新川直司作品の書評/レビュー

四月は君の嘘Coda

評価:☆☆☆☆☆


四月は君の嘘 (11)

やはりそうかのエンディング
評価:☆☆☆☆☆
 ほのめかされてはいたけれど、やはりそうかのエンディング。

四月は君の嘘 (10)

追いかける一歩
評価:☆☆☆☆☆
 音楽科のある高校へと進学するための実績を残すため、東日本ピアノコンクールへと挑む有馬公生。一方、宮園かをりは再びステージへと立つため、手術とリハビリを決意する。
 有馬公生の近くにいるために受験勉強を始めた澤部椿だったが、宮園かをりのお見舞いに向かう有馬公生を見るたびに、その胸は締め付けられるのだった。

四月は君の嘘 (9)

キツイ一発
評価:☆☆☆☆☆
 病気に負けて満足してふりをして夢を捨てようとする宮園かをりにキツイ一発をお見舞いするため、有馬公生は相沢凪に頼み込み、胡桃ヶ丘中学音楽科の学園祭で連弾をすることを頼み込む。
 一方、それを受け入れた相沢凪は、初めて寝食を忘れてピアノに打ち込む生活の中で、彼女の兄や、有馬公生のいる世界を垣間見るのだった。

四月は君の嘘 (8)

怪しい目論見
評価:☆☆☆☆☆
 入院した宮園かをりを見て、有馬公生は何故か不安な気持ちになる。そしてそんな有馬公生を見て澤部椿は不安になる。ピアニストとして再起した彼が自分の前から消えていく様な気がするのだ。
 有馬公生が師事する瀬戸紘子のもとを、胡桃ヶ丘中学音楽科一年の藍里凪が訪ねてくる。瀬戸紘子の大ファンだと自称する彼女は弟子入り志願をするのだが、その演奏には怪しい怒りが籠められており…。

 新キャラを投入したことが上手く機能しているみたい。

四月は君の嘘 (7)

表現者の誕生
評価:☆☆☆☆☆
 藤和音楽コンクールのガラコンサートにヴァイオリニスト女子中学生の宮園かをりの伴奏として出場した有馬公生だったが、当の本人がやって来ない。本来ならば棄権すべきところなのだが、宮園かをりの音楽を馬鹿にされた有馬公生は、伴奏だけで演奏を開始する。
 かつて人間メトロノームと呼ばれた演奏に始まり、母親の亡霊に脅かされてボロボロになった有馬公生だったが、母親の真意に触れ、自らの音楽を取り戻す。そして、母親に別れを告げ、自分の道を哀しみと共に歩み始めるのだった。

 そして、文句を言うために宮園かをりに会いに行った有馬公生が見た光景とは?

 井川絵見や澤部椿という女子たちも、有馬公生に関して新しい一歩を歩み始めます。ちょっと泣ける話だな。

四月は君の嘘 (6)

ピアニストの原風景
評価:☆☆☆☆☆
 藤和音楽コンクールのガラコンサートに主催者招待枠で出場できることになったヴァイオリニスト女子中学生の宮園かをりは、堕ちた天才少年ピアニストである有馬公生を再び伴奏者として指名した。そしてその曲目は、クライスラー「愛の悲しみ」だ。
 母親の親友であったピアニストの瀬戸紘子に師事し、再びピアニストとしての道を歩む決意をした有馬公生ではあったが、その曲目、特にピアのように編曲されたラフマニノフ版の「愛の悲しみ」は、あまりにも母親を思い出させるものであったため、思うように弾けない。

 深く仄暗い水の底で、聞こえないピアノの音にもがき苦しむ有馬公生だったが、彼を呼ぶ声に耳を傾け、ふと、目を見開いてみると、暗い水底にも届く光があると言うことに気づくのだった。
 そして開催されるガラコンサートなのだが、思わぬアクシデントが発生する。

