雲田はるこ作品の書評/レビュー

昭和元禄落語心中 (10)

評価:☆☆☆☆☆


昭和元禄落語心中 (9)

評価:☆☆☆☆☆


昭和元禄落語心中 (8)

落語への情熱の喪失
評価:☆☆☆☆☆
 倒れた八雲は落語への情熱を失くしてしまった。周囲が過去の姿を追い求め、情熱を取り戻させる方法を探すうち、あの事件の真相が明らかになっていく。

昭和元禄落語心中 (7)

一転
評価:☆☆☆☆☆
 一気にお茶の間の人気者となった三代目助六こと与太郎。小夏も望む仕事に就き、幸せな日々が過ぎていく。そんな時、八雲から親子会で「居残り」をかけるように命じられる助六なのであった。

昭和元禄落語心中 (6)

親と子
評価:☆☆☆☆☆
 真打へと昇進した三代目有楽亭助六だったが、落語家崩れの小説家から自分の落語を、と言われ、自分の落語が何か分からなくなってしまう。感覚でやってきたものを、頭で考えて分からなくなってしまったのだ。
 そんな時、小夏が生んだ子供の父親の正体が明らかになる。

 そして自分の落語というものの姿がおぼろげに見え始めた与太郎は、親子会をと求め出た師匠の八代目有楽亭八雲に、ある条件を課されるのだった。

昭和元禄落語心中 (5)

先細る大衆芸
評価:☆☆☆☆☆
 なぜ二代目有楽亭助六とみよ吉は死んだのか。なぜ小夏は八代目有楽亭八雲に引き取られたのか。その事実が明かされる過去編完結編。
 そして物語は与太郎へと戻る。いよいよ真打昇進が決まった与太郎は、三代目有楽亭助六襲名を八代目有楽亭八雲に願い出る。一方、小夏はといえば…。

昭和元禄落語心中 (4)

醜い嫉妬
評価:☆☆☆☆☆
 二ツ目から真打ちとなった菊比古は、玄人好みの落語をかける名人候補として脚光を浴びるようになった。一方、七代目有楽亭八雲から破門された助六は、呼んでくれる寄席もなく、落語自体が出来なくなっていく。そして、みよ吉と共に彼女の田舎へと去って行ってしまった。
 助六の落語に惹かれ恐怖し誰よりも評価する菊比古は、自分に八代目を継がせようとする七代目を事あるごとに説得し、助六の破門を説いてくれるようこいねがう。それに対して七代目が吐露したのは、八雲と助六という名跡にまつわる懺悔だった。

 七代目が他界し、暫く高座を休めることになった菊比古は、みよ吉から届いた便りを辿り、田舎の温泉街に辿り着く。寄席を求めて探し歩く菊比古が至った蕎麦屋にいたのは、落語をする幼女、小夏だった。

 いよいよ八雲と助六にまつわる回想はクライマックスの入り口へと到達した。うらぶれながらも良好だった彼らの関係が壊れる切っ掛けとなったのは何だったのか?それが明かされるのは次巻だ。

昭和元禄落語心中 (3)

有楽亭八雲の名が結ぶ縁と怨
評価:☆☆☆☆☆
 戦争が終わり、ようやく落語に専念できる時代が来た。有楽亭助六は汚い身なりで女癖が悪いために落語界の長老からは眉をひそめられるものの、何よりも芸に華があり、客からの人気は上々だ。一方、同じ二ツ目であり、後の八代目有楽亭八雲である菊比古は、助六と比べて華がないことに悩み、自らの芸の道を確立できずに悩んでいた。
 そんなとき、前座、二ツ目を寄せ集めた鹿芝居で、菊比古は弁天小僧菊之助を演じることになる。後の小夏の母であるみよ吉に化粧をしてもらい、見目麗しくはなったものの緊張する菊比古に対し、助六は魔法をかける。そこから現在の八雲へつながる道が始まったのだ。

 だがそれは一方で、三人の関係を変えていく一歩ともなった。そしてついに至る怨念が形をとって現在まで続く。

 華はありながら鼻つまみ者の助六に対し、長老の覚えめでたい優等生の菊比古という対比。その枠組みからはみ出したいという羨望と、自らの天稟の限界を悟る挫折。祝福されない恋心と落語の天秤。それぞれは別々の出来事ではあるが、たまたま近くに寄り集まり、そして譲れない思い同士であるからこそ、誰も望まない形に落着して行くという悲劇がここにある。
 ただの名前でありながらただの名前でない有楽亭八雲が、戦後の若者たちを結びつけ、切り離していく。

昭和元禄落語心中 (2)

こうして物語は始まった
評価:☆☆☆☆☆
 八代目有楽亭八雲師匠に弟子入りした元やくざの与太郎は、前座になって落語を学んでいくに従って、師匠の落語が自分には出来ないと思い知らされて来ていた。そんな彼が目を付けたのは、小夏の父である有楽亭助六だ。彼の軽妙で洒脱な語り口は自分に合っている気がする。でも何かが違う。
 そんな悩みに囚われていた与太郎は、八雲師匠の独演会であり得ない大失敗をやらかし、ついには破門をもし渡されてしまう。

 寒い雪の日に門前にしょんぼりする与太郎を見かねた小夏が八雲師匠に取次いでくれ、何とか勘気を解くことが出来たものの、復帰に三つの条件を出された。そしてそれは、助六師匠と八雲師匠の約束に関わるものだった。
 与太郎の大失態から、物語は過去の回想編へ。八雲師匠が語る助六師匠との出会いが描かれる。

昭和元禄落語心中 (1)

昭和の落語の煌き
評価:☆☆☆☆☆
 今は昔の古き良き昭和の香りが残る時代。模範囚だった元やくざの与太郎が出所してすぐに駆けつけたのは寄席の雨竹亭。慰問に来た八雲師匠の落語に惚れこんだ与太郎は、弟子にしてもらおうというのだ。
 しかしこの八雲師匠、今まで一人も弟子をとったことがないという変わり者。早世した名人・有楽亭助六の忘れ形見・小夏を引き取りつつも、他人を寄せ付けない様な空気を振りまいている。だが、高座での芸は当代一流!

 何の気まぐれか弟子にしてもらえた与太郎だが、ちっとも稽古をつけてはもらえない。姐さんと慕う小夏の癇癪にも振り回される。しかし与太郎は、どれだけ冷たくされてもちっともめげず、周囲に愛嬌をふりまいていく。

 小夏の父親と八雲の間にある過去の因縁を底に敷きつつ、その上で名人・八雲の落語のすごさを描きながら、彼の唯一の弟子となった与太郎の奮闘を語る。八雲の落語には、指先まで気を使った様な所作の名人芸が光っている。

ホーム
inserted by FC2 system