七月鏡一作品の書評/レビュー

牙の旅商人 (7)

復讐の末路
評価:☆☆☆☆★
 ロニアと共に鍵の書を探すソーナだが、保管場所からは失われており、その行方は知れない。そんな彼らの前に現れたガラミィは、ロニアの秘密を暴く。
 自身の全てを奪ったハイドラへの復讐に変貌するロニア。そしてヘムデンの街は狂乱の渦に巻き込まれることになる。

牙の旅商人 (6)

因縁
評価:☆☆☆☆☆
 武器行商人ガラミィ、カラディア第三王女アイリと共に国境の街ヘムデンを訪れたソーナ・ユーキは、自らの両親の仇であるハイドラと再会する。激高したソーナはハイドラに襲いかかるのだが、あっさりと返り討ちに遭ってしまった。
 ハイドラを討つには力がいる。そう実感したソーナは、ひたすら剣を振り強くなろうとする。そんなソーナに、サベルという少年が声をかけてきた。
 一方、ガラミィは評議会が派遣したニコラから鑑札を返却され、武器行商人資格を取り戻していた。そんな彼女に、鍵の書にまつわる依頼がやってくる。

 ガラミィとソーナが別行動をして、それぞれが事件介入のきっかけをつかむというおなじみの展開となっている。さらに付け加えるならば、ソーナはその度に女の子を引っかけて来るわけだが…。
 それにしてもアイリがソーナに懐いてきているな。そして、人の心の隙間に入り込む、まるで“蝶”っぽい人も登場。ハイドラのつける烙印と相まって、「闇のイージス」のニュアンスが混じり込んでいる。

牙の旅商人 (5)

百聞は一見にしかず
評価:☆☆☆☆☆
 人間の娘ジゼルと恋をした息子ロベールの目を覚ませるため、自身の眷属にジゼルを食い殺させた「彷徨える人喰いの森」の主人たる吸血鬼ジルベルト・ギルマン伯爵夫人は、吸血鬼殺しの力を持つに至ったロベールを殺すための銀の武器を、武器商人ガラミィに求める。
 ソーナを雇ったカラディア王家のアイリ王女がロベールに拉致されてしまい、そしてロベールがガラミィの追う「鍵の書」を持っていると知り、ガラミィは常に背負う大剣をついに抜く。

 同業者のライドを旅の仲間に加え、新たな展開となっていく。

JESUS砂塵航路 (14)

徒労にも思える途上にて
評価:☆☆☆☆☆
 数多くの被害を出し、結果、綾木日奈の復讐の道は再び開かれることとなった。そんな彼女の前に、ジーザスを殺せなかったタリクが現れ、綾木日奈を復讐の道へと誘う。そして彼女は、引き留める手を振り切り、タジクの手を取ることとなった。
 そして向かうのは、24の老人である燐・オールドマンと、彼のもとにいる仇“鋏”ジョセフ・T・シズラーのところだ。ジーザスを殺すために復讐という力を手に入れようとするタジクと、彼の力を使って復讐を遂げようとする綾木日奈、二人の血塗られた道の前に、再びジーザスが現れ、彼の道を示す。その道は、はるかに遠い、荒れた道であった。

 シリーズ完結編。未だジーザスの戦いは終わらない。

JESUS砂塵航路 (13)

強制着火される復習の炎
評価:☆☆☆☆☆
 藍東学園文化祭準備中、テロリスト“蝶”の後継者を名乗る集団の襲撃を受け、龍門幇の劉伊健は後催眠によって敵に回り、指揮官だった遠山遙とアナ・リドルこと北神アナを拘束してしまった。そして彼は、土方護の前に姿を現す。
 綾木日奈は復習の誘惑を再び断ち切り、ジーザスによって敵も完全に排除されたと思ったのも束の間、真なる敵が彼らの前に姿を現す。それは、ジーザスの最後の生徒、タリク・アッサードの姿をしていた。

