黒丸作品の書評/レビュー

絶滅酒場 (1)

評価:☆☆☆☆★


新クロサギ 完結編 (4) (原案:夏原武)

あっけない幕切れ
評価:☆☆☆☆★
 蒲生連二郎衆議院議員が意図していた新党立ち上げは、秘書の失態によって事実上、不可能になってしまった。さらには、彼に資金を提供していたひまわり銀行本店営業部次長の宝条兼人に銀行資産の横領疑惑がかけられ、それぞれがそれぞれの領域で追い詰められていく。
 そして、一連の事態をしかけた黒崎高志郎も追い詰められていた。ヤクザの手先に襲われていた吉川氷柱を助けはしたものの、逃げ込んだ場所には追手が迫る。

 一方、神志名将警部補は桃山刑事と和解し、黒崎の命を守るべく手配をしていた。シリーズ最終巻。あっけない幕切れ。

新クロサギ 完結編 (3) (原案:夏原武)

犬伏の役得
評価:☆☆☆☆★
 黒崎によって徐々に追い詰められていくひまわり銀行の宝条兼人は、後ろ盾である蒲生連二郎衆議院議員の新党結成費用を集めるため、危うい手段を取り始めていた。  しかし、敵が追い詰められているということは、黒崎や周辺に及ぶ敵の手も本気になってきているということを意味する。店子である吉川氷柱のバイト先にはヤクザが現れ、検察庁事務官を口説き落として情報を手に入れた犬伏晴臣は、地方のホテルに身をひそめる。  相手を潰すのが先か、刺客に殺されるのが先か、ギリギリの攻防が続く…中で、ホテルで事務官の女性と密会する犬伏くんは、ナニをやっているのかな〜?

新クロサギ 完結編 (2) (原案:夏原武)

超えた一線
評価:☆☆☆☆☆
 桂木敏夫を裏切って自身の復讐を完成させにかかる黒崎の暗躍で、ひまわり銀行本店営業部次長の宝条兼人は手足となるファミリー企業を潰され自行内での影響力を低下させ、その後ろ盾でもある民政党元幹事長の蒲生連二郎衆議院議員はスキャンダルにまみれた。政財界のフィクサーである今出川栄元日銀総裁は、次の世代への布石として、鷹宮への接近を図る。
 神志名将警部補は、宝条兼人をターゲットとして、ファミリー企業の社長だった女性を拘置所に尋ねていた。そしてそこで、桃山刑事が黒崎を逮捕するため、司法取引まがいの違法な捜査を行っていることを知る。

 キャリア官僚としての未来を捨てて一刑事として専心しているはずなのに、自らがキャリアであるために信頼されるという矛盾に悩む神志名がイイ。そして桂木からの刺客も放たれる段階となり、ドキドキ感が増して来た。

新クロサギ 完結編 (1) (原案:夏原武)

全てを擲つ大勝負
評価:☆☆☆☆☆
 ひまわり銀行本店営業部次長の宝条兼人に復讐するため、黒崎は桂木敏夫と袂を分かった。吉川氷柱にも別れを告げ、犬伏晴臣を仲間として、ただひたすらと復讐の道を邁進する。
 宝条兼人を決定的に破滅させるため、彼が懇意にしている元幹事長の蒲生連二郎衆議院議員周辺に詐欺の種をまく黒崎。そんな彼を桂木は許しはしない。早瀬を通じて黒崎と親しい小柴をスパイとし、その動向を探ろうとする。

 そして遅まきながら、神志名将警部補は黒崎の痕跡を辿り、宝条の悪事に気づき始める。政界に隠然たる力を誇る今出川栄元日銀総裁ら、巨大なネットワークを構成する要素が姿を見せ始めた。

新クロサギ (18) 進出詐欺 戦慄の詐欺サスペンス (原案:夏原武)

決別
評価:☆☆☆☆☆
 桂木と宝条の目つきに要注意の巻。次からは新シリーズとして、宝条との最後の決戦が描かれる。

「年金運用詐欺」
 ひまわり銀行の宝条を追い詰めるため、彼の子飼いのグループ企業に仕掛けを打ち始めた黒崎に、桂木からの指示が届く。それは、企業年金の運用を指示する投資顧問会社にまつわる詐欺を行った社長の個人資産を取り上げるというものだった。
 宝条から黒崎に対する初めての攻撃と、桂木との決別を決意する黒崎の姿が描かれる。