 ピアニストには原風景となる初めてのピアノというものが染みついているのだろうか?「ピアノの森(一色まこと)」において主人公のカイの原風景は森のピアノにある。それが焼けて失われても、その音は常に彼を導いていた。
 本作に於ける有馬公生の原風景は、母の弾く「愛の悲しみ」だ。戻りがたい気持ちの壁を乗り越え、そこに戻って初めて、人間メトロノームではない、彼自身の音を見いだすことができる。外からのピアノの音は聞こえなくても、内から鳴り響く音は彼を優しく包み、それがピアノの音となって聴衆の心をとらえていく。

四月は君の嘘 (5)

ピアニストとしての再誕
評価:☆☆☆☆★
 宮園かをりに尻を蹴り飛ばされて出場した毎報新聞社主催の毎報音楽コンクールで、かつての天才少年ピアニストである有馬公生は、幼馴染の澤部椿や渡亮太、小学生時代のライバルであった相座武士や井川絵見が期待して見守る中、ついに演奏順を迎えた。最初の演奏曲は、人間メトロノームの異名のごとく無難に演奏したものの、次の演奏曲では亡くなった母親の幻影が現れ、音が聴こえなくなってしまった。
 次々と音がこぼれおち、ショパンの原曲とは似ても似つかない荒っぽい演奏に、有馬公生を神聖視していた相座武士は失望の色を隠せなくなっていく。だが、未だ、他の誰も知らない有馬公生の復活を願う井川絵見と、そして宮園かをりが期待を込めて見つめる中、一度演奏を中断した有馬公生は、自分がピアノを演奏する理由を見出し再誕するのだった。

 演奏が終わり、有馬公生の母親の友人であったピアニストの瀬戸紘子が娘の小春を連れて登場。公生がピアニストとしての道を歩むきっかけとなった出来事が描かれる。そして、藤和音楽コンクールのガラコンサートに主催者招待枠で出場することになった宮園かをりの伴奏者に指名された有馬公生は、何やらいわくのあるクライスラー「愛の悲しみ」を練習することになる。

四月は君の嘘 (4)

繰り返しながら盛り上がっていく
評価:☆☆☆☆☆
 情熱的な演奏をする中学生ヴァイオリニストの宮園かをりに出会った、かつての天才ピアニストである中学生の有馬公生は、毎報新聞社主催の毎報音楽コンクールに出場することになった。幼馴染の澤部椿や渡亮太が見守る中、小学生時代の有馬公生をライバル視していた相座武士の演奏が会場を熱狂させる。
 そして次に登場するのは、有馬公生の演奏を聴いてピアノを志したという井川絵見だ。相座武士と同様の逸材を見られながらも、気分屋のせいで彼に水をあけられてきた彼女は、二年ぶりに感情を込めた演奏を開始する。それは、彼女のピアノを有馬公生が聴くという高ぶりからだった。

 現在の井川絵見の演奏が色づき盛り上がってくる度に、それを裏付ける彼女の感情、幼少期の有馬公生のピアノとの出会いや彼女のピアノにかける想いを、繰り返し繰り返し織りなしていく構成となっている。この構成を、本物の有馬公生の演奏という一つの主題を用いつつ、それに井川絵見の想いという変奏を加えながら解き明かしていくと解釈すれば、とても音楽的であるように感じる。確かに展開はとても遅くなるのだが、これは物語に深みを与えるという意味で、有意義な遅れだ。
 そしてようやく、有馬公生自身の演奏が始まる。それは二年前の演奏の再現から始まり、彼を絶望の底に落とし込んだ瞬間までを繰り返させる。その果てに、新たな、かつて彼自身が持っていた演奏を見つけ出すことが出来るのか。その瞬間が次巻で描かれることを願いつつ、そうしたらこの物語も終わっちゃうんじゃないかなあとも思う。

四月は君の嘘 (3)

