武田日向作品の書評/レビュー

異国迷路のクロワーゼ (2)

つないだ手を離さない様に
評価:☆☆☆☆★
 パリの一角、ロアの看板店(アンセーニュ・ド・ロア)に奉公することになった日本人少女、湯音(ユネ)は、これまでの疲労が小さな身体に積み重なったのか、風邪をひいてしまう。
 主人のクロードの看病で回復したものの、なぜかクロードはユネを働かせたがらない。その理由はどうやら、過去の出来事にあるようだ。

 信じているから、という理由で何も聞かないのは、ある意味で責任を放棄しているともとれなくもない。何かあったのときに、信じていたのに裏切られた、という形で、責任を相手に押し付けることができるからだ。
 そしてそれとは違う信頼のかたちも当然ある。それは、相手のことを知り、十分理解した上で預ける信頼のこと。それはとても難しい。


異国迷路のクロワーゼ (1)

パリの日本人少女
評価:☆☆☆☆★
 19世紀後半のパリにある、もはや時代遅れとなりつつある商業施設・ロアの歩廊(ギャルリ・ド。ロア)にひとりの日本人少女がやってきた。彼女の名は湯音(ユネ)。彼女は奉公先として、ちょうど日本に買い付けに来ていたロアの歩廊の一角にある鉄工芸品店、ロアの看板店(アンセーニュ・ド・ロア)を選んだのだ。
 しかし、彼女を連れて来た祖父とは違い、現在店を預かる孫のクロード・クローデルは、彼女が店で働くのを好まない。いきなり日本から来た彼女が、この店の歴史を尊重できるとは思えないからだ。そんなクロードに対しユネは、自分の誠意を伝えていく。

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