ひらかわあや作品の書評/レビュー

國崎出雲の事情 (15)

変態親父の実力
評価:☆☆☆☆★
 幸嶋屋庵寿郎や國崎出雲の型にはまらない歌舞伎を嫌う井神久珸に切り捨てられた井神仙を、薊清良が主宰する斬歌舞伎に誘った出雲は、そのまま、義経千本桜の四の切に静御前役で出演することになった。
 人前でまともに演技できない仙に自信をつけるため、國崎出雲は彼にしかできない演出を提案する。

 駆けだし小道具の雨宮梗子と知り合いになり、またひとつ、歌舞伎を支える人々を知った出雲は、國崎屋先代の追善興行に出演することになった。國崎屋の興業のため、皇加賀斗だけでなく、父親の國崎八雲も出演する。初めて明らかになる、変態親父の実力とは?

國崎出雲の事情 (14)

気持ちと向き合う
評価:☆☆☆☆★
 皇加賀斗らとともにお正月の挨拶回りに出かけた國崎出雲は、幸嶋屋庵寿郎も認める悪役を張る歌舞伎役者の駒野蝶介と出会う。栂敷紗英らばかりを寵愛して仲間外れにされ、役者としての力量のなさを馬鹿にされた出雲は、女暫の巴御前で駒野蝶介と共演し、実力を見せつけることになる。
 ところが、実際に稽古場に立ってみると、駒野蝶介の悪役ぶりはあまりにもはまり過ぎており、出雲では全く太刀打ちできない。このまま、初の完全敗北を喫してしまうのか?

 栂敷紗英にドキドキする自分に混乱したり、メイド喫茶の杏里とデートしてみたり、源玄衛の初恋っぽい話を扱ったり、古典を重視する梨園の大御所である井神久珸の身内であり、破門されて斬歌舞伎の主宰の清良のもとにたどり着いた役者に関わってみたりする。

國崎出雲の事情 (13)

もう少し踏み込むべし
評価:☆☆☆☆★
 人間国宝である幸嶋屋庵寿郎に目をかけられたことから、古典を重視する梨園の大御所である井神に目をつけられた國崎出雲は、栂敷紗英に交通事故からかばわれた時から、紗英のことが気になって仕方がなくなってしまった。
 そんなとき、いつものメンツで出かけた伊左屋藤次郎の顔見せ歌舞伎でトラブルが発生し、衣装に焼け焦げができてしまう。必要以上に気落ちしてしまう伊左屋藤次郎に対し、栂敷紗英はある秘策を國崎出雲に打ち明けるのだった。

 そして、井神が送り込んできた次なる刺客の山城名護弥と、立役として共演することになった出雲だったが、それは衆道と火事場を見せ場とする歌舞伎だった。

 日常パートを過ごした後で、また歌舞伎メインの物語に半分だけ戻ってきている気がする。もう少し踏み込むべし。

國崎出雲の事情 (12)

出雲の解答
評価:☆☆☆☆☆
 古典を重視する梨園の大御所の怒りを買った國崎出雲は、彼の出演する千秋楽にぶつける形で人気役者を集められ、散々な千秋楽を迎えてしまった。そしてその大御所が、謎の若手役者として皇加賀斗を「弁天小僧菊之助」に起用した「青砥稿花紅彩画」、白波五人男が上演されることになる。
 やられっぱなしでは居られない國崎出雲は、人間国宝である幸嶋屋庵寿郎の力を借り、「弁天小僧菊之助」國崎出雲、「南郷力丸」菅原梅樹、「忠信利平」菅原松樹、「日本駄右衛門」栂敷紗英、「赤星十三郎」源玄衛という配役で、芝居をぶつけることにした。果たしてその結末は…?

 各務秀一郎とイケナイ夏休みの宿題をしたり、幼馴染の仲村柚葉にストーカー疑惑が持ち上がったり、國崎出雲の栂敷紗英に対する感情が変わる出来事が起きたりする。
 最近、少し傾向が変わったかと思ったものの、やはり元の路線に戻してしまったようだ。残念至極。

國崎出雲の事情 (11)

女形と向き合い始めた出雲
評価:☆☆☆☆☆
 人間国宝である幸嶋屋庵寿郎に見初められた國崎出雲は、彼が出演する「壇浦兜軍記」の観劇に誘われる。彼の演じるのは遊女「阿古屋」だ。琴、三味線、胡弓の三つを奏でる美しい姿に魅了された國崎出雲だったが、幸嶋屋庵寿郎の提案で、千秋楽に三味線で共演することになってしまった。
 僅か一週間の間に、庵寿郎以外演じることの出来ないという「阿古屋」のさわりだけでも身につけなければならない出雲は、自分らしい演技とは何かという問いに直面することになる。

