藍本松作品の書評/レビュー

保健室の死神 (10)

報いが訪れる瞬間
評価:☆☆☆☆☆
 派出須逸人、伊賦夜経一、蛇頭鈍と同級生だった荊真理也と、弟の荊明羅が作り上げた、「普通」ではない人々の互助団体SICKsは、明羅の手によっていつの間にか変質し、常伏町に災厄を招く存在となってしまった。
 明羅の病魔で中学時代のきっかけの記憶を失くし、病魔と闘う意志を失くしてしまった逸人だったが、彼に宿る病魔・冷血のフォローもあり、その記憶を取り戻すことに成功した。だがその頃、敵はユグドラシルから盗んだ病魔を取りだす方法を知り、それを街の人々にばらまこうとしていたのだ。

 完結編。最終章は、ジャンプ本誌には掲載されなかった、5年後の常伏中学の様子が描かれる。5年前の主役たちのその後も分かるし、当時小学生だった子どもたちが、今度は物語の主役になっている。
 異能バトルの部分や、明日葉の活躍の部分はきっちりと少年漫画だったのだが、主人公である派出須逸人の戦う理由はともかく、彼の葛藤はあまり少年っぽくなかったかもしれない。逆にここに注目して、青年誌でやった方が受けるネタだったのかもしれないとも、今更ながら思う。


保健室の死神 (9)

ここがスタート
評価:☆☆☆☆★
 病魔・忘失の力により記憶の一部を失った派出須逸人は、病魔・冷血の力に振り回され、養護教諭としての仕事も果たせなくなっていた。
 逸人を心配しながらも、抽出銃を奪われたために打つ手がない蛇頭鈍や三途川千歳を見て、何かをしたいという思いに駆られた明日葉郁は、友だちに助けを求め、抽出銃の奪還に臨むのだった。

 後半は中学時代の逸人たちの姿と、冷血との付き合いの始まりが描かれ、また、お正月ネタの番外編も収録されている。

 鈍は逸人に冷血を手放させることを目的にこれまでがんばって来たけれど、今回疑似的に、冷血を手放した逸人がどうなってしまうのかを体験させられた。その結果として彼女が下す判断は…。

保健室の死神 (8)

はじまりにつながる最大の事件
評価:☆☆☆☆☆
 派出須逸人が保健室から追い出される?新任のカウンセラー・絶花療治に保健室が乗っ取られた。しかもカウンセリングは毎日生徒が押し掛ける人気状態。その様子を見て、逸人は自ら身を引く決意を固めるのだが…。

 卑川操のちょっとした冒険や、またもや才崎美徳とくっつけようと画策する三途川先生の悪戯などの一話完結ものに続いて、大長シリーズとして、逸人とクルエルの出会いとも関係した、街全体を巻き込む大事件が勃発する。
 彼の周囲の蛇頭鈍や伊賦夜経一も巻き込み、これまでで最大のピンチが訪れる。

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保健室の死神 (7)

暴走する運動会
評価:☆☆☆☆★
 常伏町内の運動会に、派出須逸人たちも参加することになる。子どもたちはフェアに競争しているのだが、大人たちが意地の張り合いと、謎の資金提供者が現れた関係で、運動会は混沌とした展開になってしまう。

 妹尾家の四女・雀が弟を相手に引き起こす騒動や、三途川千歳の謎に明日葉郁と鏑木真哉が迫るエピソード、ハデス先生についている病魔クルエルの暴走を治めるために保健室が騒動になる話、才崎美徳の双子の兄が登場する話などを収録している。

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保健室の死神 (6)

美徳と鈍のサービス
評価:☆☆☆☆☆
 プール開きに、温泉旅館に、トラブルメーカー安田貢広が暴走する。そしてついに彼にはある罰則が…。ハデス先生、携帯電話を買いに行く、ハデス先生のおつかいなど、日常的な出来事が描かれる回と、占い師・卑川鉄生の子供、操が再登場するなど、イベント的な回の両方が収録されています。

 今回もじんわりと面白いストーリーがたくさん。派手さや華々しさ、ある意味でのメジャー感はないのだけれど、ちょっとはみだしたキャラクターたちが紙面いっぱいに飛び跳ねます。
 あとは、モブキャラと他のキャラの雰囲気がもう少し似ていれば、変な違和感がなくなるのだけれど。

