上杉可南子作品の書評/レビュー

JOKER (3)

未来に向けた愛の言葉
評価:☆☆☆★★
 兄弟子の岩崎六段からプロポーズされ、居候する小学生の藪雨あきらからは待っていて欲しいと言われ、頭の中がごちゃごちゃの将棋の女流棋士である斉藤一花女流二段の前に、初恋の相手である稔にそっくりの高遠という男が現れる。
 過去の失われた初恋をやり直せるかも知れないチャンスに心動かされる一花だったが、本業においても女流王冠戦の挑戦者に決定し、重要な局面に立たされている。そんな大事なときに、あきらが二晩帰ってこないという事態が起きてしまう。

 強引にたたんでシリーズ完結。打ち切り臭が満載で、終わり方はまだまだ一波乱ありそうな終わり方になっている。

JOKER (2)

浮かれる気持ち、気づく気持ち
評価:☆☆☆☆★
 将棋の女流棋士である斉藤一花女流二段は、ある日突然、小学生の藪雨あきらと暮らすことになった。元天才少女だった一花は最近落ち目だったのに、あきらと暮らし始めた途端、昔と同じように将棋に情熱が戻ってきた。まっすぐに自分に思いを注いでくれる異性がいると言うことは、例えそれが小学生でも乙女心にびんびんと来るらしい。
 そこにまた新たな転機が訪れる。あきらには、あきらを産んだ母親が現れ、あきらを引き取りたいと言い出す。そして一花には、兄弟子の岩崎六段が突然プロポーズをしてくるのだ。

 あきらは一花と一緒に暮らしていたいのだが、おまえの存在は迷惑にしかならないと母親に言われ、そして自分が一花を守れないほど小さいことを自覚し、潔く、ひとたび身を引く決意を固める。一方、一花は、思っても見ないところから湧いて出た結婚話に浮かれるのだが、現実に接し、色々と思い直すことになるのだ。
 そしてラストに現れる、一花の心を大きく揺さぶる存在。その正体とは何なのか?

JOKER (1)

小学生男子にときめく二十代女子?
評価:☆☆☆☆★
 十代にタイトルを取ったことがある女流棋士の斉藤一花だが、師匠の宗像九段の息子であり奨励会三段だった宗像稔に向けていた想いの向き先を失ったことで、将棋に対する情熱すらも失いかけていた。将棋で勝利することに意義を見いだせなくなっていたのだ。
 そうして向かう先は、婚活パーティの会場。将棋に意味がないならばイケている彼氏をゲットして結婚!とも思うのだが、出会う男はちっとも良いとは思えない。何かと絡んでくる兄弟子の岩崎六段を筆頭に、疎ましいだけだ。

 そんなある日、婚活パーティで出会ったサクラの男、藪雨鉄平が彼女の部屋に現れ、突然、息子の藪雨あきらを押し付けていく。別れ際にファーストキスを奪われ、何が何やらわからないまま、茫然とあきらを泊めることになるのだが、小学生であるにもかかわらず、一花を女扱いして振る舞うあきらに、久しぶりにときめきめいた感情を思い出させられてしまう。
 その副作用か、普段と同じ様に指しているつもりだったのに、意外にあっけなく対局に勝利してしまったり、生活にはプラスの影響が生じる。一方で、あきらに恋する小学生女子ゆまが登場し、一花をいびったりもして、変な方向にも行ったりするのだった。

 将棋にハマって女流棋士にまで行きついた女性が、ふとしたきっかけでそこから覚めてしまい、普通の女性としての生き方を模索してみても上手くいかない。そんな生きづまりを打開してくれたのは、行きずりの男に押し付けられた小学生という、あり得ない展開!でも、いくつになっても乙女として扱われたいという女子の願望をたっぷりと練り込んだ作品なのだと思う。

ホーム
inserted by FC2 system