ふみふみこ作品の書評/レビュー
女の穴
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「女の穴」
二人だけ残った教室で、鈴木幸子が担任の福田に言い放ったのは「私と子供をつくってくれませんか」だ。彼女いわく、自分は宇宙人で、地球人と子供をつくる使命を与えられているらしい。
ただの電波少女かと思い、ラッキーとばかりにコトに及んだ福田だったが、彼女の言っていることは本当だった!
一言で言うならば、男サイドから描く、セックスから始まる恋、だろう。初めは行為自体に価値の重点を置いていたはずの福田は、鈴木から子供が出来たと聞き、そして彼女が離れていったことで、彼女自身との関係に価値を感じるようになる。
教師と生徒という視点から見るならば、卒業というイベントによって、いつも学校に取り残され続ける教師の気持ちを描いた物語と見なすことが出来るかもしれない。
「女の頭」
寺島七緒の頭に人面瘡ができた。それは交通事故で死んだ兄のもの。兄妹でありながら、実は密かに愛し合っていた二人は、こうして初めて本当の意味でひとつになることが出来た。
しかしこの状態はやはり異常なもの。兄は妹のためを思い、身を引こうとするのだが…。
背徳的な思いゆえにずっと押し込めていたものが、相手が死にそれが人面瘡になることで、表出してくる。それは二人ともが心の奥底で望んでいたこと。
だが兄は自ら身を引こうとする。その時の妹の行動が凄まじい。これは次の「女の鬼」にも共通して見られる行動で、作者のある種、破滅的な恋愛観の現れなのかもしれない。
「女の豚」
ベテラン教諭の村田克己は、彼が男子生徒に懸想していることを、委員長の萩本小鳩に知られ、その奴隷にされてしまう。そのことを誰に言うでもなく、ただ自分の言うことを聞かせ続ける萩本の狙いとは何なのか?
愛の反対は無関心などとよく言うけれど、まさにこれは自分への関心を引こうとする行動だ。しかし、その方法が少し違う。
「女の鬼」
「女の豚」の別サイドストーリー&後日談。
学校が人生のすべてである学生時代には、ここで願いが叶わなければ人生は終わるという、近視眼的な思いに囚われてしまうこともある。これはある意味で、そんな話かもしれない。
また、教師と生徒という視点から見れ、気持ち的に卒業できない生徒の背中を押して送り出す教師の物語と見ることもできるかもしれない。
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