「進出詐欺」
 桂木と黒崎が決定的に決裂する半年前、ひまわり銀行の宝条配下のビル管理会社に対し、海外からの企業進出をエサにして黒崎が仕掛けをする。それに乗せられた宝条は、有力政治家に献金して根回しを依頼する。
 宝条が黒崎を潰すべき敵として認識することになった、決定的な事件を描く。

新クロサギ (17) コンサルタント詐欺 戦慄の詐欺サスペンス (原案:夏原武)

断罪の門までのデットヒート
評価:☆☆☆☆☆
 ひまわり銀行の宝条を追い詰めるため、彼が抱える下部組織を攻撃対象とし始めた黒崎だったが、その影は宝条にも捉えられつつあった。そして、桂木のもとにも、黒崎の造反情報が届きはじめる。
 どちらが先に地獄に辿り着くか。互いに互いを追い落とすための戦いが始まった。

「ブライダル詐欺」
 ひまわり銀行の宝条配下の美波結婚相談所を標的にした黒崎は、結婚詐欺師の日向雪雄に接近し、彼をヘッドハンティングした美波結婚相談所の成沢を間接的に攻撃する策を実行する。
 ブライダルと言えば一生に一度のイベント。そう思って財布の紐が緩んでしまう庶民から金を巻き上げる、素晴らしい集金システムの裏側を描く。

「コンサルタント詐欺」
 次なる標的は、シャイニング観光、現代の地上げ屋だ。標的とするビルを抵当に銀行から金を借りさせ、それを担保に別のビルを買わせる。そして資金繰りを悪化させて、抵当を巻き上げるという銀行のビジネスを紹介している。
 それを逆に手玉に取り、宝条の弱みを握って金融庁を動かすステップにしようとする黒崎の企みはどこまで成功するのか?

「年金運用詐欺」
 黒崎の動きを牽制するかのように、桂木から大きな仕事が振られてくる。ターゲットは投資顧問会社だ。

新クロサギ (16) 和牛預託詐欺 (原案:夏原武)

ムーブメントの影に詐欺師あり
評価:☆☆☆☆☆
 和牛預託詐欺の完結編と、LC詐欺全話、そしてブライダル詐欺の幕開けが収録されている。宝条の目的が明らかになるわけだが、やっぱり少し理解出来ちゃうんだよなあ。でもそれに対する黒崎の反撃のセリフも良い。

「和牛預託詐欺」
 被害総額四千三百億円以上。被害者数七万三千人以上。都市生活者の田舎イメージを利用してだました和牛預託詐欺の首謀者たちは、一千億円以上の隠し資産の国外持ち出しを黒崎に依頼していた。
 黒崎は彼らの信用を得て一千億円以上の資産をスイス銀行に逃がし、その痕跡が残るよう、わざと少額の金を電信送金する。その結末は?

「LC詐欺」
 LCとは信用状のこと。貿易時に取引先の信用状況を銀行に保証してもらうための契約方式。当然、銀行はめったに出すものではないが、銀行内部の事情に通じた人物が手引きするならば別。それがひまわり銀行の宝条だ。中国市場で展開するアパレル企業を利用して、ライバル銀行の信用に傷をつける詐欺を仕掛けさせた宝条の狙いはどこにある?
 ついに黒崎は、宝条に直接手が届く手前まで、仕掛けの網を伸ばし始めている。

「ブライダル詐欺」
 陸釣り、穴釣り、釣り堀。この場合、つられる魚は女性の暗喩であり、釣り師は赤サギだ。特に昨今では、婚活と称して自らお腹がすいているアピールをする魚がたくさん泳ぐ釣り堀が、あちらこちらに設置されている。
 そんな釣り堀のひとつに踏み込んだ赤サギは、そこで一人の青年と肩をぶつけてしまう。その青年とは黒崎だった。

新クロサギ (15) 劇場型詐欺 (原案:夏原武)

