篠原ウミハル作品の書評/レビュー

図書館の主 (9)

意識高くて悪いか?
評価:☆☆☆★★
 宮本の過去がちょっと明らかになったり、情緒不安定になったお母さんが出てきたりする。

図書館の主 (8)

共感の媒介
評価:☆☆☆★★
 桐ケ谷高校児童文化研究部の森下と御子柴の妹である津久井桂が三度持ち込んできた子供向け人形劇の題材はクリスマスキャロルとなった。それに関連して御子柴は父親のことに思いを致す。
 「にんじん」にまつわるあれこれや、幼女に好かれた児童書作家を目指す書店員の伊崎のあたふたなどを描いている。

図書館の主 (7)

受け手の思い込み
評価:☆☆☆☆☆
 取引相手に連れられてキャバクラへ行ったタチアオイ児童図書館常連の宮本は、司書・神田みずほの姉の神田さなえに出会う。翌日、偶然図書館で再会した二人の様子を見て、神田みずほ疑念に駆られるのだが…。
 司書の板谷夏夜の自衛官時代の同僚が部下を連れてきたり、桐ケ谷高校児童文化研究部の森下と御子柴の妹である津久井桂がお悩み解決をしたりする。

図書館の主 (6)

出来ることと出来ないこと
評価:☆☆☆☆☆
 御子柴と司書課程の同窓である竹花は、恩師の相模原が御子柴のことばかり気にかけているのが気に食わない。もっと端的にいえば、嫉妬している。その嫉妬が思い余って、御子柴に厳しい言葉を投げつけてしまう。
 そんな御子柴の様子がおかしいことに気付いた常連客の宮本は、司書の板谷夏夜にたきつけられ、御子柴から悩みを聞きだそうとする。そこに、オーナーと一緒に竹花がやって来て…。

 児童書作家を目指す書店員の伊崎を持ち込みでボコボコにした編集が登場したり、桐ケ谷高校児童文化研究部の森下と、御子柴の妹である津久井桂が再登場したりする。

図書館の主 (5)

思い出の中の自分
評価:☆☆☆☆★
 タチアオイ児童図書館に通う玲央に弟か妹ができることになった。それを聞いた常連の金子は、羨ましがるふりをして上司の宮本にアプローチするが、全く相手にしてもらえない。ところが、娘の金子理沙は、それを聞いてこっそりと図書館を抜け出し、大冒険に旅立つことになる。
 神田みずほが受けた、夫を亡くした老女に対するリファレンスの顛末や、オーナーの小手川葵の高校生時代のエピソード、御子柴の過去にまつわる人物の登場などが描かれる。

 さすがに、児童書ネタで毎回話を作るのが大変になったのか、長めのシリーズが増えて来ている。次巻に続くエピソードになりやすいので、単行本収録を考慮した話作りをして欲しいかもしれない。

図書館の主 (4)

それぞれの読み方
評価:☆☆☆☆☆
 最近、宮本がタチアオイ児童図書館に姿を見せなくなった。彼がやってくるのを待ちわびる神田みずほは少し寂しい。
 特に何かがあった訳ではないものの、他人と見比べて自分の生き方に疑問を持ったとき、他に何かやるべきことがあるのではないかと思ってしまったのだ。そして足は児童図書館から遠のく。

 偶然、街中で出会った神田の言葉により、再びタチアオイ児童図書館の扉を開けた宮本は、御子柴から一冊の本を薦められる。それはサン=テグジュペリ「星の王子さま」だった。

 大人のための児童書という視点の話と、大人の目から見た子供という視点の話、子供から見た大人という視点の話に分けられる気がする。
 本を読むときには、本を通して自分を見つめ直しているのかも知れない。それは違う視点から自分を見ると言うこと。それによって自分の新たな解釈を見つけられれば、迷いというのは実は大したことではないと思えるのかも知れない。

図書館の主 (3)

異なる言葉、同じ感想
評価:☆☆☆☆☆
 桐ケ谷高校児童文化研究部の森下が、御子柴の妹の津久井桂を連れてタチアオイ児童図書館にやって来た。クリスマスのイベントの手伝いをするためだ。久しぶりに再会した兄に感情的に反発する桂だったが、イベントを通じて子供たちと触れ合うことにより、幼いころの兄との関係を思い出し、現在の兄に理解を示すようになる。
 宮本が聞く御子柴の家の事情や、玲央の父が連れてきたアメリカ人の子供クリスと翔太の関係、書店員の伊崎と金子のつながりなどについて、本を絡めて描いている。

 今回は児童書本来のターゲットらしく、子供同士の関係が描かれている部分のウェイトが大きい。

図書館の主 (2)

本に託して贈られる思い
評価:☆☆☆☆☆
 タチアオイ児童図書館に通うサラリーマンの宮本が、部下の女性の金子とその娘の理沙を連れてやってきた。宮本は単なる部下としてしか見ていないが、金子は宮本を狙っているのが見え見えだ。板谷夏夜はその様子を見て神田みずほを炊きつける。
 神田みずほの宮本アタック大作戦や、板谷夏夜の家庭の事情と宮沢賢治「貝の火」の関係など、司書のプライベートにまつわるエピソードが目白押し。そして最後には、御子柴の妹である津久井桂がやってくる。

 図書館と書店の関係のエピソードも挟み、出版不況における図書館の役割についても考えさせられる。そして、本に託して贈られる思いについても。

図書館の主 (1)

本をバトンとする、人と人のリレー
評価:☆☆☆☆☆
 公園で酔いを覚ましていたサラリーマンの宮本は、その脇にある図書館がまだ営業していることに気づく。タチアオイ児童図書館という、その私設図書館に足を踏み込んだ宮本を出迎えた司書の御子柴は、いきなり、酔っ払いは帰れと追い出しにかかった。
 それでも帰らない宮本に対し、御子柴は一冊の本を押しつけ、書架に戻すようにいう。その本は「新美南吉童話集」だった。その中の「うた時計」を読み、宮本は自分の半生を思い出す。

 児童書専門の私設図書館で司書を務める御子柴が、本に呼ばれて来た人たちに本を紹介していく。呼ばれた人たちは子供ばかりとは限らず、ふらりと立ち寄る大人や、子供に付き添ってくる親だったりする。
 御子柴の同僚である板谷夏夜や神田みずほと、宮本の交流を軸として、新たな来訪者たちの人生観は、御子柴に勧められる児童書を通じて変わって行くのだが、そんな彼自身も、徳さんという司書や、オーナーの小手川葵との出会いを通じて、人生を変えられてきているのだ。

 本をバトンとする、人と人のリレーが紹介される物語だ。

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