内水融作品の書評/レビュー

アグリッパ―AGRIPPA― (4)

こぼれ落ちる勝利
評価:☆☆☆☆★
 反ローマ同盟を立ち上げ、ガイウス・ユリウス・カエサル率いるローマ軍を一度は破ったヴェルチンジェトリクスだったが、カエサルとローマ軍の野戦に対する強さをよく理解するヴェルチンは、血気盛んなガリア軍をよく押しとどめ、数に劣るローマ軍を包囲してガリアから追い落とそうとしていた。
 しかし、敵軍と自軍の実力をよく理解しないガリアの一部勢力は、ヴェルチンを無視して戦端を開こうとし、また、カエサルもそれを助長するための策に打って出る。その結果…。

 シリーズ最終巻。残念ながら打ち切りの模様。ようやく、オクタヴィアヌスとアグリッパが登場するのにね。

アグリッパ―AGRIPPA― (3)

学ぶ者が勝者となる
評価:☆☆☆☆☆
 常勝無敗のカエサルを打倒し、ガリアからローマ人を追い出すため、反ローマ同盟を立ち上げたヴェルチンジェトリクスだったが、ルクテリウスやコンミウスなど、有力部族の族長たちの消極的な不服従もあり、未だ軍としてまとまっているとは言えない。
 そうこうするうち、雪山を超えて行軍して来たカエサルは、十軍団を終結させ、ガリアの街々を血祭りに上げ始めた。しかし、ヴェルチンジェトリクスは何かを待つごとく、じっと動かない。彼が仕掛けようとしている策とは一体何か?

 カエサルの偉大さを強調することで、それに対抗することが出来る唯一の存在としてのヴェルチンジェトリクスの価値が高まっていく。結局、後から出てくる名将とは、先人の行動から学んだ人間なのだ。必ずしも独創的であることが重要な訳ではないというのが面白いところだと思う。

アグリッパ―AGRIPPA― (2)

英雄続々
評価:☆☆☆☆☆
 古代ローマによる支配から脱却するため、反ローマ同盟をガリアに立ち上げようとしたヴェルチンジェトリクスだったが、親ローマである叔父のゴバンイティオにより捕らえられ、処刑目前となってしまう。
 ヴェルチンの腹心であるヴェルカッシは、妹セクアナのために捕まったヴェルチンを助けようとするのだが、打つ手がない。そこに、ヴェルチンにより救われた少年タラニスが、陣内へ乗り込んで助けると言い出す。そのことに意気を感じた謎の兵士ユリアクスが手伝いを申し出るのだが…。

 ついに、ガリアではインペラトールのカエサルが、そしてローマでは少年期のオクタヴィアヌスが登場する。英雄が認める英雄という立ち居地で、今後、彼らは描かれていくのだろう。
 そして、バラバラな諸部族を、最小限の犠牲を持って一体に纏め上げるヴェルチンとヴェルカッシ。ヴェルカッシの今回の決断は、今後もヴェルチンの腹心として居続けるためには必要不可欠と、彼自身が判断した結果だったのだと思う。

 豪放磊落で明るく他者の耳目を自然と集めてしまう英雄であるカエサルと、他者の死角に入りながらも彼らを動かし目的を達成していくオクタヴィアヌス。そしてそんなローマに対決姿勢を示すヴェルチンたち。いずれも役者が名乗りをあげ、盛り上がり始めてきたように感じる。

アグリッパ-AGRIPPA-

ガリア側からみたガリア戦記の世界
評価:☆☆☆☆★
 ローマ元老院からガリア平定を命じられたカエサルが、屈強な騎馬の民であるガリア人たちを、ローマから預っている歩兵軍団や騎馬傭兵たちを用いて、屈服・恭順させていっている頃が、物語の舞台だ。
 ガリアの有力部族アルヴェルニ族の族長の息子だったヴェルチンジェトリクスは、ローマに恭順の姿勢を示した叔父に父を殺され、一族郎党は部族から追放されてしまう。再起のため、ローマ軍団に傭兵として雇われたヴェルチンたちは、ようやく安住の地を見つけるのだが、叔父ゴバンニティオとローマ軍団長アントニウスの計略によって、それも奪われてしまい、ローマに対する復讐を志すのだった。

 そんなヴェルチンジェトリクスを主人公として、同じ様に父をローマに奪われた族長の息子タラニスを仲間に加え、ローマ反攻の部族同盟を立ち上げようとする様を描いている。

 テーマとしては面白いと思うのだが、描き方が少年向けになりすぎている気がする。この物語は、もっと重厚に、大人っぽく描いた方が絶対に面白くなると個人的には思うのだが…。
 あと不満は、カエサルは最終的に勝利者となることが歴史的に決まっているので、彼が魅力的な敵役になることはありえないということかな。だからカエサルの出番がないであろうことが哀しい。

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アスクレピオス (2)

ようやくすごさが見えてきたけれど…
評価:☆☆☆☆★
 ようやくアスクレピオスとしてのバズのすごさが出てきた。8箇所の銃創の同時摘出手術とか、自分自身の手術とか、時代の違いに寄らない技術レベルの違い。やっぱり格好よくないと少年マンガの主人公としては人気が出づらいよね。

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アスクレピオス (1)

新しき医神立つ
評価:☆☆☆☆★
 中世のヨーロッパ、教会の権威が絶対で、医学においても古代ギリシャや古代ローマの権威が信じられており、外科医の地位はとても低く、医療行為は祈祷と大差がないような時代だった。そんな頃に、現代医学と大差がない外科治療を行う遍歴医師の家系、メディル家の当主の少年バズの成長の物語。
 メディル家を異端として狩る聖騎士との対立や、当時の標準的な外科医との対立があり、従者であるロザリィや患者たちとの関係があり、派手さはないものの正統的な少年漫画という気がする。ただ、現代の医療が標準である世代には、当時におけるアスクレピオスの驚異的な能力という設定が伝わりにくかったのではないか。設定的には面白いのだけれど、少し理解するのが難しかったのかもしれない。

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