 駆けつけた「護り屋」楯雁人と太田忠の登場により最悪の事態は免れたものの、藍東学園に作られた均衡は破れ、24の老人である燐・オールドマンと彼の指示を受ける“鋏”ジョセフ・T・シズラーが現れることで、最後の戦いの幕は切って落とされる。
 次巻、最終巻だ。

JESUS砂塵航路 (12)

最悪のテロリストの残響
評価:☆☆☆☆★
 藍東学園文化祭の準備中、それは校庭に現れた。かつて世界を震撼させたテロリスト“蝶”を受け継ぐものが存在するという証の紋章が、だ。ジーザスやナイトゴーンツのカイザ、龍門幇の劉伊健らは、それに前後して、周囲の気配が静かになっていくことに気づく。激しい戦いの前触れだ。
 電波封鎖、そして非戦闘員退去の通告を経て、戦う者しかいなくなった夜の藍東学園を舞台に、新たな戦いの幕が上がる。

 学園への襲撃者に対し、アナ・リドルこと北神アナは予知能力を持つ遠山遙を軸として、本来は敵同士であるジーザスやカイザらを取りまとめる策をまとめる。しかしそれを実行に移す前に、遥が襲撃を受けて意識を失う事態になってしまうのだった。
 「護り屋」楯雁人、土方護を巻き込み、綾木日奈の握る“遺産”を巡る死闘が開始される。

 クロスオーバーのあちら側は遥が主役を張るが、こちらはアナがその立場になれる様に、強力な能力者である遥を自然に排除する様な構成になっている。

JESUS砂塵航路 (11)

ほんの一瞬の安らぎが永遠の思い出となる
評価:☆☆☆☆★
 内閣調査室のイリーガルによる襲撃をしのぎ、逆に24のナイトに逆襲をしたジーザスは、彼の捨て台詞にひっそりと傷つく。だが、ジーザスのやるべきことは変わらない。
 そんな藍東学園に、予知能力を持つ遠山遙と、護り屋・楯雁人のパートナーにして天才・北神アナが転校してくる。それは、遙を護る土方護や、ジーザス、エレメンツ・ネットワークなど、様々な勢力の思惑が絡み合った結果だ。綾木日奈の遺産も重要なファクターではあるが、それが全てではない。

 そして、漆黒部隊の猛攻をしのいだあとにやってくる文化祭。遙やアナもメイド服を着て楽しそうに学園生活を送っているのだが、その校庭に、ある人物の亡霊から宣戦布告が届くのだった。また新たな戦いの幕がある。
 あとがきの原作者のやりとりがとても楽しそう。キャラクターをやりとりして、互いの盲点を突くような展開が繰り出されているようだ。

牙の旅商人 (4)

強くて弱いもの
評価:☆☆☆☆☆
 カラディア王家のアイリ王女を助けたために追われることになったソーナと武器商人ガラミィ。バルザールがガラミィに一千万タールの賞金を賭けたため、賞金稼ぎのサーベラス兄弟に狙われることとなった。それから逃れ、武器商人を誘う黒い旗に導かれてやってきたのは、人呼んで「彷徨える人喰いの森」という黒き森だ。その主人であるジルベルト・ギルマン伯爵夫人は、吸血鬼を殺す銀の武器を買いたいという。そして伯爵夫人自身も、吸血鬼だった。
 吸血鬼が吸血鬼殺しの武器を求める。そのことを不思議に思うソーナだったが、その疑問はまもなく明らかになる。ロベールという吸血鬼が、仲間殺しをしていたのだ。それから身を守るためという、まっとうな理由に思えるのだが…。

 吸血鬼たちの住処である黒き森で起きている出来事に、ソーナやアイリは直面する。一見すると、強力な怪物同士の仲間割れであり、人間である彼らには関係のないことと思えたのだが、黒き森の内情を知って行くに従って、アイリも、ソーナも、それぞれの立場から感慨を深くすることになる。
 一方で、ガラミィが常に身近においている大剣と、彼女自身の秘密も明らかになっていく。番外編として「霧の館」を収録している。