 これまでのマンネリ展開を脱し、歌舞伎、そして女形というものに真摯に向き合い始めた出雲は、皇加賀斗や菅原梅樹・松樹、栂敷紗英らを巻き込み、「青砥稿花紅彩画」、白波五人男の弁天小僧菊之助で、女形と立役の境界線にも挑む。
 なんか面白くなってきたよ。

國崎出雲の事情 (10)

狂気を孕む演技
評価:☆☆☆☆☆
 生徒会室に入り浸る歌舞伎役者の篠竹禄、子役上りの俳優である桐矢臣アイドルの八薙要を取り込んできた國崎出雲の前に現れたのは、彼らのリーダーである歌舞伎役者の白木菊雄だ。全身を手錠で拘束した彼は、何か問題を起こし、歌舞伎界から一年の謹慎を食らっていたらしい。
 白木菊雄の危険さを懸念する菅原梅樹は、出雲が関わる前に排除しようとするものの失敗。二人は「野崎村」で、國崎出雲がお染、栂敷紗英が久松、そして白木菊雄がお光で共演することになる。そう、彼は女形と立役を兼ねる役者だったのだ。

 大切な仲間である皇加賀斗を傷つけられ、白木の部屋に乗り込んだ出雲は、彼の歌舞伎にかける狂気と寂しさを垣間見ることとなる。

 そして、梨園の幹部、幸嶋屋の庵寿郎が登場することで、出雲の歌舞伎界での立場も、大きく変動することになっていきそう。

 生徒会シリーズの最後。初めて女形の役者が敵役として登場したので、これまでに無い展開が楽しめたようにも思う。そしてラストの展開で、ここしばらくのマンネリ展開から抜けられそうな予感。

國崎出雲の事情 (9)

頑なに用心深く
評価:☆☆☆☆★
 上方の歌舞伎役者である伊左屋藤次郎が國崎出雲の学校の学園祭にやってきた。ちょい役で演劇に出演する予定だった出雲だが、主役の怪我により、シンデレラの役をやらなければならなくなってしまう。藤次郎も舞踏会の招待客役で出演だ。果たして出雲が歌舞伎役者だとばれずに乗り切ることは出来るのか?
 そして、生徒会室に入り浸る歌舞伎役者の篠竹禄、子役上りの俳優である桐矢臣に続き、最後のメンバーであるアイドルの八薙要と関わることになった出雲。スキャンダルを作った償いに彼の出演する舞台に出ることになるのだが、なんとそれは、ジャニーズアイドルによる歌舞伎だった!演目は義経千本桜の吉野山。

 しかしこの要、ミスをたいそう嫌う性格で、出雲にもきっちりと型どおりの演技を要求してくる。アドリブで相手役者との掛け合いをするのが出雲の魅力なのに、それが殺されてしまう展開に…。何故、要はこれほどミスを嫌うのか?その謎を解き明かし、出雲のペースに巻き込むことが出来るのか?
 皇加賀斗の日常の風景や、志賀累の初舞台の様子も描かれる。

國崎出雲の事情 (8)

カメラの中の自分、本当の自分
評価:☆☆☆☆★
 生徒会室に入り浸るメンバーのうち、今度は子役上りの俳優・桐矢臣に目をつけられた。本来は皇加賀斗に回ってきた映画の仕事を國崎出雲が引き受けることになり、画面の中で桐矢と対決することになる。

國崎出雲の事情 (7)

力を振りかざす役者
評価:☆☆☆☆★
 國崎出雲の前に現れた新たな歌舞伎役者・篠竹禄は、とにかく権力を振り回す男。仲村柚葉の友だちも彼の横暴の犠牲になったらしい。そのことを知った出雲は義憤に駆られて、彼にケンカを売る。
 勝負の舞台は、篠竹禄が座頭を務める「紅葉狩り」だ。平維茂を演じる篠竹禄は、更科姫を演じる出雲に対して厳しい演出で臨むのだが…。一体なぜ彼はこれほど力にこだわるのか?

 今度は生徒会室にたむろする学生が出雲の勝負の相手となるらしい。その一番手は、海外を主な活躍の舞台とする御曹司だ。出雲はいつもの調子で突っかかっていくのだが、相手にはチンピラもくっついていて危なっかしい。お友達が当然のようにサポートすることにならざるを得ない。
 完全に、横暴な役者にケンカを売る出雲、そしてその人間を変えていくというパターンで固まってしまった。それはそれで良いのかもしれないが、ワンパターンと見ることもできる。そのあたりを、メイド喫茶の単発ネタなどで雰囲気を変えたりもしているのだが…。しかし他にどう読み味を変えれば良いのかも難しい。下手に雰囲気を壊したくもない。

 おまけネタの3本目は、一体何を狙っているのか?バナナを食べさせるなんて…。

國崎出雲の事情 (6)

パターン化してきたな
評価:☆☆☆☆★
 上方から伊左屋藤次郎が呼ばれてやってくる。その宿泊先はなんと國崎屋。演目は曽根崎心中だ。しかしこの藤次郎、クセが強くて他の役者を馬鹿にしてばかり。しかも競演には菅原屋梅樹が入るというから、全く上手くいく予感がない。
 肝心の出雲も、今回は皇加賀斗の形には頼れない。自分なりに芝居を作っていかなければならないのだ。共演者たちのバランスを取りつつ、自分の芝居ができるのか?

