木村有里作品の書評/レビュー

ヴァンパイア十字界 (9)(作:城平京)

理想の体現者、退場
評価:☆☆☆☆★
 実現可能であることが保証されていれば、やり方が分からなくても実現へ至る道を進むことは案外容易だ。出来ないかもしれない不安を抱えて道を突き進むことは凡俗の徒にはつらい。
 たとえば、ボクが幼少の頃、男子マラソンの世界記録は2時間10分台だった。しかし、一度その壁が越えられてしまうと、2時間4分台に突入するのはかなり早かったように思う。もう少し身近な例で言うと、知らない目的地へ向かうのには非常に時間がかかるように感じられるが、帰り道は早く感じたりする。
 道を作ること、初めて実現することを達成するためには、技術や知識があることはもちろん、理想の世界を思い描いて、そこに到達できることを疑わない意思の力が必要だと思う。
 理想を追い求め、最善を追求しながら自らを傷つけてきた偉大なる王の退場を、祝福を持って見送りたい。

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   ヴァンパイア十字界 (9)

ヴァンパイア十字界 (8)(作:城平京)

かわいいかわいい
評価:☆☆☆☆☆
 ブリジットのかわいらしい一面が見られます。ストラウスに情報操作の対応を「合格」とほめられてちょっと上気している所がほほえましい。こういう微妙な表現は雑誌掲載時では印刷でつぶれてしまいがちなので、コミックスの良いところ。
 世の中、本当にたちが悪いのは、自分が正義だと信じて疑わない連中なのだったりする。そして、そういう人たちに翻意させるのは難しい。
 人は自分を基準にして他者をはかってしまいがちだ。自分にできないことをできてしまう存在のことは、まず信じることができないのだ。悲しいことだが…
 ストラウスとセイバーハーゲンの本質を理解していた人間は、ステラだけだったということが残念でならない。

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ヴァンパイア十字界(7)(作:城平京)

時わたる演技者
評価:☆☆☆☆☆
 封印されたアーデルハイトの復活。宇宙人襲来という事態が招いた人間とヴァンパイアの血族の共闘が、千年にも及ぶ戦いに隠された真実を暴いてしまった。
 自分の正義を信じてそれぞれが行動していたのに、その強すぎる正義が事態を悪化させる原因を作り、一瞬にして世界の構造を変えてしまった。誰もが幸せに暮らせる世界を目指していたはずなのに、関わった誰もが幸せになれていない現実。
 外圧によって虚構が崩れた世界に築かれるのは、果たして新しい理想か、それとも信じられる虚構なのだろうか?

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