天道グミ作品の書評/レビュー

ヘルズキッチン (13)(西村ミツル)

天厨士
評価:☆☆☆★★
 期末考査を前に赤点の危機に震える守屋悟は、みんなに協力を要請する。お姉ちゃん登場。
 一方、悪食伯爵ドグマは蠅の王ベルゼブブの姦計にはまり、信念に反して栄養のための食事をとらなければならない羽目に陥る。

 最高の料理人の魂に最も近い天厨士とは?

ヘルズキッチン (12)(西村ミツル)

奴隷のサービス
評価:☆☆☆☆★
 一ノ瀬初夏に恋するサービサー、百舌恭介と出会った守屋悟は、そのサービスの凄さに圧倒される。だがそのサービスを奴隷のサービスと断じる悪食伯爵ドグマにはめられ、彼とサービス勝負をすることになってしまった。しかも負ければ、二度と一ノ瀬初夏に話しかけることができない。その勝負の結末は?
 雪が降った日に学園の森の奥に沸くという願いがかなう温泉を巡って争われる戦いや、のんびりお菓子好きの先生に隠された過去等が描かれる。

ヘルズキッチン (11)(西村ミツル)

食専の日常
評価:☆☆☆☆☆
 パンが好き過ぎて周りが見えない少女、五島ひまりが騒動を引き起こし、森崎要が朝食勝負をすることになる。また、雲居蜜郎の幼なじみでヤクザの組長の三男の空木文吾が現れ、雲居蜜郎を仲間に誘う。

 そして、守屋悟の片思いの相手であるサービス学部に入学した一ノ瀬初夏と、サービス学部のエースである百舌恭介が登場する。

ヘルズキッチン (10)(西村ミツル)

訴えかけるもの
評価:☆☆☆☆☆
 応用生物学部長の《科学遺産》ユーリ・ドラグノフの調理不要論が間違っていることを証明するため、守屋悟、半井義淵、森崎要、秋山エレ、美波サガネ、松尾ミカヅキ、レヴィ・ゴルゴダ、雲居蜜郎ら調理学部の生徒たちは、視覚担当・東条ラウジ、聴覚担当・西園寺舞、味覚担当・北方秀次、触覚担当・星南トウカ、そして嗅覚代表・立花京と勝負をすることになった。
 一勝三敗で迎えた最終戦。本来ならば調理学部の負けは決定しているのだが、ユーリの提案で、最後の嗅覚勝負の行方で結末が定まることになる。対決するのは、守屋悟と立花京だ。

 悪食伯爵ドグマの特訓で実力を上げたはずの守屋悟は、一言も発せず、目の前で悪臭を放ちながら調理する立花京を前に、椅子に座ってじっと手を握りしめている。果たして彼は何をしようとしているのか?

 確かに、守屋悟の料理を見たら、おんなじようなことを考えてしまったな。

ヘルズキッチン (9)(西村ミツル)

誇りを賭けた戦い
評価:☆☆☆☆★
 応用生物学部長の《科学遺産》ユーリ・ドラグノフの調理不要論が間違っていることを証明するため、守屋悟、半井義淵、森崎要、秋山エレ、美波サガネ、松尾ミカヅキ、レヴィ・ゴルゴダ、雲居蜜郎ら調理学部の生徒たちは、視覚担当・東条ラウジ、聴覚担当・西園寺舞、味覚担当・北方秀次、触覚担当・星南トウカ、そして嗅覚代表・立花京と勝負をすることになった。
 一勝一敗で迎えた第三戦は、天才と称される半井義淵と北方秀次の対戦となった。材料は、農学部長の戒田真土が提供した、とてつもなく苦いゴーヤと渋柿だ。それを用いて作るのは、苦みの対極にあるスイーツ。果たしてどんな勝負になるのか?

 一方、ユーリ・ドラグノフによって覚醒させられた立花京は、悪食伯爵ドグマの正体に気づく。そこに守屋悟がやって来て、調理はいらないという立花京に挑戦状を叩きつけるのだった。守屋悟にも覚醒の時がやってくるのか?