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保健室の死神 (5)

ひとつのことだけに囚われてしまった者の末路
評価:☆☆☆☆☆
 球技大会、健康診断を挟んで、サロン・ユグドラシルの鈍と経一も登場する、長所を見る占い師のシリーズが始まる。
 明日葉や美作、藤麓介や鏑木真哉たちが出かけた評判の占いの館。見料無料というちょっと怪しい雰囲気に不安を感じたハデス先生は、その占い師に会いに行く。だがその占い師は、ハデス先生と同じ罹人だった。

 ハデス先生と同様に病魔を仕事に利用する占い師に遠慮してしまい、彼はせっかくの病魔退治のチャンスを逃して、子どもの操と共に逃走されてしまう。その結果、生徒たちが危険な目に会うことに。
 そして同じ頃、件の占い師を怪しく思っていた鈍も動き出していた。

 才能の与えられた部分にのみ固執してしまい、それ以外の全てを否定して暴走してしまった罹人の卑川鉄生。そのために、既に手に入れていた大切なものを取り返しがつかないほど傷つけてしまう。
 病魔を利用しているという根本的なところでは、彼とハデス先生との間に違いはない。ただ傷つける対象が他人か自分かの違いだけだ。本人にとってはそれで納得できることなのかも知れないが、その人を大切に思う人にとって見れば、それは黙って見過ごせるものではなく、何とか救い出そうと手を差し伸べる。そんな人を思いやる入れ子の構造と、それだけでは表現しきれない複雑な感情がここにはあるように感じる。

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保健室の死神 (4)

1枚の絵が伝えるもの
評価:☆☆☆☆☆
 藤麓介の実家の事情を描いたエピソードや、ハデス先生の友人である鈍や経一たちの職業を描くエピソードなどを収録。

 個人的には、藤くんの兄の過去の一幕を描いた扉絵が好き。これ1枚で、当時の楽しさや反面の葛藤なんかが感じられる気がする。

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保健室の死神 (3)

中学生の世界だからこそ起きる騒動
評価:☆☆☆☆★
 面倒を避けて誰も関わろうとしてくれないハデス先生に対して、藤たちの担任でもある才崎美徳先生が真っ向勝負を挑むのだけれど、一方は熱血で空回り気味、他方はわが道を行く奇行の連続で全くかみ合わない。そんな状況とは全く関係なく、生徒たちのささやかな欲望に反応して、病魔たちは騒ぎを巻き起こしていく。
 ハデス先生自身が解決に向けて動くパターンと、生徒たちが事態を収拾するための道具としてハデス先生が利用されるパターンがあって、病魔という設定が物語に与える縛りも小さいから、バラエティ豊富な展開が可能になっていると思う。

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保健室の死神 (2)

サポート役のヒーロー
評価:☆☆☆☆★
 鏑木真哉と周囲の人物が物語の中心にいるため、アクション多めのストーリーになっている。その合間合間で様々なパターンのストーリーが入るので、色々と試行錯誤している感じがする。
 でもやっぱり、先生よりも生徒が中心になっていることは変わらない。大人は子供のサポート役という感じなのかな。

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保健室の死神 (1)

ゆっくりと伝わっていく
評価:☆☆☆☆★
 人間の心の弱さや負の感情を糧にして活動する「病魔」に罹る中学生と、それを喰らい尽くす力を持つ養護教諭の交流を描く物語。1巻は、外見がホラーなため生徒に避けられる養護教諭、派出須逸人が、病魔に罹った生徒を助けていくことにより、少しずつ周囲に生徒が集まっていく過程となっている。
 ヒーロー物はどちらかというと助ける側の視点で描かれることが多いと思う。しかしこれは、病魔に罹る過程や生徒たちの心情が中心になっていて、引き起こされる事件は派手なのだけれど、その根底にある原因は誰でも経験したことがあるような心理なので、身近に感じられるかもしれない。だがその分、一気にではなく、ジワジワと面白さが積み重なっていく感じなので、ボクの"面白い"の閾値を超えるまでには結構時間がかかった。

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