情報の偏りが引き起こす
評価:☆☆☆☆☆
 物語における想像を現実は簡単に超えて行ってくれる。安愚楽牧場事件を下敷きにしたエピソードなどを収録。
 初代編集者の強制わいせつ容疑でケチがつかないと良いけどね〜。


「劇場型詐欺」
 売り手と買い手が交互に連絡してくることで、絶対儲かる、とカモに思い込ませる劇場型詐欺。ひまわり銀行の宝条が作り上げた、社会の表裏にわたる集金ネットワークのひとつ、プレシャスファイナンスが行うそれを潰すため、黒崎は桂木の目を盗み、被害者たちにコンタクトする。
 しかし、数多くの被害者にコンタクトするということは、黒崎のコントロールを離れる被害者も出るということだ。その結果、影響は吉川氷柱にまでも及んでしまうことになる。

 かつて家族を奪ったシロサギが、再び黒崎のプライベート周辺に手を及ぼしてきた時、黒崎は何を思うのか?そのあたりの表情の変化がこのエピソードの見どころとなっている。


「和牛預託詐欺」
 被害総額四千三百億円以上。被害者数七万三千人以上。和牛は高い、だから儲かる。そんな曖昧なイメージで都市部のカモを釣り、大量に資金を獲得した詐欺システムが崩壊した。残った資金は50億円しかないとシロサギはいう。そして警察は、この事件を詐欺として立件することに尻込みする。
 債権者説明会に参加し、その被害の壮大さを間近に見た黒崎は、桂木からの指示で、シロサギたちが隠し持っているはずの資金を暴くため、彼らに接触する。隠し金を持ち出そうとする彼らに付け込もうというのだ。

 一方、捜査サイドで現地本部に出向することにした神志名警部補は、この事件を詐欺として立件するための糸口を探し始める。

新クロサギ (14) 震災復興詐欺 (原案:夏原武)

個人と組織の正義論
評価:☆☆☆☆☆
 黒崎の真の仇であり、桂木の仲間でもあり、ひまわり銀行の重役でもある宝条の甥・鷹宮輝が、今回は人権派弁護士を相手に非情な持論を述べまくる。彼の言うことにも一理あると思ってしまう自分もいる訳で、複雑な心境かも。

「震災復興詐欺」
 軽めの震災被害が出た地域を対象として、耐震工事をするなどと言って金をだまし取る工務店に対して、黒崎は彼らの望むものを与えてやることで見事に騙し切る。自分に都合の良過ぎる話なんて、そうそうあるわけもないのにね。

「秘書詐欺」
 組織を守るために小さな悪には目をつぶってもみ消すという体質を利用して、普通の秘書だった女性が坂道を転げ落ちるように詐欺に手を染めていく様子を描く。それに対比して、事態の趨勢を説明するように展開される鷹宮の持論を、読者はどう感じるだろうか。

「劇場型詐欺」
 初めに胡散臭い投資話を持って来て、それが実は有望な投資であるかのように寄ってたかって見せつけて騙すという詐欺の手法が展開される。今回はその導入編。どうやら影には宝条がいるようだが…。

新クロサギ (13) (原案:夏原武)

人の道を踏み外した犯罪
評価:☆☆☆☆☆
「養子縁組詐欺」
 神志名警部補の許に持ち込まれた事件。それは実の両親が子どもを他人の養子にして、その子に保険をかけて保険金を騙し取って分け前を得るという、常軌を逸した詐欺の事件だった。自らの体験を顧みながら、神志名は子どもを食い物にする犯人に挑んでいく。

「裏献金詐欺」
 マルチをネットワークビジネスと言い換えて保護する政治家たちが今回の黒崎のターゲットだ。そしてそれを進めていくうちに、桂木と宝条の政治家を介したつながり、そして犬伏と宝条の関係について黒崎は知っていくことになる。

「震災復興詐欺」
 震災という不幸を利用して詐欺を仕掛ける外道どもが相手だ。火事場泥棒は死罪で良いと思う。

新クロサギ (12) 知的財産詐欺(原案:夏原武)