ヘルズキッチン (8)(西村ミツル)

偽物は本物を駆逐するか?
評価:☆☆☆★★
 応用生物学部長のユーリ・ドラグノフの野望である、世界から調理を無くすという方針に反発し、悪食伯爵ドグマの企みによって調理学部の代表となった守屋悟、半井義淵、森崎要、秋山エレ、美波サガネ、松尾ミカヅキ、レヴィ・ゴルゴダ、雲居蜜郎らは、応用生物学部の代表である視覚担当・東条ラウジ、聴覚担当・西園寺舞、味覚担当・北方秀次、触覚担当・星南トウカと対戦することになった。嗅覚代表は、調理学部の立花京だ。
 初戦、秋山エレは西園寺舞に完敗してしまい、そのことが調理学部の選手たちの心に火をつける。次の対決は、視覚勝負だ。

 途中、ストーリー展開が分からなくなる部分があった。おまけページが多いことと重ね合わせて考えると、ひょっとすると一部を落としたのか、あるいはカットになったのだろうか?もしそうだとすると、単行本化の時点で加筆しないのは怠慢だと思うし、そうではないならば構成力があまり高いとは言えない気がする。最低限、時系列は分かるようにして欲しいところだ。

ヘルズキッチン (7)(西村ミツル)

物語は新たなフェーズへ
評価:☆☆☆☆☆
 食専の生徒である守屋悟、半井義淵、森崎要、秋山エレ、立花京、美波サガネ、松尾ミカヅキ、レヴィ・ゴルゴダは、悪食伯爵ドグマの計略により、無人島で料理をすることについて身に染みて考えさせられたはずだった。
 しかしそれは、立花京にとっては逆効果だったらしい。彼の心の隙間は、応用生物学部長のユーリ・ドラグノフにより突かれ、調理学部から応用生物学部への転部を薦められる。

 立花京により、これまで作った料理の多くが悪食伯爵ドグマの手によるものだと見抜かれた守屋悟は一時、自分の存在意義について悩むのだったが、自らが料理をする意味を見出し立ち直る。そして仲間たちも彼の復活を祝福するのだった。
 だが、未だ立花京との関係は修復されていない。それに手をつけようと思ったとき、ユーリ・ドラグノフが現れ、料理の無意味さを実例を以って説き始める。

 視覚担当・東条ラウジ、聴覚担当・西園寺舞、味覚担当・北方秀次、触覚担当・星南トウカという、料理を否定する応用生物学部からの刺客に対し、守屋悟たちはどう応じるのか?
 料理をすることの意味を自覚した守屋悟を擁し、物語は新たなフェーズへと入っていく。

ヘルズキッチン (6)(西村ミツル)

自分を見て欲しいという、初めての欲求
評価:☆☆☆☆★
 守屋悟を世界最高の料理人に育て、その魂を美味しく頂こうという目論見の悪食伯爵ドグマは、より厳しい環境で磨くため、彼を無人島へと叩き落とした。一緒に巻き添えを食ってしまったのは、食専の生徒である半井義淵、森崎要、秋山エレ、立花京、美波サガネ、松尾ミカヅキ、レヴィ・ゴルゴダだ。
 料理人の卵らしく、無人島でも食材を集め、火を起こして料理をしようという展開になる。しかし、匂いに敏感な立花が、ついにドグマの存在を嗅ぎつけたことで、妙なことになってしまう。そして悟は、友人だと思っていた人々が、自分ではなく、ドグマに操られている自分しか見ていないのではないかと、疑心暗鬼に駆られるのだった。

 またもや登場する怪しい学部長のユーリ・ドラグノフの登場が、食専に嵐を巻き起こす。そしてその嵐の中で、悟は料理人としての第一歩を始めることになるのだ。
 絵は益々荒っぽく、展開も超展開になっている感じがするよ。

ヘルズキッチン (5)(西村ミツル)

人と人をつなぐ言葉
評価:☆☆☆☆☆
 守屋悟のもとに駆け込んできた農学部長・戒田真土は、彼をご神木を切り倒した犯人として連行しようとする。証拠として挙げられたのは、切り株に彫られていた彼の名前だ。森崎と秋山のフォローで真犯人を見つけた悟だったが、その犯人に美点を見つけた悟は、彼をも助けようとする。
 そして食専は研修旅行へ。ところがドグマの計らいで、主要メンバーは無人島へと流されてしまう。何もない場所、未知の食材、そんな環境で彼らはどう調理するのか?想像力と技術が試される。

 美波サガネの病みっぷりと、それが引き起こす秋山エレとの闘争が凄まじい。普段は直接コミュニケーションすることのない彼女たちだが、無人島では必然的に関係が濃くなる。
 そしてそれは、半井義淵と森崎要の関係にも適用される。基本的に守屋悟くらいしかまともに相手にしない半井を振り向かせるべく、森崎が奮闘する。料理は料理だけでなく、人と人をつなぐ言葉でもあるというメッセージが込められているようだ。