JESUS砂塵航路 (10)

軽い引き金
評価:☆☆☆☆★
 旧鐙沢村でチェチェンの記憶と共に、ジーザスが直接格闘術を教えない理由を知らされる綾木日奈。ちょうどその話が終わったタイミングで、内閣調査室のイリーガルが、攻撃型UAVと共に襲撃してくる。

 しかし改めて思うけれど、攻撃型無人航空機というのはエグイ兵器だな。遠隔操作でカメラの映像を見ながらミサイルを放つ。自分は一切の命の危険を感じることなく、画面の向こう側の人間を殺す。これは戦争ではなく、虐殺と名付けた方がしっくり来る。
 そしてさらに心に留めておくべきなのは、これがアフガンなどで実戦投入されているということ。新兵器の格好の実験場扱いされている現状では、憎しみの連鎖が続くことは避け得ないことなのだろう。

牙の旅商人 (3)(作画:梟)

狙われる命
評価:☆☆☆☆☆
 カラディア王家のアイリ王女を助けたソーナと、それを許容した武器商人ガラミィは、武器商人ギルドのキャンプ地へやって来た。そこでソーナは、武器商人の武器供給源が旧文明時代の遺跡であることを知る。果たしてそのとき、人類には何があったのか?その一端をソーナは見ることになる。

 だが、ゆったりとした仲間との再会の時は長くは続かなかった。ギルド評議会はガラミィのギルド資格を停止し、バルザールが彼女に一千万タールの賞金をかけたことを告げる。これから彼女は、数多くの賞金稼ぎに狙われる運命となったのだ。
 自分たちの手の届かないところで運命が決まろうとしている。そのとき、ソーナは、そしてアイリは、それぞれの運命に関わる選択をするのだった。

JESUS 砂塵航路 (9) (作画:藤原芳秀)

生き残るために必要なこと
評価:☆☆☆☆☆
 ジーザスに戦闘術の指導を願い出た綾木日奈だったが、ジーザスが彼女に課したテストの相手として登場したのは、彼の弟子だという少女・野坂亜紀だった。姉と共に暗殺術を習い、姉は護り屋として、妹は暗殺者として戦ったうちのひとりが、どうしてこの場所にいるのか?
 そして厳しい指導ののち、ジーザスが綾木日奈と野坂亜紀に語ったのは、3年前のチェチェンにおけるTPCとの戦い、そしてサムライ・土方護との出会いの物語だった。

 「死がふたりを分かつまで」の方では既に描かれた、チェチェンにおけるオリオンと猟犬座との死闘が、ジーザスの視点で描かれる。そして野坂亜紀がジーザスの弟子となった経緯も。
 色んな作品のキャラクター総出演で、戦闘は盛り上がっていきます。

JESUS 砂塵航路 (8) (作画:藤原芳秀)

誰が事態を主導するのか?
評価:☆☆☆☆☆
 新しいキャラクター、懐かしいキャラクター、また色々と登場します。

 龍門幇の劉伊健の襲撃にさらされるジーザスは、彼の暗殺術に翻弄され、実力を発揮できない。何とか退けたものの、保険医という仮面を外した彼は、藍東学園の勢力均衡に大きな混乱を招くのだが、それは本当の黒幕が登場する序曲に過ぎなかった。

 自らの力不足に打ちのめされた綾木日奈は、ジーザスに戦い方を教えてくれるように願い出る。このとき彼が彼女にあてがった教官は、彼女と同年代の少女だった。

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牙の旅商人 (2)(作画:梟)

