羽海野チカ作品の書評/レビュー

3月のライオン Maech comes in like a lion (12)

評価:☆☆☆☆☆


3月のライオン Maech comes in like a lion (11)

評価:☆☆☆☆☆


3月のライオン Maech comes in like a lion (10)

桐山零六段の人生設計
評価:☆☆☆☆☆
 桐山零六段の人生設計が明らかになる。そして川本家の家庭の問題が今回の山場。

3月のライオン Maech comes in like a lion (9)

夏の終わりと春の始まり
評価:☆☆☆☆☆
 祭りの屋台の成功に喜びやりがいを見出す川本あかりや川本ひなただったが、ひなたには受験生という現実が待ち受けていた。しかし、いじめの件もあり、進学するということに意味を見いだせない。それよりも、目の前の手に届くところにあるやりがいの方が、よっぽど意味があり大切に思えるからだ。
 悩むひなたを見た桐山零は、自らの通う私立駒橋高校のイベントにひなたたちを招待する。そこでひなたが見た姿とは?そして彼女の初恋の顛末は?

 将棋界では、またもや濃いキャラクターが登場。その名も滑川臨也七段!彼がどう濃いかは見てのお楽しみ。たぶん、想像とはちょっと違う濃さです。ある意味、薄い!
 そして名人戦は、宗谷名人に、幼少の頃からのライバルである土橋九段が挑みます。ゲンを担ぐ土橋九段の徹底ぶりにも注目でしょう。

3月のライオン Maech comes in like a lion (8)

魂を焼く灼熱
評価:☆☆☆☆☆
 新人王となった桐山零五段は宗谷名人と記念対局を行うことになった。前夜祭を終え、対局当日、桐山は名人の前に座る。いつもと同じなのに、いつもとは違う対局室で、桐山は不思議な体験をし、将棋の奥深さを知ることになるのだった。
 そして、海堂晴信五段も入院から復帰し、二人が迎えるのは、島田八段が柳原棋匠に挑戦する棋匠戦だ。共に地味で華のない棋士であるため、興行的には微妙な最終局を、若手二人が盛り上げる。そして激しい戦いが繰り広げられる対局室では、現役最高齢棋士である柳原棋匠が、自らの生き様に思いを馳せていた。

 今回は早期退職や高齢者の生き甲斐みたいなものがテーマになっているらしい。目薬をさす柳原棋匠とか、ザ・高齢者と言わざるを得まい。
 これまで頑張った。もうここまでで手を離して良い。そう言って自分をごまかして納得しようとしても、納得しきれない自分が足掻いて手を伸ばす。

 でも、若手の一人として言えば、ある程度で活躍の場を譲ってくれても良いと思いますけどね。それを押しのけるのにエネルギーを注ぎ込みすぎて、その後で頑張れなくなってしまうのでは目も当てられない。

3月のライオン Maech comes in like a lion (7)

解放の時
評価:☆☆☆☆☆
 山崎順慶五段を下し、桐山零五段は平成23年度新人王になった。その足で、鴨川のほとりで一人たたずむ、修学旅行中の川本ひなたと合流し、クラスでいじめられている彼女の、独りぼっちの心を救う。
 桐山零の気づかないうちに、彼の孤独な世界は終わりを告げていた。川本家ではあかりやひなたが、学校に行けば将科部の仲間が新人王を祝ってくれ、将棋連盟では、未来の将棋界を背負う柱の一本として、彼に期待をかけてくれる。

 そして、桐山零の孤独が終わった様に、ひなたの孤独な戦いにも終わりの時が見えて来た。起きたことは何もなかったことにはならない。しかし、それでも相応の報いと、傷ついた者に対する救いが与えられないのは嘘だ。緊張と戦いの日々から解放されたひなたは、輝く様な笑顔を桐山零に向け、彼が救いを与えてくれたことを伝えるのだ。

 そして、将棋棋士としての桐山零は新たなステージへ。新人王獲得者に与えられる宗谷名人との記念対局は、将棋連盟会長の強力なバックアップもあり、タイトル戦級のイベントに仕立て上げられる。
 一方、二階堂晴信五段を通じて知り合った島田八段も、スランプの時期を切り抜け、櫻井岳人七段を下して、柳原棋匠への挑戦権を獲得する。

 新人の時代を過ぎ、トップ棋士への道を歩み始めた零は、そこにどんな景色を見るのか?

