしだけで物語を構成したから、何がやりたいのか分からなくなったのだ。ダメだと思ったら、それはボツにする。そういう勇気も時には必要だと思う。

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