行動から見る黒崎の変化
評価:☆☆☆☆☆
「カード現金化詐欺」
 犬伏がなぜ法務官僚から弁護士、そして公証人へと職を転々としていったのか、その影はひまわり銀行の影響が…。完結編。

「知的財産詐欺」
 知的財産権の侵害をネタに訴訟を起こし、その和解金をせしめるという詐欺をベースに、桂木と黒崎、白石と黒崎、それぞれの組み合わせの思惑が衝突する。

「養子縁組詐欺」
 神志名警部補のもとに回って来た、生活安全課がらみの事件を調べていくと、子供を養子に出し、交通事故に合わせて保険金を受け取るという詐欺の影が見えて来た。それに黒崎はどう絡むのか?


 今回、黒崎の詐欺の手口には大きな変化が二つあった気がする。ひとつは、黒崎の使う偽名が、本名と少しもかぶっていない羽生になったこと。もうひとつは、スタンガンという暴力的手段を用いたということだ。これらのことは、彼の詐欺師としての姿勢が何か変化したことを意味していると思う。

新クロサギ (11) 詐欺(原案:夏原武)

別れが生む出会い
評価:☆☆☆☆☆
「貧困ビジネス詐欺」  路上生活者に生活保護を申請させ、その金を搾取するシロサギ。さらにはうつ病のふりをさせ、薬品の違法転売まで行う。そんな相手に黒崎は、政府系機構の職員を騙り、支援金を餌に金を回収しようとする。
 そして、黒崎の理解者、岸川との別離の時が迫る。

「出会い工作詐欺」
 元芸能プロのコネを利用して、一般人をアイドルの卵に紹介するといって金をむしり取るシロサギ。その時に結ばれた契約書をコケにするように、黒崎はターゲットをはめるための契約書を作り出す。
 岸川に紹介された公証人・犬伏晴臣との出会い。

「カード現金化詐欺」
 貸金業法改正により借金がしづらくなった主婦やフリーターが殺到する、クレジットカードの現金化。換金性の高いものを購入して転売したり、無価値な商品を買う代わりに手数料を引いた現金を受け取ったりする通常の手法ではなく、ここでメインとなるのはブラックリストに載った人たちをカモとするシロサギ。その手法とは…。

 黒崎に新たなパートナー候補が出現。黒崎はそのもったいつけぶりにイライラするが、彼には彼なりにひまわり銀行を敵視する理由があるらしい。果たして彼らはパートナーとなるのか?

新クロサギ (10) 貧困ビジネス詐欺(原案:夏原武)

自分のことには目が曇る
評価:☆☆☆☆☆
「医療法人詐欺」
 前巻からの続き。医療法人を乗っ取られた医師からの依頼で、乗っ取り屋の理事長を破滅させることになる黒崎。これまでのやり方とは異なり、理事長夫人に取り入って理事会工作に臨む。しかし同じ医療法人には、事務長として白石が関わっていた。

「紳士録詐欺」
 カモの名誉欲を刺激して、10万円程度を継続的にむしり取る紳士録詐欺。今回のシロサギは、素人歌人をカモにした、歌集に掲載することを餌とした詐欺だ。黒崎は、標的の自称歌人としての自己顕示欲を利用し、彼をはめていく。

「貧困ビジネス詐欺」
 黒崎が入院費用を出している岸川の関係者が、生活保護を利用した詐欺を行っているNPO法人に口封じをされた。そのNPO法人を紹介したことに責任を感じる岸川を安心させるため、そのNPO法人を次のカモにする黒崎。しかしそこには、あの男が関わっていた。


 貧困ビジネス詐欺は相当にあくどい。制度を利用してぼろ儲けをするヤツらがのさばり、義捐金をもらったからという理由で打ち切られることもある。公正な制度の維持というのは、なかなかに難しい。

新クロサギ (9) 医療法人詐欺(原案:夏原武)

