ぴんとこな (10)
- BLな二人
- 評価:☆☆☆☆★
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河村恭之助は澤村一弥と共演で「桜姫東文章」の清玄と権助の二役を務めることになるはずだった。しかし、西田屋の御曹司である完二郎が、河村恭之助の練習不足を見て取り、自らが代役を務めることを宣言する。
それに不満を抱いた澤村一弥は、自らの気持ちをいぶかりながら、完二郎を昏倒させて行方不明とし、代役の代役として河村恭之助を舞台に復帰させ、彼を元気づけるために千葉あやめを連れてくる。
こうして舞台の幕が上がった。目の肥えた客や歌舞伎界の重鎮が見守る中、河村恭之助は難しい二役を演じきることが出来るのか?そして、犯罪に手を染めた澤村一弥の運命は?
ぴんとこな (9)
- 繋がる瞬間
- 評価:☆☆☆☆☆
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澤村一弥との共演で、河村恭之助は「桜姫東文章」の清玄と権助という、真逆の役を共にやることになった。しかも権助は女を誑かす役柄で、恭之助にはその気持ちがよく分からない。
一弥の提案で合コンに参加したりするものの、千葉あやめを一番に思う恭之助には、誰でも良いという気持ちが理解できないのだった。
一方、河村家に居候するあやめは、河村猛の母親に彼女自身の甘えを指摘され、思わず家を飛び出してしまう。その頃、一弥の不義を知った恭之助は、潔癖症ぶりを発揮し、一弥との間がギクシャクしてしまう。
ぴんとこな (8)
- 嫉妬あふれるBL展開
- 評価:☆☆☆☆★
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千葉あやめと同居することになり、公私ともに調子のよい河村恭之助を見て、澤村優奈との婚約を果たした澤村一弥は嫉妬に駆られる。自分がこれほど恭之助を気にしているというのに、相手は自分が切り捨てた女に首ったけだというのだ。
轟屋を襲名することが決まったお披露目を兼ねての地方公演に出かける一弥は、その嫉妬といら立ちを込めて、恭之助に対して言葉をぶつける。その言葉を正面から受け止めてしまった恭之助は、自分の誕生日を祝うために準備するあやめを尻目に、ある行動をとるのだった。
相も変わらずドロドロな展開を見せる澤村家の内部と、「桜姫東文章」での共演が決まり、なぜだかBLな展開に突き進みつつある恭之助と一弥。このまま一体どこへと行きついてしまうというのか?
ぴんとこな (7)
- 伝えたい想いを芝居に乗せて
- 評価:☆☆☆☆☆
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恋仲だった田舎娘を捨て、奉公先のお嬢さまを選ぶ男の物語である「野崎村」の捨てられる田舎娘であるお光を演じることになった河村恭之助は、そこに、御曹司となるために轟屋の令嬢・澤村優奈を選んだ澤村一弥と、彼のために身を引いた千葉あやめの姿を見出し、演技を以って自虐するあやめの心を慰めようとする。
しかし、まじめに練習もせず、立役しかしたことがなく、女形の経験がない恭之助に対し、共演する高島屋の竹兄弟は協力する気になれない。顔が良いだけで客席からちやほやされる恭之助に対する嫉妬もあるのだ。
そんな不利な状況の中、恭之助はあやめに想いを伝える歌舞伎を演じることが出来るのか?
筋立てを丁寧に掘り下げ、そこに見るものの境遇を当てはめ、読者が共感する環境を作り上げる。そうして至った結末だからこそ、そこから始まる変化に読者もついていこうとするのだろう。
四人の少年少女は揺れる想いを抱えつつ、安定とは程遠いどこかへ向かって動き出す。
ぴんとこな (6)
- 積み重ねて理解する
- 評価:☆☆☆☆☆
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澤村一弥を歌舞伎界に引き戻すことに成功した河村恭之助に次に回ってきたお役は、「野崎村」のお光、女形だ。立役しかしたことのない恭之助にとっては未知の領域だが、千葉あやめの心をつかむため、女心を頑張って学ぼうとする。
一方、千葉あやめを諦め歌舞伎を選択した一弥は、轟屋の令嬢・澤村優奈との婚約を決め、御曹司として新たに歌舞伎の舞台を踏もうとしていた。
恋仲だった田舎娘を捨て、奉公先のお嬢さまを選ぶ男の物語である「野崎村」を、驚嘆すべき鈍感さにより全く意識することなく、自分の周囲の人たちの関係を写すことで、恭之助は理解していく。この構成はシリーズ初期に立ち返ったもので、歌舞伎を導入している意味が分かりやすい。
色々と気持ちと関係がねじれたまま、ついに「野崎村」の幕が開く。その内容は次巻へ。
ぴんとこな (5)
- 今度は逆に
- 評価:☆☆☆☆★
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せっかく歌舞伎に情熱を取り戻した河村恭之助だったが、彼にやる気を出させた歌舞伎俳優の澤村一弥は、千葉あやめに突き放されたことでやる気をなくし、歌舞伎俳優を辞めると言い出してしまった。張り合いをなくした恭之助は、一弥を歌舞伎に引き戻すため、あの手この手を尽くす。
一方、一弥が歌舞伎界から離れる引き金を意図せずに引いてしまった澤村優奈は、彼女が手駒に使った門閥外の歌舞伎役者・梢六に逆に良い様にされていた。
どちらか一方がただ引上げる関係は、ライバルとはなりえない。お互いがお互いに良い影響を及ぼし、引っ張り上げるからこそライバルと呼ばれるのだ。恭之助は一弥に引っ張り出される一方だったが、今度は恭之助が一弥を引っ張り出そうとするのが今巻の中核となっている。
それにしても優奈は、負のスパイラルに足を突っ込んでしまった感じ。どうやったら抜け出したことになるのかな?
