中島三千恒作品の書評/レビュー

軍靴のバルツァー (11)

評価:☆☆☆☆☆


軍靴のバルツァー (10)

評価:☆☆☆☆☆


軍靴のバルツァー (9)

評価:☆☆☆☆☆


軍靴のバルツァー (8)

間接砲撃戦
評価:☆☆☆☆☆
 第一王子のクーデターにより、第二王子率いる士官学校は完全に包囲され、間接砲撃によって窮地に立たされる。それを打開したのは、バルツァーが育てた砲兵たちだった。
 一方、参謀総長の指示で監視されるバルツァーのもとに、とある人物から遣わされた使者が訪れる。その目的とは?

軍靴のバルツァー (7)

戦火の予感
評価:☆☆☆☆☆
 ヴァイセン国王暗殺未遂という国際会議における大事件を乗り越え、士官学校へと帰ってきたベルント・バルツァー少佐は、第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトからバーゼルラント邦国の秘密を明かされる。それは第一王子フランツ・テオドール・ビンケルフェルトがエルツライヒ女王に逆らえない理由でもあった。
 ヴァイセン国内での覇権を求める陸軍参謀総長ホルストにより、バーゼルラントに肩入れしすぎているバルツァーは任を解かれ、その不在の最中、士官学校は戦場の真っただ中におかれる展開となるのだった。

軍靴のバルツァー (6)

急転直下
評価:☆☆☆☆☆
 第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト殿下率いるバーゼルラント王立士官学校義勇軍は、ヴァイセンとボルベックの戦場において孤立し、ハウプトマン・ニールセン大尉率いるボルベック騎兵隊に包囲されそうになるものの、ヴァイセン王国陸軍ベルント・バルツァー少佐の作戦に寄り窮地を脱し、ヴァイセン陸軍参謀総長のもとへ殿下を合流させることに成功した。
 このまま一気に攻城戦へと移行するかというところで、第三国の仲介のもとに和平会談が開催されることになる。しかしその裏には、ルドルフ・フォン・リープクネヒトの姿があった。

 一方、騎兵科のユルゲン・ゲオルク・フォン・ブライトナー、砲兵科のパウル・ブライトナーとディーター・シュトルンツ、歩兵科のトマス・リンケとマルセン・ヤンセンは、ヴァイセン国王から勲章を親授されることになる。では、ヘルムート・マルクス・フォン・バッベルが何をしているかというと…。
 ルドルフ・フォン・リープクネヒトを追う敏腕女性記者も登場し、今回はヒロイン成分が多めです。

軍靴のバルツァー (5)

決死の退却戦
評価:☆☆☆☆☆
 第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト殿下率いるバーゼルラント王立士官学校義勇軍と共に、ヴァイセンとボルベックの戦場に入ることになったヴァイセン王国陸軍ベルント・バルツァー少佐だったが、第17大隊指揮官の大尉の失策により、ハウプトマン・ニールセン大尉率いるボルベック騎兵隊の追撃戦から逃げなければならなくなった。
 当初は楽観的な士官候補生たちだったが、徐々に追い詰めてくる騎兵隊の恐怖から、段々と顔色が青ざめてくる。なにもない平原で、方陣を敷いて騎兵に対抗しようとするものの、火力不足により、単なる蹂躙を受けるだけになってしまうのだった。

 英雄的な犠牲により、何とか森の中に逃げ込んだものの、食料は尽きかけ、反撃の糸口もない。さらに、あまりのバーゼルラントの不甲斐なさに、殿下は愛想を尽かし始めるのだった。
 この危機的な状況の中、ヴァイセンをつなぎとめ、かつ、生徒たちを生還させることができるのか?

軍靴のバルツァー (4)

翻弄される小国
評価:☆☆☆☆☆
 ヴァイセン王国からバーゼルラントの王立士官学校へ教官として派遣されたベルント・バルツァー少佐は、第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト殿下とヴァイセン陸軍参謀総長を引き合わせた結果、士官学校生徒の一部を義勇軍士官候補生とした急造連隊を率い、ヴァイセンとボルベックの戦場に向かわなければならなくなった。
 騎兵科のヘルムート・マルクス・フォン・バッベルとユルゲン・ゲオルク・フォン・ブライトナー、砲兵科のパウル・ブライトナーとディーター・シュトルンツ、歩兵科のトマス・リンケとマルセン・ヤンセンを引き連れて向かったのは、前線から百キロほど離れたのどかな農村だ。

