河合克敏作品の書評/レビュー

とめはねっ! (14)―鈴里高校書道部

1年4か月の集大成
評価:☆☆☆☆☆
 鈴里高校と鵠沼学園の合同夏合宿最後の夜。ギリギリで構成を決めた縁は、徹夜で作品を書き上げることに挑む。望月らが気に掛ける中、書き上げた作品は?
 シリーズ最終巻。

とめはねっ! (13)―鈴里高校書道部

強烈なメッセージ
評価:☆☆☆☆☆
 三浦清風に己の限界を悟らせた作品がすごい。そして次巻は最終巻らしい。合宿で繰り広げられる恋の行方は?

とめはねっ! (12)―鈴里高校書道部

ちょっと恋愛成分が多め
評価:☆☆☆☆☆
 高野山競書大会にかな作品を出品し金剛峯寺賞を受賞した大江縁は、ほかの部員と共に表彰式に参加する。そこで大槻藍子に再会し、ひそかに彼女から高い評価を受ける。
 そして今年も、三浦清風指導の合宿が開催されることになった。鵠沼学園書道部が参加するのは去年と同じだが、今回は特別に大分豊後高校書道部の一条毅も参加する。

 一条毅の望月結希に対する態度から恋心を見抜いた宮田麻衣は、二人を近づけることで漁夫の利を得ようとするのだが…。

とめはねっ! (11)―鈴里高校書道部

柔か書か
評価:☆☆☆☆☆
 高野山競書大会に出品した大江縁の作品は、京都の大槻藍子と同じ題材である源氏物語となった。そしてその作品は、鈴里高校書道部部長の日野ひろみと共に、金剛峯寺賞を受賞した。
 しかし、そんなめでたい話題とは裏腹に、書道部にピンチが訪れる。B級の強化選手となった望月結希を書道部から離れさせるべく、柔道部顧問のひげだるまが理事長を巻き込んだ策略を仕掛けてきたのだ。書道部顧問である影山智は、三浦清風と親しい校長を抱き込み、望月の自由を守るべくちょっとだけ奮戦する。

 そしてその決着がついたとき、書道部からは少しだけ覇気が失われてしまった。そのことが面白くない島奏恵は、大江縁にはっぱをかけ、覇気を取り戻そうとする。そんなとき、三浦清風の下に、九州の一条が勉強に来るという知らせが伝えられるのだった。

とめはねっ! (10)―鈴里高校書道部

旅先の交流
評価:☆☆☆☆☆
 高野山競書大会に何を出品するか決まっていない状態で、大江縁と望月結希は修学旅行へ行かなければならなくなってしまった。九州と京都で一週間の日程の修学旅行中に、少しでも作品のヒントを得るため、本物の書を展示した美術館に行くことを望月結希は思いつく。
 ところが影山教諭のいつもの中途半端な調査で出かけた結果、予定していた美術館は改装中で展示品を見られないという始末になってしまう。しかし、偶然遭遇した大槻藍子と意気投合した望月結希は、彼女に本物の書が見られる場所を聞き、案内してもらえることになるのだった。

 いつもとは違う場所、いつもとは違う人で、いつもと同じように書を学ぶ。そこにはいつもとは違う視点があって、一方が一方に与えるのではなく、互いに影響し合える部分もある。そんな現在に於ける交流を引き起こしているのは、過去から連綿と受け継がれてきた書であるわけで、縦横に織りなされる関係を思うと面白い。
 そんな面白さを実感出来るようになってきた望月結希だが、彼女が成し遂げた快挙のおかげで、書道部としての活動にピンチが訪れてしまう。明らかに目に見える実績と、伸び始めたばかりの芽、一体どちらが大切なのか。中々に難しい問いだ。

とめはねっ! 鈴里高校書道部 (9)

何のために書をするか
評価:☆☆☆☆☆
 新入部員を加えて心機一転、再始動した鈴里高校書道部の当面の目標は、市民書道大会だ。鵠沼高校書道部への対抗心をむき出しにして新三年生たちが作戦を練る中、望月と大江縁はそれぞれに出品作に秘策がありそう。そして新入生の一人である島奏恵は、前衛書を出品すると張り切る。その結果は…。

 大江英子と笠置亜希子、そして何より三浦清風のエピソードがあれほ掘り下げられるとは!という驚きがある。初登場のあたりは白目の頑固じじいくらいの印象しかないのに、今やとてもすばらしい教育者にしか見えない。
 そして!女学生時代の神林英子の奔放っぷりを見よ!物腰は柔らかいのに頑固で自分の考えを曲げないという、扱いづらいことこの上ないキャラクターに振り回される三浦清風と笠置亜希子の様子が面白い。何だったら本編よりも面白いかもしれない。

とめはねっ! 鈴里高校書道部 (8)

新入部員!
評価:☆☆☆☆☆
 急きょ開催されることになった、オープンキャンパスでの散らし書き創作対決!この一カ月で学んで来たことを半紙の上に出し切ろうとする大江縁の順位はいかに?
 そして、同じオープンキャンパスで上京していた一条と望月結希のデート(認識の相違あり)に参加することになってしまった縁。微妙な空気はどこへと向かうのか?