 表紙のイラストは、桐山のメガネをかけたひなちゃんだったんだね。

3月のライオン Maech comes in like a lion (6)

一人で指すがひとりじゃない
評価:☆☆☆☆☆
 桐山零五段が懇意にする川本家の次女ひなたを襲うクラスでのいじめ。いじめられる友だちをかばったせいで、彼女が新たな標的にされたのだ。それに対処すべき担任は、むしろひなたを悪者にして、見なければいつか問題が消えてなくなると思っている様な態度をとる。
 桐山零は彼の心を救ってくれたひなたに恩返しがしたい。でも自分に出来るのは結局将棋だけ。だからこそ彼は初めて欲をもって、勝つために将棋を指す。その賞金でひなたがどうなっても助けられるように。

 勝ったり負けたりを繰り返しながらではあるが、順調に新人王戦を勝ち抜いていく桐山零。そんな彼の練習相手となるのは、桐山の心友を自称する二階堂晴信五段だ。互いに決勝で対局すべく、それぞれが死力を尽くす。しかし…。

 いじめの問題は難しい。なにが難しいかって、最善の落とし所である元通りには、絶対に戻らないからだ。それに、人によって落とし所は異なってくる。誰もが満足いく解決なんて、果たしてあるのかどうか。
 ただひなたの救いは、彼女が正しいと全面的に肯定して、それに寄り添ってくれる人たちがいること。そして彼女もそれを受け入れていること。あとはそれを支えにして、自分が正しいと思う道を進めば良いと思う。誰がそれを妨害しようとも。

 そして二階堂晴信の事情を知った桐山零。彼のモデルは故・村山聖九段なのだろうから、彼がどれだけ死ぬ思いをして将棋を指しているかは推して知るべし。
 将棋は相手と自分、二人で指すもの。盤上ではひとりで戦わなければならないが、その指し手に至るプロセスには、様々な人の想いが介入し、彼を支えてくれている。そのことを今回、桐山零は実感するのだろう。

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜

光の種の短編集
評価:☆☆☆☆★
「冬のキリン」
 南国から雪の降る国へ連れて来られたキリンに、人の生き方を重ねる。

「スピカ」
 他人と違う生き方を選んだ人間の苦悩みたいなもの。野球選手とバレリーナ。

「ミドリの仔犬」
 少年キオの探偵っぽいお話。ミドリの犬に待っている運命とは?

「はなのゆりかご」
 少年キオの探偵っぽいお話。言葉の持つ力と愛。

「夕陽キャンディー」
 高校の一場面。

「イノセンスを待ちながら」
 押井守作品に対する作者の想いが語られる。

 日常の一場面について深く考えて、そこで気づいたことを作品の中に織り込んでいるのが感じられる作品集。こういう要素が、長編作品の中でも煌くのだろうなと思う。

 あとがきによると、この本の印税は東日本大震災の復興に寄付されるそうです。

3月のライオン Maech comes in like a lion (5)

縛られる気持ち/断ち切られる呪縛
評価:☆☆☆☆☆
 名人戦七番勝負が終わると次の順位戦が始まる。同じC1級の桐山零と二階堂晴信だが、順位戦の対局は組まれず、その勝負は新人戦トーナメントの舞台となる。そして学校も新しい年度へと移り変わり、桐山や川本家の次女ひなたの学校生活にも変化が訪れる。

 島田八段の地元・天童での人間将棋や勝負に対する棋士の心構えなどのエピソードを交えつつ、幸田香子と後藤九段の関係、零やひなたの学校での出来事が描かれる。香子がこれまでの印象と違い子供っぽく可愛らしいところや、ひなたの真っ直ぐさが零の呪縛を断ち切るシーンなど、とても印象的な描写が多い。
 零のエピソードと香子のエピソードは、実は表裏一体なのだろうと思う。幼少期に両親を事故で失い、両親の愛情の代わりに養父母の関心を惹かなければ生きていけないと思っていた零。そして、その影響もあり、特に父親の愛情を感じられなくなった香子は後藤に父性を求めてしまっている気がする。そんな構造がとても強調された構成に今回はなっていたように思う。

 ひなたの苦しみもあり、ひとつ乗り越えた感がある零。6巻では大暴れしてくれそうな予感がある。一方で、香子の呪縛が解かれる時は来るのか。
 あと、あかりの扉カットは妙に色っぽい。

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3月のライオン Maech comes in like a lion (4)