自分とは違う道を進む者
評価:☆☆☆☆☆
 事業の運転資金を傘下の消費者金融経由で住宅ローンとして目的外に融資し、焦げ付きそうになったら銀行が住宅を抵当に入れて追加融資、最終的には債務者を自殺させて団体信用生命保険で住宅ローンは弁済させ、追加融資分は抵当で回収するというローン詐欺をテーマにしている。他には、素人が手を出すチケットの偽造詐欺、医療法人詐欺を扱っている。
 結局のところ、詐欺は強い方が弱い方を騙す犯罪だ。ローン詐欺では融資してもらいたい債務者側は銀行の言いなりにならざるを得ないし、チケット詐欺ではどうしてもプレミアチケットを欲しいから怪しいのに信じてしまう。そういう心理的なサヤを抜くのが詐欺師という存在なのだろう。

 今回黒崎は、自分と同じ様な境遇に陥りながら、正面から銀行にぶつかって玉砕した女性を助ける。それは代償行為みたいなものに見える。自分とは違うまっとうな方法で対した人を助けることで、自分も救われた気分になる。しかし、その気持ちに反して、もう後戻りできないことを実感する結果になるのだ。

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新クロサギ (8)(原案:夏原武)

目の前にぶら下げられた糸
評価:☆☆☆☆☆
 御木本の件で一線を越えた黒崎の変化の度合いを試すために、指標となるシロサギを与える桂木。自分の手のひらの中で転がし続けようとする桂木と、そこから抜け出そうとする黒崎の、仮面の下の戦いが本格化する。
 小休止を置いて日本での仕事を再開する黒崎に与えられた仕事。その先には銀行屋宝条につながる糸が見つかる。たどるべきか、無視するべきか。黒崎の選択とその結末とは。送り付け詐欺、架空取引詐欺を収録。

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新クロサギ (7)(原案:夏原武)

ひとつの区切り
評価:☆☆☆☆☆
 上海から台湾へ。御木本を追い込む黒崎の仕掛けは続く。そして、二人の現状に違和感を覚えた神志名も台湾へと向かう。
 かつてと立場を逆転させ、狩り立てる側となった男と狩られる側となった男との対決の末路は帯に書かれている通り。ただその過程で黒崎は、神志名と会った時には強大なものに対する諦めに似た感情を吐露し、御木本と対峙した時には強烈な楔を心に打ち込まれる。

 表紙のイラストは、まるで黒崎のデスマスクのように見えなくもない。

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新クロサギ (6)(原案:夏原武)

凄みを増す物語
評価:☆☆☆☆☆
 桂木に察知されないよう、御木本の外堀を埋めていく黒崎は、引導を渡すために上海へと飛ぶ。ただしそれは、これまでとは異なり、自らの命を賭けた騙しあいだ。
 いつもとは違う黒崎の話し方や、ポーカーフェイスが崩れた桂木、追い込まれていく御木本の表情の変化など、題材となる詐欺だけでなく、物語自体も凄みを増している。
 環境投資詐欺3〜6、資金回収詐欺1〜5、ECO詐欺1〜2を収録。

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新クロサギ (5)(原案:夏原武)

鳥かごを食い破るために
評価:☆☆☆☆☆
 黒崎の本来の復讐の対象である御木本を追い詰めるための罠を張り巡らし始めた。桂木の目を盗み、白石と情報共有をして、御木本の計画に必要な詐欺企業をひとつひとつ潰す黒崎。
 有名人ならば信用できる/有名人になりたいという漠然とした心理/希望を利用した詐欺、公共事業の落札価格を知りたいという建設業者の心理を利用した詐欺、そしてエコという単語がつけば無条件に良いことだと思い込んでしまう心理を利用した詐欺、様々な詐欺師をこれまでと同様に喰らいつつも、桂木の思惑を超えようとする黒崎の行動は、これまでにも増して緊迫感を感じさせてくれる。

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新クロサギ (4)(原案:夏原武)

鷹宮助教の黒い影
評価:☆☆☆☆★
 制度融資詐欺のエピローグ、投資顧問詐欺、詐病詐欺、有名人詐欺のプロローグを収録。この作品を読むと、変な話、詐欺師ってよく色々な制度を勉強しているなあ、と感心してしまう。もしかすると、制度を作った人間や法律家よりよく知っているのではなかろうか。

