いしぜきひでゆき作品の書評/レビュー

コンシェルジュ (21) (画:藤栄道彦)

自分に出来ることを利用して、自分には出来ないことも実現する
評価:☆☆☆☆★
 アメリカのホテルで研修中の涼子は、コンシェルジュとして自分の進むべき道を見出す。

 全ての人がデキる誰かと同じ様に出来る訳ではない。ある意味では哀しい現実の中で、涼子が見出したのは、自分にできないことはできる人にお願いする。そしてそのためにはデキる人と個人的なつながりを作るということだった。
 自分が持っているものを鍵として、自分が持っていないものを持っている人とつながる。それは最上の持っている手帳が象徴する機能と本質的には同じことだろう。

 他人にやさしくする。それが正しいことだと知っていても、その心理的障壁の高さは意外に高い。だから、誰かにもらった恩を別の誰かに返す。そんなスキームで心理的障壁を低くし、他人に優しくしやすくする理由を与えてくれるのが、この本ではコンシェルジュという存在なのだ。
 また新しいキャラクターがたくさん登場するのだけれど、これで最終巻。この物語はどこかに続くのかな?

 最後に起きる奇跡が最も大きい奇跡だ。

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コンシェルジュ (20) (画:藤栄道彦)

鬼塚がスゴイ
評価:☆☆☆☆☆
 日本とアメリカのサービスの考え方の違いを自分一人で吸収しようと奮闘する涼子。彼女の方法論は、一部で他の人にも良い影響を与え、でも届かない部分もある。そんな彼女の下へ強力な助っ人が訪れる。
 一方日本では、鬼塚と有明の関係に変化が見え始める。なんか鬼塚がスゴイことになっている。

 久しぶりに最上も現場で仕事をしている。
 「お客様がお求めになっているものと、お客さまが本当に必要なもの、これはまれに違う場合がございます。」というセリフはサービスだけでなく政治にも通じるものがあると思った。

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コンシェルジュ (19) (画:藤栄道彦)

伝染していく涼子の奮闘
評価:☆☆☆☆☆
 8割がアメリカ編。涼子がこれまでに学んできたことをアメリカで実践しながら、アメリカとの文化の違いに戸惑いつつも、お客さまの信頼を得ていく。そして、涼子のいない日本でも、少し変化が起きていた。
 日本で起きる事件は最近の傾向どおりビジネス教訓ものっぽいけど、アメリカで起きる事件は以前の様なお客さまとホテルマンの人間関係構築っぽいお話が多い。やっぱり、初めての場所だから、まずは人間関係を築こうという事かな?

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コンシェルジュ (18) (画:藤栄道彦)

今後はどちらを追いかけるの?
評価:☆☆☆☆★
 今回は涼子に関して強烈なテコ入れが入っていますね。彼女のコンシェルジュとしての師匠も、最上から朝霧に移り変わったみたいですし。女性としてのよさをもっと出したサービスを、という方向性を選択したのでしょう。
 作品は、当初の、コンシェルジュの魔法みたいな活躍から、若手サービスパーソンの日々の努力を描くものに変わってきています。

 ところで、作画の方は、各話のページ数に収まり切れないほど、書きたいことがたくさんあるようです。たまに、内容的にはよくても、表現的に展開が分かりづらい描写があったりしますから。まあ、内容が面白いからよいんですけどね。

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コンシェルジュ (17) (画:藤栄道彦)

ちょっといい話(ビジネス編)
評価:☆☆☆☆☆
 第109話は最上の休日編。だが、一人で休日を過ごす話ではない。最上の良さは他人とのコミュニケーションの中に見えるものだから、一人で過ごす姿は、あまり想像できなかったのでしょうね。もしあの悲劇がなければ、自分の子供にあんな話をする日が来たのでしょうか?まあ、他人だからこそ言えることもあるのかも知れませんけれど。
 第113話は外見まで含めて自分だよ、というお話。他人から見えるのは外見しかないのだから、いくつかのアイテムを上手く使いこなして自分のものにする必要がある、と。こちらは水無月が活躍する。誠意というものが何も媒介せずに相手に伝わるのならば、こういうお約束はいらないのかも知れませんけれど。

 この二つのエピソード、前者は全ての存在の一部としての自我の話をしていて、後者はその自我同士がコミュニケートするためのプロトコルの話をしている。こういう視点で見ると、それぞれのエピソードのつながりも見えてくる気がする。
 一見、バラバラなエピソードが積み重なっている様に見えるけれど、これらの話を考えた頃に作者がどんな思想を持っていたか、みたいな視点で読んでも、楽しめるかもしれない。

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コンシェルジュ (16) (画:藤栄道彦)

自分が知らないものを如何にして自分に付け加えるか
評価:☆☆☆☆★
 自分が旅行する場合の宿選びの主なポイントは、安いかどうかだ。これは、ボクが宿に求めているものが、"寝るところ"でしかないことを意味している。旅行を好む人の多くは、旅に非日常を求めながらも、同時に日常の快適さも求めがちだと思う。しかし、見知らぬ土地でいつもと同じモノやサービスを得ることは、結構、難しい。そのために費やされている地元の人達の労力はかなりのものだと推察するが、彼らもその一員だろう。コンシェルジュ。旅先にあって現地の旅の扉を管理する者たち。
 この作品の舞台となるホテルは都市にあるため、様々な人たちが交差する。海外からの旅行者や、仕事による長期滞在客、近隣住民のカルチャースクールなど、まさに非日常と日常が交わる場所だ。そして、彼らとと共に悩み問題を解決するコンシェルジュにとっては、ホテルの従業員としてだけでなく、自分自身を試される場でもある。