音に乗せる自分
評価:☆☆☆☆☆
 破天荒ながら天才的な音楽を聞かせるヴァイオリニスト少女の宮園かをりに魅せられた、元天才少年ピアニストだった有馬公生は、彼女に引っ張り上げられるように、再び、ピアノに向き合う決意を固めた。その第一歩が、かをりが勝手に申し込みをした、毎報新聞社主催の毎報音楽コンクール、一流の音楽家たちの登竜門となるコンクールだ。
 選択課題曲であるバッハとショパンの練習を始める有馬公生だったが、二年のブランクは大きく、昔のピアノすらも取り戻せていない。これでは完璧を超える完璧な演奏などほど遠い。それを見た有馬公生の幼なじみの澤部椿は、宮園かをりに対し、公生にピアノは弾いて欲しいけれど苦しんで欲しくはない、という。

 しかし、当の本人は、新しい自分を見つけ出す産みの苦しみに、意外なほどの充実感を感じていた。友人の渡亮太の中学時代最後のサッカーの試合を、同じく澤部椿のソフトボールの試合を観戦し、自分自身とは何かを感じていく。
 一方、有馬公生が再び表舞台に登場すると知り、歓喜に打ち震える少年少女がいた。相座武士と井川絵見は、有馬公生の小学生時代にコンクールで競い合った(一方的な)ライバルだ。彼らの弾くピアノに、有馬公生は何を感じるのか?

 前巻までよりも青春ものっぽい展開が前面に出て来た。目下の目標であるコンクールに向けてのストーリー展開も飽きさせないものになっているし、妙にライト過ぎないところも良くなっていると思う。

四月は君の嘘 (2)

引っ張り出されたその先に
評価:☆☆☆☆★
 独創的なヴァイオリニストの宮園かをりに強引に誘われ、コンクールの伴奏者として再びステージの上に立つことになった元天才少年ピアニストの有馬公生は、彼を苛む呪縛と戦うことになる。それは、楽譜の通りに引かなければならないという、彼のピアノに課せられた枷。その枷は暴力的なまでに彼を締め付け、ピアノを弾こうとすれば彼の楽譜から音を消してしまう。
 しかしいま、彼はステージの上に一人で立っているのではなかった。未だ中学生ながら、自らの音楽を表現しようという意思を持つ少女、宮園かをりがその背中で彼をリードするのだ。黙って引き下がるわけにはいかない。長いブランクの果てに、手痛い失敗も被りながら、かをりが表舞台に引き戻したソリストの実力とは?

 そんな音楽の世界も描きつつ、音楽という共通言語を持つ二人と、そんな彼らに好意を抱く、しかし音楽とは違う道を行く少年少女との関係を、丹念に描いている。編集部にもずいぶん期待されているのか、だいぶ展開に余裕の感じられる構成だ。
 でもまだ僕にはこの作品から音は見えない。残念ながら。曲ごとの細かい演出が足りないんじゃないのかな?サポートしてくれる人は徹底的に生かした方が良いと思う。

四月は君の嘘 (1)

再生する音楽
評価:☆☆☆☆★
 かつては天才ピアノ少年としてクラシック音楽界の話題をさらった有馬公生は、あるとき、ピアノを辞めてしまう。だが、自覚していない未練が、彼を中学校の音楽室に入り浸らせていた。そんな姿を見るのは、幼なじみの椿には痛い。
 ある日、椿に誘われ、友人の渡に紹介するという名目で、ヴァイオリニストの宮園かをりに引き合わされた公生は、そのまま、ずっと足が遠のいていたコンクールの会場に連れて行かれ、かをりの演奏を聴くことになる。

 コンクールの常識である、楽譜通りに弾くというルールを無視し、曲を自分のものとして慣習を魅了する演奏をするかをりに、公生は興味を抱いてしまうのだった。
 挫折したピアノ少年がヴァイオリン少女との出会いにより再生していく物語なのだと思う。いまはまだ、ようやく一歩を踏み出したに過ぎないけれど。

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