赤坂アカ作品の書評/レビュー

さよならピアノソナタ (2)(杉井光)

開かない心の扉
評価:☆☆☆☆★
 幼なじみの相原千晶が所属する民族音楽研究部の部長である神楽坂響子にけしかけられて、ベースギターを手に入れた桧川直巳は、有名なピアニストなのにピアノを弾かない蛯沢真冬にロックを認めさせるため、勝負を挑むことになった。しかし、真冬を何気ない言葉で傷つけてしまったことにショックを受け、ベースの練習をやめてしまう。
 そんなとき、彼の部屋にやってきたのは相原千晶だ。そして、またもや神楽坂響子の仕掛けで、真冬に挑む気持ちを思い出す。どれだけ突き放してもまとわりついてくる直巳に、真冬も他の人間とは違う印象を彼に感じ始めるのだが…それは破局の序曲に過ぎなかった。

 「さよならピアノソナタ」のコミカライズ版だ。


さよならピアノソナタ (1)(杉井光)

音楽が導く出会い
評価:☆☆☆☆☆
 コードウェイナー・スミス「ノーストリリア」に登場する<心からの願いの百貨店>にちなんで名づけた粗大ゴミ置き場で、桧川直巳は蛯沢真冬に出会った。粗大ごみになったピアノと周囲のごみたちが共鳴し、彼女の弾くピアノはオーケストラみたいに聞こえた。
 その彼女が直巳の学校へ転校してきたことで、様々な物事が動き出す。世界的に有名なピアニストのくせに何故かピアノではなくギターを弾く彼女は、直巳がコツコツと作り上げた聖域を奪い、そこをギターの練習場にしてしまったのだ。

 おめおめと負けてそのまま退場するかに見えた直巳だが、幼なじみの相原千晶が所属する民族音楽研究部の部長・神楽坂響子にけしかけられ、バカにされたロックを見直させるため、ベースでもって真冬に勝負を挑む!

 原作の詳細部分はばっさりといきながら、ナオと真冬、神楽坂先輩たちとの出会いの場面を抽出した、すっきりとした構成になっている。普段は細めの線なのに、真冬がギターを弾いているシーンの荒々しさは、よく感情を表現している気がする。まあ、いろいろと荒っぽいところもあるけど…。

 原作は、杉井光「さよならピアノソナタ」。これはとても好きだし、良い作品だと思うんだけど、アニメ化されないのは音楽著作料の関係だったんだね。
 なお、裏表紙に田口囁一の描いた蛯沢真冬のイラストが掲載されている。

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