 今回は、これまで主役として描かれる機会があまりなかった及川さんの私的な面や、鬼塚小姫と母親の確執が描かれる。知識量や論理により活躍する小姫が活躍する中で直面する、自分の知識や経験だけでは理解できない価値観に、多くに人が係わりながら解決にたどりつく様子は、社会の縮図にも見える。ただ、彼女の登場する回は、彼女自身の作られたような性格のせいもあり、何か出来過ぎにも見えてしまう。
 他にも、貴梨花さんの仕事論や、巻末にコンシェルジュ・プロトタイプ版も掲載されていて、一話一話で楽しめると同時に、色々考えさせられるところもある。

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コンシェルジュ (15) (作:藤栄道彦)

答えは一つではなく、どれも正しい
評価:☆☆☆☆★
 以前に涼子が訪れたクインシー神戸の大関みやこがクインシー東京へ出張し、代わりに小姫&純菜が神戸へ。いつもとは違った環境の中で、小姫の普段はあまり見えない面が現われてきて良い感じ。涼子も、グロリアのコンシェルジュ朝霧からの問いに正面から向かい合い、何とか答えを見つけようと努力し行動する様がみられます。各人が、サービスとは何か、という大きな問いに対し、それぞれの持ち味を生かして答えていくのがこの作品の良いところでしょう。
 しかし、この巻でどこかワンシーンだけ印象に残った場面を選ぶとすれば、やはり、かりそめの結婚式で花嫁役の涼子から感謝を述べられた最上の、非常口に一人佇む後ろ姿になってしまうでしょう。楽しい日々の中で、久しぶりに最上の悲しい過去を思い出してしまいました。

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コンシェルジュ (14) (作:藤栄道彦)

まわりだす世界
評価:☆☆☆☆★
 オリンピックのボイコットや力士の引退問題、涼子たちの北海道旅行など、はじまりはホテルかもしれないけれど、事件はホテルからどんどん飛び出して行ってしまいます。でも、登場人物たちの持つコンシェルジュとしての心構えが、常に誰かをとらえてしまうのは、どこでも変わりありません。

 涼子たちが成長してきたことにより、物語のパターンが大きく2つに分かれて来た様に思う。ひとつは、当初と同様に最上の様なベテランによる深みのあるサービスの物語。もう一つは、涼子たち若手コンシェルジュによる、世にはびこるサービスとは呼べないサービスに苦言を呈する物語。それぞれに特徴を持った若手を主役に据えることが可能なので、物語に幅を持たせやすくなった様に感じる。一方で、ホテル内だけで物語を作り出し続けるのはかなり難しいのかなとも思う。結局、ホテルというのは旅先における拠点にすぎないのだから、事件は拠点から飛び出した先で起きるものなのだろう。
 また、朝霧花織の登場により、涼子の目指すところが明確になったことも、物語に芯を通す結果となっている気がする。これまでは最上を目指すといいつつも、どこかかなわないと思っていた所があるだろう。しかし、女性という立場から飛び抜けたサービスを提供できるという事実が、涼子に明確な目標を与え、生き生きと活動できるようになっていると思う。

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コンシェルジュ (7) (作:藤栄道彦)

チームワークで解決
評価:☆☆☆☆☆
 レギュラー化してきた面々がコンシェルジュ部門に移動。やっぱり他部署の人間がいつも他の部門の仕事をしていたら、自分のところの仕事ができなくなっちゃうもんね。
 ストーリーの前面に最上は出てこなくなりましたね。万能感がある人の仕事では、ドキドキハラハラ感がなくなってしまいますものね。かわりに、それぞれのメンバーがそれぞれの知恵を力を振り絞って問題を解決していく様は、全てが上手くいってしまうよりも、ずっと面白い。
 …しかし、次巻も新メンバーが登場するの?

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コンシェルジュ (6) (作:藤栄道彦)

自分でよく考える
評価:☆☆☆☆☆
 巻を追うごとにどんどん良くなっている気がする。
 個人的には漫画家の有明氏が出てくるお話が良かった。出だしはそれほどでもなかったが、小姫と絡めてまとめたクライマックスは良かった。父親の最後の一言にはちょっとグッと来てしまいました。
 最後の最上の過去話も良かった。サービスの本質を押しつげがましくなく教えられた気がしました。説教臭くない教訓って難しい…

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コンシェルジュ (5) (作:藤栄道彦)

信頼は蓄積
評価:☆☆☆☆☆
 シティホテルで働く人々とその周りで起きる物語を通じて語りかけてくる作品です。当初は一人のスーパーホテルパーソンが活躍するだけのお話なのかなあ、と思ってみていましたが、登場人物も増え、後進の人々が成長してくるにしたがって、物語の幅がぐんと広がったようです。
 どんな仕事でもそうでしょうが、サービスの範囲をどこまでとするのかは難しい問題です。一人のお客さまに注力しすぎて全体がおろそかになってはいけないし、手間やコストを惜しまずに突き進んで商売として成立しなくなってしまっては、その後のサービスの低下を招いてしまいます。
 何が正しいのかは人によると思いますが、だからこそそれぞれが自分の正しいと思うことをしっかりともって行動しなければならない。涼子さんや司馬くん、貴梨香さんや松岡オーナーが直面する事態にどう対応しているかをみていると、そんなことを思ってしまいました。

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