自分で追い詰めていく感覚
評価:☆☆☆☆☆
 今回もまた一人こゆいキャラクターが加わった。
 それはともかく、島田八段のタイトル戦。地元の期待を背負って子どもの頃から研鑽を積み、将棋以外の色んなものを取りこぼしながら、ようやく手に入れた挑戦者の権利。様々な想いをこめて渾身の一手を指すのだが、名人の壁は厚く、どんどん追い詰められていく。
 そして、そんな島田八段をサポートする零だが、彼の周囲も波風が立たないわけではない。その中でもおそらくは最大の波である義姉香子の来訪。怜悧な様でいて、あのねっとり絡みつくような彼女の気配はなんだろう。あの束縛からはそう簡単に抜けられそうもない。

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3月のライオン (3)

焦り、怒り、嫉妬、全てを写す盤上の駒
評価:☆☆☆☆☆
 とりあえず、後藤って棋士だったのか、と。てっきり、ヤから始まる職業の方かとばかり思ってた。その後藤に盤上で借りを返すべく、獅子王戦挑戦者決定トーナメントに挑む桐山零。しかし、その前に立ちふさがったのは、二階堂の兄弟子、島田九段だった。

 自分の居場所を失くさない様に将棋に打ち込み、そうすることによって新しく見つけた大切なものを壊しかけてしまった経験は、桐山を人との関係を切り離す方向に向かわせ、それでも何かを失くさない様に、必死に将棋にしがみつく。
 そのしがみついた手が離れそうになっても、その落ちる先では、彼を助けようと待ち構えてくれている人たちがたくさんいる。上を見上げれば、手を差し伸べてくれる人たちもたくさんいる。今回桐山は、他人に頼ることを覚えました。

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3月のライオン (2)

傷つきながらも進んで行かなければならない
評価:☆☆☆☆☆
 目標を見失ったため、負けが混み始めてしまった桐山零。しかし、高橋勇介、ひなたやモモ、そして二階堂晴信との関わりから、再び目標を見出す。しかしその直後、彼の前に幸田香子が現れる。特別な感情を抱く彼女からの悪魔のささやき。そして彼は、盤上だけでなく、対局相手自身も見つめて闘わなければならなくなってしまう。それぞれの事情を抱えて対局に臨む棋士を見つめることにより、立ち直ったり傷ついたりを繰り返していく桐山零。彼は何を目指して苦しみながら対局を続けるのか。
 今回は途中で将棋ルールの解説が織り込まれており、将棋自体にも興味を持ってもらおうという試みがなされています。

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3月のライオン (1)

偶然の出会いがなければ今頃
評価:☆☆☆☆☆
 二階堂晴信にしても、川本あかりやひなたにしても、万全に幸せな人々という訳ではない。それぞれに他人から憐れまれたり悲しまれたりするようなことを抱えて生きている。でも、そういうものを全部抱え込みながらも、なんでもない事のように普通に生きている。そんな人たちに囲まれて生きていられる桐山零は、本当は幸せ者だと思う。
 将棋監修は先崎学八段。現在活躍中の中堅から若手の棋士の中で、この物語の監修には最適な人物ではなかろうか。将棋盤面に込められた想いをコラムで語る以上に、桐山零を深めるのに活躍して欲しい。

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ハチミツとクローバー (10)

未確定の世界へ
評価:☆☆☆☆★
 前巻で崩された安定した世界がそれぞれのパーツとなって再構築されていく。こういう終着点をつくろうとするならば、世界を派手に壊すことも必要だったのかも、と思う。出された回答は意味のあるものだった。
 それぞれを縛っていたそれぞれのクサリ。だがそれはただの束縛では終わらず、新しくおとづれる世界の礎となった。この土台があるから、どこへ行っても自分でいられる。前を見て進んでいける。
 …最後に出てくるハチミツとクローバー。食べるのがもったいないくらいだ。

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ハチミツとクローバー (9)

組み上げてから、壊す
評価:☆☆☆☆★
 ようやく森田の怪しげな行動が一つの目的の下に理解されましたよ。一応筋書きに沿って動いていたんですね。意外や意外。一方で復讐というドラマが終結を見つつあるとき、もう一方で事件発生。
 いままで仲良しグループで楽しくやってきた面々が、作者の考えているであろう、「大人」というものに到達するイベントとして、竹本の自分探しの旅は弱すぎると感じたのだろうか?それとも、芸術の道に進むのに必要な思いの強さを見せつけたかったのだろうか?
 最後に提示された一つの選択肢。これに対する回答が何かによって、今回の事件の意味が分かるはずだよね。

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