千田衛人作品の書評/レビュー

花咲くいろは (3)(P.A.WORKS)

旅館の仲居が女将さんのノートを読んだら
評価:☆☆☆☆★
 喜翆荘での仲居生活にも慣れ、女将さんにも認められるようになってきた松前緒花は充実していた。そして、女将さんの理想とする、お客さんを第一に考えた接客に共感するようになっていく。
 そんなとき、湯乃鷺温泉が雑誌記事で特集されることに。それに呼応するようにして、喜翆荘も手が回らないほどの忙しさになっていく。だが、突然、女将さんが倒れてしまい、喜翆荘はピンチに陥る。

 そこで泥棒猫さながらに登場するのが川尻崇子だ。番頭の四十万縁の大学の後輩で経営コンサルタントだという彼女は、お客さんに差をつけ、重要そうな客に重点的にサービスして乗り切ることを提案する。
 だが緒花にはそれが納得できない。富樫蓮二と鶴来民子だけでは回らない板場を何とかするため、輪島巴と押水菜子に接客を任せ、非番で結婚式に出席している宮岸徹を連れてくるため、金沢まで急ぐ。その時、緒花の許に種村孝一から電話がかかって来る。

 仲居としてのロールモデルを見つけた緒花が、その理想になるため奮闘し始める。だがそれと同時に、東京に残して来た種村孝一が湯乃鷺にやって来て、すれ違いが発生してしまうのだ。
 もうひとつは、仲居の先輩である押水菜子が自分を変えようとする話。そして、自分に合った仲居としてのあり方に気づいてく。

 川尻崇子の、女将さんのいない間に何かをやろうとする泥棒猫みたいな行動は、アニメに比べて拍車がかかっている気がする。こちらでは緒花にかぶせられて、全く存在感がないな。一方で、菜子はほどほどに存在感を出している気がする。


花咲くいろは (2)(P.A.WORKS)

アニメ版と成熟度が違う
評価:☆☆☆☆★
 アニメ版に比べてかなり構成が変わっている気がする。それに、キャラクターの成長度もかなり違う。一番顕著なのは、鶴来民子だと思う。
 アニメでは基本的に松前緒花がダメな子で、仕事に対する真剣味もなく、そのくせ自分の価値観で人さまの事情に押し入り、だいたい役に立たないのだけれど、ちょっとだけ素人なりの価値を見せるというのが初期のパターンだった。それに対し、民子は覚悟を持って板前修業に励んでいて、自分の想いと仕事の区別がしっかりできる子に描かれていた。

 しかしここでの民子は、ある意味で緒花と同レベルに描かれている。板場を放って宮岸徹に会いに緒花についていくなんて、アニメの民子からは想像もできない対応だ。別にそれが良い悪いというのではなく、マンガ版では、女子高生たちの成長物語を重点に置いたということなのだろう。
 でも今のところ、押水菜子は、アニメ版と変わらないキャラになっています。もしかするといない子扱いなのかもしれないけれど。

花咲くいろは (1)(P.A.WORKS)

働くということ
評価:☆☆☆☆★
 松前緒花、16歳!突然のことですが、湯乃鷺温泉にある旅館・喜翆荘で暮らすことになりました。東京のゴミゴミした喧騒を離れ、ドラマの中にある様な温泉旅館で出会う、非日常の体験…。
 そんな妄想をふくらませてやってきたのに、現実は旅館の雑用係。何をやっても怒られてばかりで、心の中のもやもやが止まりません。だいたい、女将は私の祖母のはずなのに、なんであんなに厳しいの?

 働くことを知らない女子高生が、突然、客商売のど真ん中に放り込まれて、お客様中心の価値観にぶつかりながらも、同年代の鶴来民子や押水菜子たちと互いに影響を与えあいつつ、成長していく物語。
 アニメ「花咲くいろは」のコミカライズ版。緒花が廊下掃除をしていて悟る場面は、最近、駅の階段掃除をやっている人に見て欲しいくらい。

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