木尾士目作品の書評/レビュー

げんしけん THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE (14) 二代目の伍

区切りの時間
評価:☆☆☆☆★
 笹原完士の妹である笹原恵子の提案で、現代視覚文化研究会の部室に二人っきりで放り込まれた斑目晴信と春日部咲。そこで二人は、これまで四年間の思い出をそれぞれに思い起こしていた。そして、一区切りつけるための台詞を、散々せかされた末に、ようやく斑目晴信は絞り出す。
 それを見守る波戸賢二郎、走ってばかりのスー、就職と人生に悩む大野加奈子とそれを見守る田中総市郎等の姿が描かれる。

 そして、一区切りついたはずの斑目晴信はといえば…何故そうなるのか??

げんしけん THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE 二代目の四 (13)

卒業できないおまいらへ
評価:☆☆☆☆☆
 荻上千佳の指導により、波戸賢二郎のBL癖は少しだけ矯正された。スージーがコスプレして宣伝する学園祭の現代視覚文化研究会を、波戸賢二郎の高校時代の美術部仲間である今野たちが訪れる。ショートのウィッグをかぶる波戸に彼女たちは全く気づかなかったものの、斑目晴信の失策と、ロングのウィッグで変身後の波戸にそっくりな、先輩の神永が訪れたことで正体がばれてしまう。
 一方、会場には田中総市郎や大野加奈子、久我山光紀らもやってきて、同窓会の様相を呈し始める。さらには、高坂真琴や春日部咲もやってくるらしい。笹原完士の妹である笹原恵子はこの状況を利用して、あることを思いつく。

 ようやく、この続編の意味が分かってきた感じがする。結局これは、大学を卒業しても卒業しきれないおまいらが、何らかの区切りをつけるための話なのだな。斑目晴信は波戸賢二郎の着替え場所として自室を提供して以来、げんしけんの部室にはあまりよりつかなくなっているし、さらに今回は想いにけじめをつけさせる展開となっている。そのうち、大学の近くからも引っ越しするのじゃなかろうか。
 それはそれとして、波戸の高校時代の思い出は、上手く吹っ切れないと中々にしんどそう。もっとも、過去以上に現在が楽しければ、そんなものに意味は無くなるのだけれど。

げんしけん THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE (12) 二代目の参

勢いで笑える
評価:☆☆☆☆☆
 現代視覚文化研究会の内部で斑目総受けが流行っていることを図らずも暴露してしまい、波戸は負い目を感じていた。それに追い討ちをかけるように、自治会から謎の美少女の正体追及の手が迫ってくる。
 しかしそのピンチは、吉武が連れてきたイケメンの兄と言う存在と、朽木の意味の分からない暴走により、ひとまずうやむやになった。

 現視研としてコスプレ以外に学園祭の企画を出したい荻上は、会報の製作を提案する。そして、絵だけならセミプロレベルの波戸にマンガを描いて欲しいと依頼するのだが…。
 一方、絵が下手でも常に何かを描く矢島に触発され、吉武もものづくりへの第一歩を踏み出すのだった。

 斑目と波戸の間で盛り上がる話が半分、波戸と同級生の間で盛り上がる話が半分と言う感じ。そして荻上が絡めば、ものづくりの苦悩の話になる。

げんしけん THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE (11) 二代目の壱

フツウと違うと大変だ
評価:☆☆☆☆☆
 コミフェス初体験の波戸のあるある?苦労話をベースに、荻上の中学時代の同級生登場や、斑目にアプローチするアンジェラというエピソードを交えつつ、基本的にコミフェスとその後日談でまとめている。

 女装した男子がコミフェスに行くと何が大変か?まあそもそも違和感が大変というのが通常の場合だが、波戸の場合はその心配はない。しかしさすがに、男装女性のコスだろうと、そのまま男子トイレに入って立ってするのはやっぱりムリ!だが女子トイレだと既に犯罪!なので、女子の格好のまま男子トイレの個室列に並ぶことに…。これはもはや羞恥プレイの域に達しているのではなかろうか?
 そして、アンジェラに強烈に言い寄られる斑目のたじたじっぷりと、それを見て何やら義憤に捕らわれる波戸の大暴走が後半の見どころとなっている。その後遺症はすさまじく、現視研の部室が犯罪現場になり掛けるほど。突然のカミングアウトのケアは適切にね。

げんしけん THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE (10) 二代目の壱

ある意味で安心の一冊
評価:☆☆☆☆☆
 二代目の壱となっているけれど、斑目と春日部の関係などが普通にネタとして扱われているので、9巻までを読んでいないとたぶん面白くない気がする。だから単純に間を置いて10巻が発売されたと考えるのが無難だと思う。
 というわけで二代目は、荻上が会長となった現代視覚文化研究会のお話。悲しくも大野と朽木の暴走で前年の新会員は0だったので、今年こそはと新会員募集に力を入れる荻上。髪を下ろして女子力アップ、画力もアップしているけれど、腐女子度はそのまま。よって、彼女の絵に魅かれて集まってくる新会員も似たり寄ったりのものだった。ただし、ひとり飛び抜けた例外を除いては。

 9巻までのキャラクターも登場しつつ、新たなメンバーも加わり、方向性はコスプレからBL方面へ移行しつつあるみたい。おなじみのキャラのその後なども明らかになり、以前からのファンには安心の一冊になっている気がする。

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