命にかけてする約束
評価:☆☆☆☆☆
 武器行商人ガラミィにより奴隷市場に売られてしまったソーナだが、同じ捕われの身の亜人グラーガにより牢から脱獄させてもらってたどり着いたのは、やはり虜囚のカラディア第三王女アイリの居室だった。一方、売った側のガラミィは、アイリを救出しようと作戦を立てるシュラン将軍たちに武器を供給する。
 そして始まるアイリ王女救出戦。しかしその襲撃は、王女を所有するユガ警備兵団に察知されていた。奇襲の有利はなくなり、圧倒的な兵力差によりジリ貧の戦いが続く。そんなとき、ソーナやグラーガが希望を伴って現れる。

 事前に何の説明もなく売り払われてしまったソーナだが、ガラミィにはガラミィの論理がある。ぜっていに生き残るという強固な意志の下、ソーナはそれを身体に刻んでいくのだ。
 その裏面で暗躍するガラミィの活躍と、彼女の隠された目的にも注目したい。9ミリ弾に6割の利子をつけて返すとか、すごくシビれる!

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JESUS 砂塵航路 (7) 黒の降臨(作画:藤原芳秀)

TPCの威力偵察
評価:☆☆☆☆☆
 藍東学園に突っ込んだ一台のトラック。そこから現れたのは、マグナム弾も通じない強化兵だった。この行為は、威力偵察として、藍東学園に潜む様々な勢力をあぶりだすこととなる。そしてこれは、ジーザスの真の敵であるトランスプラントコネクションが相対してきたことをも示していた。

 一人の使い捨て兵士の過去に隠された人生や、彼と戦う人間たちを様々に描きながら、クロスオーバーとして、過去にチェチェンでジーザスと出会った土方護が重要な役割で登場する。これまでのクロスオーバーはキャラ見せ程度の意味合いが強かったが、今回は完全にストーリー上で重要な役割を担っていると言えよう。
 闇のイージスから劉伊健が再登場し、本当に様々なキャラクターが入り混じりはじめた。

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牙の旅商人 (1)(作画:梟)

生と死を分ける牙
評価:☆☆☆☆★
 文明が廃れて大地は荒れ、荒野においては力のみが全てを支配するようになってしまった。そんな世界で家族を盗賊に殺されたソーナ・ユーキは、野たれ死にする寸前で、美しき武器行商人ガラミィに水を与えられる。
 復讐のために思い出を捨て武器を手に取ったソーナは、ガラミィに借りを返すため彼女と旅を続けることとなる。この世界の中でソーナがみる人間の姿とはどのようなものか?

 わずかに残る水や食料を求め、過去の文明が残した武器を手に取り戦争が繰り広げられる世界。強力な力を持つものの下では国ができ、為政者にとって都合のよいルールが一定の治安を維持させているものの、その影響範囲は狭く、その外には弱いものを虐げることで生き残る世界が広がっている。
 そんな世界において武器とは、向けられた者には死を、持つ者には生を勝ち取らせるものだ。そしてそれを運ぶ武器商人は、否応なく生と死の間を見ることとなる。
 復讐の刃を手に取ったソーナが見る世界は、彼が遭遇した不幸に劣らない不幸が支配する世界だ。そこには絶望が溢れている。それに浸ってしまい、暗い目をして生きることも一つの方法だ。だが、ソーナの目からはまだ希望の光は失われない。
 このまま希望を見通すことができるのか、あるいはどこかで道から転がり落ちてしまうのか。旅はまだ始まったばかりだ。

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JESUS 砂塵航路 (6) 砂塵の旅人(作画:藤原芳秀)

復讐の道の原点
評価:☆☆☆☆☆
 砂塵舞うカダスの学校でジーザスや水谷小百合、子どもたちを襲った悲劇の始まり、そしてジーザスの復讐の道のりが描かれるエピソード、砂塵の旅人を収録している。闇のイージスなどに登場した守渡陽子なども少しだけ登場する。
 綾木日奈が下した英断。それはジーザスがたどってきた道と対照的に輝き、そして新たな展開を導いて行く。