 インターバル回は、みんなで写真撮影に行ったり、出雲の誕生会をしたり、メイド喫茶で杏里と絡んだりします。
 表紙裏はセーラー服姿の出雲と加賀斗。本体表紙には出雲のメイド服がもたらす悲劇が…。

 しかし、反発する相手役者が登場し、それと仲良くなって終わりというパターンも飽きて来たので、そろそろ違う展開が欲しいところ。

國崎出雲の事情 (5)

離れても離れられない女形
評価:☆☆☆☆★
 女扱いに嫌気がさして家出をしてしまった國崎出雲は、現代風にアレンジされた歌舞伎を演じる斬歌舞伎の主宰、清良のもとに転がり込む。ところがそこは、梨園から追い出された役者たちの集まる舞台で、これまで数多くの梨園の御曹司たちが潰されてきた場所だったのだ。
 役者たちからの嫌がらせにもめげず、笑顔を絶やさずがんばる出雲。その姿にイライラを募らせていく清良は、出雲に主役級の役をあて、大恥をかかせようと画策する。

 しかし、黙ってやられっぱなしの出雲ではない。清良がなぜこんな風になってしまったのかを突き止め、初心を取り戻してもらうための布石に取り組むのだった。

 他にも、出雲のもとに弟子入り志願してくる志賀累にまつわるお話や、メイド喫茶・イン・海の家のエピソードも収録している。

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國崎出雲の事情 (4)

誰のために役者をするか
評価:☆☆☆☆★
 國崎屋の贔屓筋の生意気な子供、各務秀一郎を満足させる歌舞伎ができなければ援助は打ち切りという約束で、四谷怪談のお岩役に挑むことになった出雲だったが、秀一郎のことを知るうちに、そんな条件とは関係なく、彼自身を楽しませたいと思うようになる。

 夏休み。練習時間が増えたことに嫌気が差した出雲は家出をして、新興歌舞伎集団の寮に入ることになる。ところがそこのリーダーは梨園の役者に何か恨みがあるらしく、出雲に嫌がらせを仕掛けてくる。その理由とは何なのか?

 またまたいろいろかわいらしい格好をさせられた出雲が、いやいや女の子扱いされてしまいます。

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國崎出雲の事情 (3)

互いを想っているのに素直になれない
評価:☆☆☆☆★
 梨園の名門、菅原屋の跡継ぎと共演することになった國崎出雲。しかし、この共演者の兄弟、菅原梅樹と松樹は仲が悪く、一緒の稽古にも出て来ない。特に兄の梅樹は跡継ぎであることを鼻にかけ、かつて共演した皇加賀斗も痛い目を見たらしい。
 その屈辱を返し、そして舞台を成功させるため、出雲は兄弟を仲直りさせ、稽古に出てくるようにさせようとするのだが、そこで栂敷紗英や源玄衛も絡んで来て、いつものような事態に…。果たして舞台は成功するのか?

 今回も出雲の歌舞伎役者再生作戦が炸裂しています。互いを想いながらそれを素直に出せない男兄弟の運命や如何に。

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國崎出雲の事情 (2)

そんな彼にもうメロメロ
評価:☆☆☆☆☆
 入口は実家のためにだったり、処分を回避するためだったり、仕方なく務めることになる舞台だけれど、準備をしていくうちに、誰かのために舞台を成功させたいという積極的な理由に変わっていく出雲。そんな彼の姿勢に、関係する人たちはもうメロメロになる。
 実際の歌舞伎はほとんど見たことがないから、何が正しい芝居で何がダメかなんて分からないけれど、歌舞伎の演目のさわりについては少し知ることができる。

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國崎出雲の事情 (1)

かわいらしい歌舞伎
評価:☆☆☆☆★
 読切の時はファンタジー色が強い作品だったけれど、連載になったら完全に現代もので、歌舞伎役者自体にスポットを当てた作品に変わっている。ただ、絵がかわいらしく描いているので、歌舞伎の力強さみたいなものはあまりなく、女性的な部分を強調している感じがする。
 女形を嫌って歌舞伎の世界から飛び出した國崎出雲が、再び歌舞伎の世界に戻って、いやいや舞台に上がっているうちに、歌舞伎の面白さに気づいていく?のかな。

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