ヘルズキッチン (4)(西村ミツル)

なぜ自分は料理をするのか?
評価:☆☆☆☆☆
 悪食伯爵ドグマが地獄に里帰りしている間に、食専の学生寮へと引っ越しをした守屋悟は、同室の先輩・雲居蜜郎と出会う。彼は既に天才高校生料理人として世間にも知られた存在だったが、料理人こそ無上の職業と考えており、そのため、料理人を馬鹿にする客と、客に媚びる料理人に強い敵意を抱いている。
 サトルは、挨拶代わりに作った料理を捨てられ、ナオからもらった野菜を無駄にされ、思わず雲居に強く意見をしてしまう。その報復として、雲居の雑用係にされたサトルは、彼が何のために料理をしているのかを知ることになる。

 ドグマがきっかけで料理を始めたサトルだったが、いよいよ自分はなぜ料理をするのかという問いを頭に浮かべるようになる。彼自身が自らの意思で料理を選択し始めたのだ。その対比として登場するのが、雲居だ。彼は料理自体ではなく、料理人のステータスにこだわって料理をする。そこには彼の家庭の問題が潜んでいるのだ。
 ドグマが居ない間にちょっと成長したサトルは、戻ってきたドグマにまたいじめられながら成長を続けることになる。

ヘルズキッチン (3)(西村ミツル)

素材の価値、調理の意味
評価:☆☆☆☆☆
 素材が上か、あるいは調理が上か?農学部と調理学部の間で抗争が勃発!その直接の引き金を引いたのは、サトルの不用意な一言だった。その失敗を取り返すため、農学部のエース・犬飼ナオに弟子入りすることになったサトルは、素材の価値と調理の意味を知る。
 パティシエとの料理勝負、久々の初夏の登場と、ドグマのメチャクチャさの中に料理の技がキラリと光る。どうやら初夏ちゃんはこれからレギュラー化するみたいだね。

ヘルズキッチン (2)(西村ミツル)

料理の魅力を感じ始める
評価:☆☆☆☆★
 悪食伯爵ドグマによって未来の料理人(食糧)に見定められた守屋悟は、国立食農高等専門学校に入学した。
 食専の生徒たちは誰も個性的で料理に対する熱意にあふれているが、時にドグマが支配する悟は、超危険人物と思われて避けられ気味。たまに友達が出来たと思うと、ドグマがフラグを折ったりもする。

 今回、悟が料理勝負をするのは、料理に自信を失いかけている少女・秋山エレ、スパイスが料理の全てだと考えている少年・立花京、刃物を愛する少女・美波サガネだ。
 初めは単なる素人少年だった悟も、ドグマのしごきにさらされていくうちに、料理の魅力に取りつかれ、そして自分自身で工夫を生みだしていくようになっている。

ヘルズキッチン (1)(西村ミツル)

命を賭けて料理を作る
評価:☆☆☆☆☆
 諦めることに慣れた中学三年生の守屋悟の前に、悪食伯爵ドグマという地獄の悪魔が現れた。ドグマは悟を本物の料理人にするという。
 地獄で最も美味とされるのは、本物の料理人の魂。しかしどの料理人の魂も美味くない。グルマンなドグマは考えた。ならば自分で本物の料理人を作り出して食べれば良い、と。

 そうして始まったのは、悟に対する地獄スパルタ式の実戦訓練。いきなり料理人にケンカを売らせ、それより美味しい料理を作らせるというもの。ドグマは数多くの料理人の魂を食べて来たので、地上の料理方法は大概知っているのだ。
 料理人になっても食われる。しかしサボれば今すぐ殺される。そんな状況の中、仕方なく料理をし始めた悟だったが、彼の作った料理で笑顔になる人を見て、彼の心にも変化が生じ始める。頑張れば何か変えられるんだ、と。こうしてドグマと悟の地獄の日々が始まる。

 悪魔が料理人を育てるという不思議な設定なのだが、そこで繰り広げられる成長物語は何よりも純粋だ。進路希望も夢もない少年に、自分の食欲のためではあるが、ドグマは頑張れば実現できる可能性を目の前に提示するのだから。
 そして少年は、ただひたすら成長するためにのみ努力する。少しでも美味しい料理を作り、食べる人に喜んでもらうため。

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