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JESUS 砂塵航路 (5) 夜魔は歌う(作画:藤原芳秀)

戦場は再び学園へと戻る
評価:☆☆☆☆★
 自らの行動により自らの未来の選択肢を狭めていたことを知らされた綾木日奈は、手に入れたかに見えた友情をも自ら手放し、再び孤立の度合いを深めていく。自らの行き先も分からぬままに。そしてそれは、自らの指揮官を失った真奈美も似たようなものだ。
 そして彼女たちは自らへの問いかけに対する答えも出ぬまま、学園に戻っていく。新たな戦場へと変貌しつつある学園へと。

 こちらもクロスオーバー企画が進行中。こちらに登場する台場巽は本当によく動く。

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JESUS 砂塵航路 (4) 銃弾の約束(作画:藤原芳秀)

ポッカリと空いた隙間
評価:☆☆☆☆★
 火野に誘拐された生徒を救出するため、ジーザスが罠の渦中に飛び込んでいくのだけれど、途中からエレメンツ・ネットワークの台場巽が介入してくる。読み終わってみたら、ジーザスが暴れていたのか、台場巽が主人公になってきたのか分からないくらい。
 24の残影がまだまだ影響を及ぼしている。登場する敵たちは、皆それぞれの理由で復讐を口にする。意図せず大切なものを断ち切られた者は、善悪を問わず、失ったものを埋めるための何かを必要とするのだろう。そして、彼らにとってはそれが敵なのだから。

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JESUS 砂塵航路 (3) 虎の爪痕(作画:藤原芳秀)

因縁を抱えた殺し屋と生徒を護る教師
評価:☆☆☆☆★
 綾木日奈とクラスメイト二人との関係やアッシュとジーザスの関係が固まってきたところで、本格的に24との遺産を巡る戦いが始まる。
 これまでが、過去の因縁に囚われているフェーズだったとすると、これからは、いま生きている人間たちとの関係をつなぎなおすフェーズと言えるかもしれない。これらの視点に立つと、別荘の管理人の最後のシーンや、ネスト・オブ・ギースでのアッシュの行動は象徴的に感じられてくる。

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JESUS 砂塵航路 (2)(作画:藤原芳秀)

戦場の流儀
評価:☆☆☆☆☆
 三つ子の魂百までというけれど、権威によって幼少期に与えられた概念は、後々まで人の思考を縛る。権威の形は人それぞれで、親、教師、先輩、宗教、死にまつわるイベントなどあるけれど、この権威によって常識として刷り込まれたものが、自分の判断の物差しになるわけだ。
 この物差しは、人が内的に成長し自分の世界が広がっていく過程で更新されていくのが望ましいのだが、様々な事情でそれが出来ないケースも存在する。かつてジーザスが紛争地帯で出会った人間たちもその様なケースに該当し、自分たちの思想に従うように子供たちを教育して、権力者に従う人間兵器を作り出していた。そんな人々に自分で考え自分で判断する力をつける、という信念がジーザスの教育の根底にはある。
 御堂真奈美の名を出した少女暗殺者アッシュや、綾木日奈に対するジーザスの接し方は、表面的にはやさしいものではない。彼は教えないし、導かない。ただ現実を示し、判断するための情報を与えるだけだ。しかし、間違った方に進んで大けがをしそうになれば、助ける。彼の教育は常に実践的なのだ。

 こちらでも「死がふたりを分かつまで」とのリンクが明らかにされた。次巻は彼らにも活躍のチャンスがあるらしいです。

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JESUS 砂塵航路 (1) 砂塵の彼方(作画:藤原芳秀)

ダークヒーローの復活
評価:☆☆☆☆★
 16年前に刊行された「JESUS」の続編。「暁のイージス」にも登場していた殺し屋ジーザスの前に再び24の影がチラつく。  楯雁人は色々と歪みを抱えていて悩むので、人を殺さないのにダークサイドの人間という印象があるけれど、一方でジーザスは人を殺しまくるくせに、最後には子供を助けたりもするので、ヒーロー的な印象があるのが不思議だ。