 そして部活を描くならここは外せない、新入部員集め。そして部室にやって来たのは、顧問の影山智の従妹・島奏恵と、望月に憧れ過ぎて同じ様に兼部しようとする羽生翔子だ。どちらも一風変わった性格の持ち主で、しかも書道初心者ではない!
 縁や結希の立場や如何に?

 今後のテーマは、前衛書に移っていく。ところで、かなの散らし書きというのは、文字の形で内容を表現する絵という見方もできるのかもしれないなと思った。

   bk1
   
   amazon
   

とめはねっ! 鈴里高校書道部 (7)

大江おばあちゃんが表舞台に
評価:☆☆☆☆☆
 漢字も良いけれど、仮名は柔らかさがあって良い感じ。大江縁のおばあちゃん英子が、かなの指導者として登場して、代理戦争のような要素が付け加わったことも面白さを助長している気がする。
 大学のオープンキャンパスを通じて勃発する、鈴里と鵠沼の対決、そして、集まってきた地方のキャラクターたちの再会なども物語を彩っています。

   bk1
   
   amazon
   

とめはねっ! 鈴里高校書道部 (6)

大きな壁を目にしたときの二つの反応
評価:☆☆☆☆☆
 書の甲子園に参加して上位入賞者の実力を間近に見て、自分の実力との差と今後目指すべき場所を見据えることができた日野ひろみと望月由希の二人。一方、大江縁は、書の甲子園で望月が再会した幼なじみとの関係が気になって仕方がない。
 トップレベルとの差を思い知らされてなお、前に進むために努力する決意を新たにする女性陣と、その差にしり込みして一度はやる前にあきらめてしまおうとした大江が対比になっている。
 次からは「かな」の書がメインになるようだ。

   bk1
   
   amazon
   

とめはねっ! 鈴里高校書道部 (5)

墨汁と墨は違う。でも墨をするのは大変なので、
評価:☆☆☆☆☆
 文化祭のパフォーマンスのおかげで廃部問題は何とかなり、部員の地力も少しずつついてきたので、今後は上を目指すという方向に向かうのかも知れない。目指すべき頂点として、「書の甲子園」優勝校の人達もちょっと登場してきたし。
 一方で、大江縁の周囲の人々の動きも活発化。そば屋さんのメニューを書くために漢字かな交じりの書の練習に入ったり、展覧会に行くための交通費を稼ぐために…みたいなハプニングもあり。
 でもでも、一番インパクトがあったのはあの機械です。あの作業をするための機械が開発されているなんて、やっぱり目立たないように見える書道界だが、一定の需要はある業界なのだなあ。

   bk1
   
   amazon
   

とめはねっ! (4)

大江くんの周辺で起きる変化
評価:☆☆☆☆☆
 大江くんがアルバイトをする気になり紹介された蕎麦屋に行くと、鵠沼高校書道部の宮田さんの家だった。完全に忘れ去られていた大江くんではあったが、海外からの観光客の対応を見てからは、何か宮田さんも気にかけている様子。しかし、再三のアプローチにも全く気付く様子のない大江くん。
 一方、望月さんは、商店街で二人が歩いている姿を偶然見かけてから、どうもご機嫌斜め。あっさりインターハイで優勝したが、一向に気分は晴れない。加えて、書の甲子園に出品する作品として、大字書を勧められるが、崩した読めない字の良さがまったく理解できず、あまりやる気になれない。そんな時、偶然にも大江くんのお祖母ちゃんと遭遇する。
 ここでお祖母ちゃんが崩した字の魅力を教えてくれるのだが、その説明が良かった。字を単なる記録用のツールとしてだけでなく、それ自体に情報を乗せて書くという方法があるということを初めて知った。まあ、それも行き過ぎると、抽象画の解釈みたいに素人には理解できないものになってしまうのかもしれないが…
 一年生部員の二人が、それぞれのやり方で真剣に書に向かい合っている様からは、とてもアツいものを感じる。

   bk1
   
   amazon
   
ホーム
inserted by FC2 system inserted by FC2 system