榎本俊二作品の書評/レビュー

3/16事件

はっちゃけちゃった感じがする
評価:☆☆☆☆☆
 「えの素」の榎本俊二氏と「空の境界」「DDD」の榎本俊二氏が、それぞれオリジナル漫画と小説を作り、それを交換して互いの分野で表現しなおすという競作企画になっている。

 榎本氏が描いた「MAGNITUNING」は、年齢職業もバラバラな5人の男性が、コマ割りもなしに紙上を縦横無尽にレースをするというだけの作品だ。何のために走るのかも明かされない。ゴールすればどうなるのかも分からない。
 読者に分かるのは、各ページで繰り広げられる、レース障害に対する各人の反応のみ。それだけなのに、ページをつなげるとそれぞれの人生が浮かび上がってくるような気がするから不思議だ。

 奈須氏が書いた「宙の外」は、アゴニスト異常症患者の二人を主役に据えた作品だ。最強少女・石杖火鉈と最強ニート・大熊猫目々の邂逅を描く。オリガ記念病院崩壊の時、大熊猫目々の病室を訪問したカナタが見た、病室に広がっていた世界は、4千もの星々を抱える宇宙だった。
 そこで繰り広げられる、ふたりのテンポの良い会話と、不条理なまでの超展開、そして最後にもたらされる結末は何か。

 そしてこれらの作品を、互いが互いの領域で描きなおしたとき、それぞれの良さを残したまま、それぞれの個性が付け加えられる、かも。宙の外は手塚作品ぽい感じになってしまった気がするし、MAGNITUNINGには5人をつなぐストーリーが出来て論理性が加わった気がする。
 普段はあまり読まない領域に触れられて、面白い体験でした。

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