 本作品はケータイコミックサイト「モバMAN」で公開されているらしい。つまり、これまでの雑誌掲載⇒コミックス化という流れからはずれた作品だ。そのためかどうか分からないが、同時期に出版された同程度のコミックスに比べて1割ほど価格設定が高い。
 雑誌掲載がない分広告収入はないかもしれないが、WEB公開で流通コストもかからなくなるのだから、価格設定は同程度か低めにして欲しいところなんだけど、どうなんでしょう?

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暁のイージス (6) (画:藤原芳秀)

描き直される記憶
評価:☆☆☆☆☆
 "蝶"がなぜアメリカと日本を核の標的としたのか、なぜ楯雁人をターゲットとしたのかが明らかになる。そして再び作り上げられる"はじまり"の舞台。彼らは自らの過去にどのような決着をつけるのか。オールスター総出演の最終巻です。
 掲載誌が変わった影響か、展開上あまり必要とは思われないサービス・カットが盛り込まれていますが、長い旅路に救いの結末が訪れたことは幸い。しかし、事件の背景にあった陰謀は笑えない。事件後のシーンで、エレメンツ・ネットワークの名前が登場しますけれど、これって別の作家の作品に登場する組織と一緒ですよね…

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暁のイージス (5) (絵:藤原芳秀)

蝶の復活
評価:☆☆☆☆☆
 蝶の最終決戦の地として定められた東京。蝶の核テロを阻止するために東京へと戻った雁人は、新たな義手を手に入れる一方、かつての盟友である甲斐と敵対することになる。そして、ついに東京へと降り立つ蝶。
 "完璧ならざる世界"の破壊をもたらそうとする蝶と、完璧ならざる要因である不条理と理不尽を前面に押し出して"正義"のストーリーを捏造する世界。そして図らずも蝶の依頼を受けざるを得なくなってしまった雁人。敵対する世界を相手にいったい何を守ろうというのか…

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闇のイージス (25) (画:藤原芳秀)

杯を手に
評価:☆☆☆☆☆
 人工物による危険性で最大級のものがテーマとして登場しましたか、ついに。ある意味、ホットな話題ではありますが。最後には、あの人物が登場して、すべてをさらって行きます。世界を変えようとするものと、世界を守ろうとするもの。その対決のときは、すぐそばに迫っているようです。
 全体の流れの中では、今回のテーマは世界が瀕している危機、ということなのでしょうが、もう少し小さな、個人のレベルでもテーマがある気がします。何かに敗れたものが再び立ち上がる。冒頭でのホセの台詞がそれを現しているのでしょう。みんなが乾杯をするシーンは、刑務所の中なのに、なぜかとてもすがすがしい。不思議な気分を味わいました。

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闇のイージス (24) (画:藤原芳秀)

檻の中
評価:☆☆☆☆★
 甲斐が消息を絶った刑務所へと潜入した楯。周りは敵ばかりの刑務所の中で、義手を持たない彼は果たして生き残れるのか。一体、甲斐は何の操作を行っていたのか?
 塀の中でも楯の本質は揺らいでいないようです。尊厳のない世界で尊厳を守る。揺らがないまなざしの陰で、どれだけ失うことを強要されてしまうのだろうか?

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闇のイージス (23) (画:藤原芳秀)

その名は…
評価:☆☆☆☆☆
 雁人と晴海の出会うきっかけとなった事件を描く、夏の記憶。SAT隊員が連続殺人に手を染める、表題、蒼ざめた馬。そして、若き日の甲斐との思い出。
 出会いは偶然かもしれないが、そこから生まれるものはそうではない。なぜなら、そこにはそれぞれの想い、決断が介在するから。人生にとってプラスになる出会いとマイナスになってしまう出会い。偶然に左右されない決断をしていきたいと思う。

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