 前線から離れているとは言え、海軍国家のボルベックに対し、陸軍国家のヴァイセンは、陸峡気味の地形の反対側から拠点防衛の砲を移動させたため、彼らの居る場所は若干手薄になってしまった。
 こちら側まで敵軍が進行してくる可能性は低いものの、状況に不安を感じたバルツァーは、駐留する第17大隊の指揮官である大尉に進言して防衛戦を築かせようとするものの、却下されてしまうのだった。

 短編として娼館での梅毒検疫エピソードを収録。見事に大国に翻弄される小国になってしまっていますなあ。

軍靴のバルツァー (3)

劣勢を盛り返す一手
評価:☆☆☆☆☆
 ヴァイセン王国からバーゼルラントの王立士官学校へ教官として派遣されたベルント・バルツァー少佐は、級友にして政治犯のルドルフ・フォン・リープクネヒトの扇動によって起きた暴動を鎮圧するため、正規軍ではなく、生徒たちを率いて立ち向かわねばならなかった。
 双方、多数の死傷者を出したものの、首尾良く暴動は鎮圧。第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト殿下の面目は保たれたかと思えたが、フランツ・テオドール・ビンケルフェルト殿下側の策略により、ヴァイセンは悪役の立場に立たされてしまった。

 一方、騎兵科で唯一、暴動鎮圧に出動させてもらえなかった、実は少女の主席ヘルムート・マルクス・フォン・バッベルは、そのことで彼女を馬鹿にする同期たちと喧嘩になり、バルツァーへ突っかかる。それに対してバルツァーが下す罰とは?
 ディーター・シュトルンツを利用して、劣勢に追い込まれたヴァイセンの立場を強化するため、バルツァーは戦略家としての一面を発揮する。

 時代の変わり目の出来事は、色々と事件が起きやすい環境でもあり、物語としても面白い。

軍靴のバルツァー (2)

日常の隣にある戦争
評価:☆☆☆☆☆
 ヴァイセン王国からバーゼルラントの王立士官学校へ教官として派遣されたベルント・バルツァー少佐だったが、その士官学校は第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト殿下の軍事拠点だった。純粋に軍事の問題にとどまらず、王国内の政治対立にも巻き込まれてしまうバルツァーは、生徒たちを少しずつ味方につけつつ、体を張って自分のポジションを確保し始めた。
 そんなとき、バルツァーの前に、かつての友人ルドルフ・フォン・リープクネヒトが現れる。彼はかつて、ヴァイセンで若手将校を先導し、クーデターを起こそうとした人物だった。そして直後、工場での暴動が発生し、ライナー殿下は士官学校生に暴徒鎮圧の命を下す。

 当時の世相や日常生活が分かるパートで少しなごみつつ、ちょっとずつ変わりはじめた士官学校の指導にホッとするのも束の間、あっという間に抜き差しならないところまで自体は進行していく。その弛緩と緊張のギャップにリアリティを感じるだろう。
 そして発覚する、ヘルムート・マルクス・フォン・バッベルの秘密。確かに妙な雰囲気だとは思ったんだよなあ。

軍靴のバルツァー (1)

近代化の過程で
評価:☆☆☆☆☆
 十九世紀の欧州、ボルトアクション小銃が配備され始めた頃。軍事大国であるヴァイセン王国のベルント・バルツァー少佐は、軍事同盟を結んだバーゼルラント邦国の士官学校に軍事顧問として着任することになる。
 ところがそこは、市民感情に配慮して砲撃訓練をしない砲兵科や、マスケット銃による一斉射撃のための捨て駒を養成する歩兵科、そして古いやり方に捉われる教官が支配する場所だった。ここで失敗すれば故国には帰れない。上官に脅されていたバルツァーは、これまでのやり方を壊して近代化を進めようとするのだが、それはやんごとなき人の怒りを買うことになる。

 戦争が生活に密着していた時代に、奇跡的に戦争から取り残された街に乗り込むことになった近代軍人が、そのギャップに苛まれつつも、合理的に物事を進めようとする姿を描く。当然、これまでのやり方に固執する人々の反発を呼び、一方で、虐げられていた生徒たちが快哉を叫ぶ展開ともなる訳だ。
 軍装の描き込みは結構大変だと思うのだけれど、かなり細かく描き込まれていると思う。

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