 詐欺師は自分が儲けるためにこういう勉強もがんばるってだますのだろうが、騙される側はなぜ騙されるのだろう?
 一番分かりやすい理由は欲だろう。人より儲けられる、という自分にとって理想の未来を信じさせられてしまう心のすきまに詐欺師が付け込んでくるわけだ。投資顧問詐欺なんかもそれで理解できるだろう。しかし、それだけでは制度融資詐欺や詐病詐欺を理解することはできない。
 ここで騙されるのは社会保険庁などの公的機関や保険会社だ。これらは公共サービスの向上や利潤の追求をしているかもしれないが、詐欺師に直接的にだまされる担当者だけの得になるように行動する組織ではない。だから、担当者個人の欲に付け込む形で騙すのではなく、担当者自身のお金でないことによる無関心や、制度設計上のすきまに付け込む。

 孫子は敵を知り己を知れば危うからずと言ったが、ボクは敵(=詐欺師の努力)を知り、己(=自分の欲や社会制度)を知れているだろうか。どちらかが欠ければ百戦百負することになってしまいかねない。
 そういう意味でこの本は、敵の一端を知ることができる本だと思う。

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新クロサギ (3) (原案:夏原武)

会社を立て直すためのお金で生活を立て直す
評価:☆☆☆☆☆
 もともと詐欺は知能犯罪だけれど、最近取り扱う題材は、特に知能犯的な、そして組織的な傾向が顕著になってきたように思う。今回は、導入詐欺、留学詐欺、融資制度詐欺を扱っているけれど、2番目は世間で話題になったものであり、1番と3番は信用度の高い組織の看板がカモを信用させるカバーになっている、という特徴がある。
 再登場する詐欺師、神志名と鷹宮の確執、詐欺師をつぶすために詐欺をしながら一方で別の詐欺師の利益になるという矛盾。詐欺のシステムが複雑化高度化するのに合わせて、黒崎の心の中もより複雑に絡み合っていくようだ。

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新クロサギ (1) (原案:夏原武)

仕切り直し
評価:☆☆☆☆☆
 新しい読者を意識して、盛り上がりを期待させる構成になっています。ただ、印象で言うならば、これまでは比較的規模が大きく、法律のギリギリを渡る様な、知的犯罪としての詐欺を多く扱ってきた気がするのですが、今回に限って言うと、シロサギの行動は粗野で稚拙なものが多い気がします。なので、黒崎の儲けもかなり控えめ。今後どのように展開していくかはわかりませんが、ほんの少し、体制批判というか制度批判的なことも加味していくのかもしれません。
 二重詐欺、運送詐欺、必勝法詐欺、当選詐欺(前篇)を収録。

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クロサギ―戦慄の詐欺サスペンス (11) (原案:夏原武)

リスクを取らず儲けるやつが一番きたない
評価:☆☆☆☆☆
 詐欺って他人からの信頼を換金する行為なんだ、と考えさせられた。自分のことを分かってくれる人だったり、弁護士だったり、医師だったり、だますためにはあらゆる物を利用して自分のことを信用させなければならない。そして、信用が得られた瞬間にそれをひっくり返す。そのときに感じるのは、寂しさなのか、金への欲望なのか、だましきった快感なのか。
 いつも人を疑ってかかるのは非常に疲れる生き方だ。無意識のうちにルールは守られるという前提で生きている。でも、人が創造もしないことだからそこにチャンスが生まれる。そう考えるのが詐欺師なのだろう。3億円騙し取って懲役6年なら年収5千万円という考え方には、一瞬納得させられてしまったのが不覚だ。

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クロサギ―戦慄の詐欺サスペンス (10) (原案:夏原武)

つながるだけでいい
評価:☆☆☆☆☆
 ブランド商品にまつわる詐欺と投資ファンドにまつわる詐欺。人が心を揺さぶられるものには必ず騙す人がいて騙される人がいる。みんな知っているけれど詳しくはないという、知識の格差が詐欺のタネになるのだと思う。
 今回は黒崎の心を揺さぶる事件だったなぁ。氷柱の家族には自分の家族の姿を重ねてしまったし、小柴にはクロサギをやる動機を揺さぶられてしまった。お金だけを見ていれば心なんていらないだろうけれど、お金の周りには必ず人がいる。その人達が黒崎にどんな影響を与えていくのだろうか。

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