ぴんとこな (4)
- 一弥の攻勢、そして
- 評価:☆☆☆☆★
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舞台を成功させ復活ののろしを上げた河村恭之助は、千葉あやめを巡る関係で、澤山一弥に宣戦布告する。それを受けて不安になった一弥はあやめに急接近。その事実に危機感をあおられた澤山優奈は、あやめに一弥を諦めさせようとする。
今巻は日常恋愛モードに全力!あやめに急接近する一弥をよそに、恭之助は歌舞伎の稽古に力を注ぐ。そして一弥があやめに傾いていることを感じ取った優奈は、ダメなお嬢さまを全開にして妨害工作に走っちゃう。
次巻は歌舞伎の場面をもっと一杯出して欲しいな。巻末には短編「うたたかの未来」を収録している。かなりブラックな短編かも。
ぴんとこな (3)
- そして再び花開く
- 評価:☆☆☆☆☆
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千葉あやめと出会ったことで歌舞伎に情熱を取り戻し始めた河村恭之助は、彼女の気を惹くために稽古に熱を入れ始める。そんなとき、あやめが過労で倒れ、恭之助はバイトの代行と彼女の世話をすることになる。しかし、そこに澤山一弥があやめの部屋を訪ねて来て…。
一転、再び歌舞伎への情熱を失いかけた恭之助だったが、「棒しばり」で一弥との共演の話が進んだことで、彼に引きずられる形で、厳しい稽古に突っ込まれることになる。
敵役としての澤山優奈は素晴らしいな。作者の怨念が感じられる。同じ様な人に何か痛い目にあわされたのかな?
ぴんとこな (2)
- 昇るは沈む
- 評価:☆☆☆☆☆
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始めた動機がほとんど同じか〜。2巻は丸々、澤山一弥こと本郷弘樹サイドのストーリーが展開される。
小学校の行事で歌舞伎をすることになった本郷弘樹は、千葉あやめと知り合うことになる。真面目で頑張り屋の優等生というだけだった本郷弘樹は、まるで父親の遺訓に従うように、悲しい表情をするあやめの涙を止めるため、歌舞伎を頑張ることにする。
しかし直後、二人は別れ別れに。そして轟屋の内弟子になった本郷弘樹は、師匠の娘である澤山優奈に好かれてしまう。そして、まるで、恋飛脚大和往来「封印切」の遊女・梅川の様に健気に尽くしてくる優奈に絆されていく。その後、1巻のラストに続く訳だ。
歌舞伎の演目と登場人物たちをクロスオーバーさせるような演出が、ずぶずぶと深みにはまっていくような業の深さをより強調している。
ぴんとこな (1)
- 的確に褒められたいという欲求
- 評価:☆☆☆☆★
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高校生の河村猛は、歌舞伎の名門・木嶋屋の御曹司だ。河村恭之助といえば、声・顔・姿・家柄・人気と五拍子揃った役者として世間では見られているが、しかし、ある時から本人にやる気がなくなり、見る人が見れば手抜きの芸と分かってしまう芝居しかしていない。
それがあるとき、同級生の千葉あやめに芝居を酷評されたことをきっかけに、風向きが変わって来る。気にしないと言いつつも的確に自分を見抜き、酷評されつつも一部を褒められたことで、彼の中の何かに触れたのだ。そして彼女に恋に落ちてしまう。
しかしあやめには、子どものころからずっと好きだった人がいる。それが何の因果か門閥外の歌舞伎役者、本郷弘樹だ。真摯に歌舞伎に取り組む彼の芝居を見た河村は、自分で自分の負けを悟ってしまい、自分も歌舞伎にきちんと向き合うようになる。
歌舞伎でビシッと閉まる部分と、日常のラブコメでくたっとなる部分が絡み合っている。前半は後者がダレ過ぎていてアンバランスに感じるが、真面目に取り組み始める後半からはいいバランスになって行っている気がする。